第274話 薬草園で温泉探し
というわけで、今日はのんびりと『ティクサー薬草園』に来ているネア・マーカスです。
ティカちゃんに今日はプチスライムに魔力草食べさせて魔力回復飴を作ろうと提案した時の隊員さんたちがほっとした表情が印象的でした。焼いた後の魔物のポップ具合や葛の繁殖具合目指す方向への道の刻みつけなど確認する作業はたくさんあると隊長さんが隊員さんたちに言っていましたが、私がいるかいないかで戦闘の性質が変わるのだそうです。
私一人でそんなに変わるものでしょうか?
隊長さんなんかは出し惜しみしてるだけだと思うんですけどね。
私がいなくとも作業は多いような気はします。グレックお父さんは昨夜も忙しそうに職場に戻って行きましたからね。
「助かるわ。魔力飴すこし在庫が少なくなっていたの」
喜ばれて嬉しいです。
「二階層の方が魔力草多いからすぐ作れるね」
「そうね」
ほのぼの穏やかですよ。
あと、すこし人が少ないですね。
果実を採ったり建材にと木を切り倒している人がいたりはしていますが、全体的に人がまばらです。
弟くんはプチスライムにもいだ木の実を喰われながらマオちゃんがプチスライムを潰して遊ぶのを見守っています。ジャム瓶が転がっていますよ。
弟くん、プチスライムたちに給餌係って認識されているんですかね?
トカゲ氏は弟くんの方に乗って欠伸しながらうとうとしてるっぽいですね。暇そー。トロちゃんはプチプチスライム踏んで遊んでますね。あんまりやり過ぎるとリポップに難有りになるんですけどね。無限リポップには魔核を迷宮に還す必要がありますから。各階層に一ヶ所偽迷宮核と呼ばれている返却ポストがあるんですよね。なんか来訪者によって祭壇作られているヤツが。(たまに悩み相談してる冒険者とかもいるそうですよ)
プチスライムの数が減ったことを弟くんにマオちゃんが伝えると弟くんはトロちゃん抱っこしてメッと叱ってました。
その後、ちょっと拗ねたらしいトロちゃんはウズラをトドメをささずに捕獲して戻ってきましたよ。マオちゃんが倒して喜んでました。ちゃーんと逃げられないように足にダメージ集中させてましたよ。トロちゃん接待プレイができるんですね! さすが魔物です。というか頭いいんですね。
エリアボス蛇も頭いいですし、トロちゃんも頭いいみたいですし、ティカちゃんもよくすごいなーって思うし。うん。私のまわりって頭のいい人多いっぽいからなんか安心!
ベリー系摘んだり薔薇の実系採ったりしながらそっと温泉を探します。つまり探すべきは水源。園長は「設置してありますよ? どうも活用されてはいないようですが」と言っていた。
場所を確認しなかったのは自力で探したかったから。宝探しみたいでいいよね。
果樹の森を彷徨えば、木を切り倒す斧の音、危険を警告する大人たちの声に混じってウズラによる挑発に負けた冒険者たちの怒声が届く。
烏麦の茂みに紛れてシュガーポットグラスが採取されることなく佇んでいる。個人的に私がカナシイ。採取しとこ。
弟くんは烏麦を集めて粉化してましたね。
「おいしい?」
「んー? これだけで調理してもイマイチかな。でも、それなりに食べられるものに変わるよ。濃い味がダメな気分の時とかはこれでお粥作るとかね」
マオちゃんに聞かれた弟くんがゆったりと説明していました。
オブジェクト的存在なので保持魔力も低くそんな扱いになるとは思いますね。
ティカちゃんが「へぇ」って感心していました。
食べられるものが多いのはいいですよね。
そんなふうに採取しながら散策していると、見つけました。見つけましたよ。温泉!
森をはしる川、すこし深みのある淵と表現できそうな場所にぷかりぷかりとプチスライムたちが浮かんでいました。すこしばかり他の水棲魔物もいそうですね。
「あ、あの辺、温泉なんだよね。ただ、お風呂として温もるには水温が高くないから風邪ひくよね」
体温より低い水温らしいです。でも、成分と温度で言えば温泉とジャンル分けされる部類と弟くんに苦笑い付きで説明されました。
「ただ泳ぐ分にはいいんだろうけどね」
「泳ぐ……」
ティカちゃんが何言ってんだこいつって顔で弟くんを見ています。
「え?」
「あんまりそんな特殊技能持ってる人いないわよ」
「え? 泳ぐのは別に特殊じゃなくない?」
弟くんが瞬きをしながら聞いてきますが、うん。残念ながら私的には。
「泳ぐってなに?」
知ってはいる。知ってはいるけれど、この世界にあって私はその概念に触れていないのである。
ティカちゃんは泳ぐイコール特殊技能って知識があるんだなぁ。物知りさんだ。
ぽかんとした弟くんはぽんと手を打つ。
「ここ内陸地だからか」
うん。
泳げるほど広くゆるやかな流れの川もないしね。
身近な流れは生活上下水道だからね。
あと、水中歩行ってギフトスキルがあるから水場への冒険者は取得推奨なんだよ。
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