第275話 もやもやしてます
本日から二日間は『蒼鱗樹海』焼却期間です。
火炎放射器役のネア・マーカス十歳女児です。
迷宮入り口まで二頭立ての馬車で移動ですよ。はっやーい。
森番のおじさんが指示してくれる場所を剪定するので子供組は馬車の屋根の上ですよ。トロちゃんは今日も併走です。
一緒に出発した警備隊の人たちがぽろぽろと減っていく仕様になっているようです。隊長さんによると壁の修復班の朝食が終わった頃に荷物回収の冒険者班が追ってくるそうです。弱者と新入り冒険者の安全確保のためらしいです。
おまけで情報を聞くところによればイゾルデさんは現在夜勤担当らしいです。『蒼鱗樹海』の最初のフロアを荒らしまくっているそうです。魔力うはうはですね。
新人隊員が荷物運搬係として随行しているとか。新人で大丈夫なんですか?
不安そうに見えたのか、隊長さんは髭を撫でつけながら「ネアくん、新人の警護はイゾルデに与えられた罰でもあるのですよ。喜ばれておりますが」と教えてくれました。
新人さんたちにとっての罰ゲームになってるっぽいですね。
あと、不足は多くともイゾルデさんは最低限は指導出来るらしく、その指導後の新人さんたちは素直に他の先輩方からの指導を受けるようになるそうです。本気でイゾルデさんの指導に心酔してしまう新人は隊長さんが丁寧に指導するらしいですよ。
迷宮入り口では立ち並んだ警備隊の制服を身につけたへたった人たちに敬礼で迎えられました。敬礼されてるのは隊長さんですけどね。
「ちゃんと道は維持されたよ。半日誰も通らなければ道を植物が塞ぎはじめるようだね。定期的に手入れすれば道は維持できそうだよ」
イゾルデさんが欠伸まじりで報告です。
イゾルデさんはこれから途中の温泉地でごはんと睡眠をとってまた迷宮夜勤だそうですよ。帰ったら飲みに行きたくなるそうです。
無人になったフロアに入って剪定しながら進むのが今日のお仕事です。焼却するのは次のフロアからですからね。
今日の私は隊長さんと弟くんの三人パーティです。ティカちゃんは班長さん率いるパーティのひとつに入れてもらっています。どうやら索敵、回復、収納を担当しているチームらしくいろいろ教えてもらっている気配がしますよ。「学都で習うようなことではあるけどさ、知っていて損はないよ」「容量に限界はあるから選択は大事になってくる」などなどです。ティカちゃん、ちゃんとお礼言ってますしね。
とにかく町に向かうルートと思われる次のフロアにむかいます。ちょっとティカちゃんが他の人と仲良くしててもやもやしますが、ティカちゃんが私とパーティ組んでいくとティカちゃんがしんどくなりやすいということは私だって理解してますし、ティカちゃんはそれをなんとかするために知識と力をつけて補おうとしてくれているんですよね。わかっているんですよ。頭では。ただちょっともやもやするだけで。
「探索行動を実際にやっている人達のお話ってタメになるよね」
弟くんがしみじみ言っています。
ん?
「いつだって潤沢な魔力があるわけじゃないし、ギフトスキルで補っている行動をギフトスキルなくともすこしでも補える行動は知っていて損はないでしょう?」
んん?
魔力でなんとでもなるよね?
魔力は一晩寝れば回復だよね?
「……姉さん、フツウを知る努力はした方がいいと思う」
弟くんが残念なモノを見る目で見てきますよ。
「違うモノは違う扱い受けるんだよ」
ギュッと胸が痛みます。
フツウってなんですか。
違うってなんですか。
知らなくても、知っていても『違う』くて『ずれ』ているんですよね?
わかっていてもわからなくても否定されてわらわれる。
ただ、力があるとないでは僅かに違うことを知っている。
「わかりません」
「まぁ、僕も違うし、学んでいくつもりだし、接する相手が一気に増えると混乱しちゃうよね。……姉さん、学校行くの大丈夫なの?」
「学都は、ほら、最初から違う場所でしょ?」
そういう場所ですよね?
あ、隊長さんが不安そうに見下ろしてきている。
とりあえず、次のフロア焼却しますよ!
ひとり時間は迷宮管理空間がありますからね。
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