第262話 森に道をつくります④

 昼からの伐採業務は問題なく進めることができてご満悦のネア・マーカスです。

 途中で「続きは明日」になったのは後始末担当の冒険者さん達の手に負えなくなってきたからだそうです。

 狩った魔物の搬送にそれぞれ個人持ちやギルド所有の荷物袋と荷車、荷馬車(まだ町には少ない)を駆使し、怒れる魔物(大型は警備隊や戦闘担当冒険者が狩っているが小型はもれ気味)を狩りながら道の細かい整備、伐採された材木使用が可能な木材の運搬及び森の恵みの採取と仕事が目白押しで体力気力が尽きた冒険者未満の人がけっこういるらしいです。運搬量の上限にも引っかかったらしいですしね。

 引き受け元の倉庫も同時に売り捌かないと容量問題があるらしいですが、買い手も多くが今日の件に参加中らしいです。買いに戻れば運搬が遅れるという困った事態発生だとか。

「まぁ、身分証代わりに冒険者ギルドに登録しておく人は多いから」

 職能ギルドが機能していないとこういうこともあるらしいです。

 本来の職業では現在稼げないとかですね。

 お店店員したいのに募集がない。それが今のティクサーです。

 土木作業員の募集はありますが、素材、資材収集が間に合っていないので今日のような物資確保の日は大事だそうです。つまり、基本的に物資確保が間に合っていないんですよね。そして、その加工整理もまた間に合っていないわけです。つまりそこに割いている人員は仕事がないので少ない。そして今日、一気に物量あふれた感じでしょうか?

 つまり、皆さん不慣れ! 事態混乱多発。

 きっと今日一日で解体技術が高まった人とかも出るんでしょうね。

「三交代制で配備されてたんだがなぁ」

 ドンさんがやれやれって感じでもらしています。

 戦闘職冒険者の配分は三交代制で朝から昼過ぎ、昼前から夕方。昼過ぎ遅めから夜間前全掃となっているそうです。

 最後の班は町の安全確保のため超重要らしいですよ。

 時間がかぶっているのは引き継ぎもあるそうですが、途中から人手不足で明日から参加予定だった人も呼ばれたそうです。

 明日もやる。で大丈夫なんですか? 人手。

 警備隊の人たちもちょっと疲れていそうですよね?

 そこもあってか昼過ぎ遅めくらいで今日の伐採は終了です。

 ドンさん曰く「変異熊が出た時点で終了でもおかしくなかった」そうです。

 そうなんですか。

「極限状態が連携と個人素養を高める最も効率の良い修行になるんですよ。少々容量越えを求められるぐらいで良い塩梅でしょう」

 警備隊長さんはにっこりでした。

 あ。それはわからないでもないです。

 生きるか死ぬかってなったら実力以上の底力出ますよね。知ってます。生き残れば身につくっていう危険な奴です。

 えっと、ハイリスクハイリターンって言うんですよ。確か!

 一般隊員さん達が一瞬『げ!』ってドン引きした気配を感じましたが隊長さんがにっこり笑って封じちゃいましたね。

 これが徹底された力関係!

「ティルケ嬢は明日も参加できそうかな?」

「もちろん、ほぼついてきてるだけだもの」

「それなら明日も同じ時間、南門集合でよろしく」

 隊長さんがティカちゃんとお話ししてますね。

「ネアくんもハーブくん、明日もお迎え行くから夜更かしはしないように」

 隊長さん、私達とティカちゃんじゃ扱い違いすぎません? 気のせい?

「明日は最近できた弟子も連れてくるとするわ」

 森番のおじさんが伸びをしながらそんなことを言います。

「おや、今日はもうおかえりに?」

「いんや。ざっくりと森をまわってから帰るさ。うしろの方におる弟子ども拾ってな」

 隊長さんの問いに軽く応えた森番のおじさんはバタバタしているっぽい後続班に視線を向けています。

 お弟子さん。後継者大事ですよね。

「おや、期待のお弟子さんですね。それはともにこの地を守る要人が育つのはありがたいことです」

 つまりハイリスク訓練を強要される人員がここにも!?

「ハードなブートキャンプ……」

 弟くんがポツッとこぼしたんですが、ぶーときゃんぷってなんでしょう?

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