第254話 反省タイム
ティカちゃんにも叱られたネア・マーカス十歳です。
ティカちゃんが「急に魔物が増えて死ぬかと思ったわよ! なにしてくれてるのネア!」と怒鳴り込んできてびっくりしましたよ。魔物の動きを鈍らせるのに冷やそうかな、と慌てたら「余計なことしないの!」とまた叱られました。
人も動けなくなったら困るそうです。動けなくなるものですか?
「姉さん、温度の急変はしんどいと思う」
弟くんに突っ込まれました。そうなんですか? あ、そうなんですね。
難しいものです。
「しばらく大人しくしてなさい。まわりに迷惑だわ」
ティカちゃんが厳しいのです。
「少なくとも、呼び戻されたのは私がネアに注意するためよ。今回の依頼は出来高制だし、安全な環境で戦闘経験を得られる機会だったんだけど、わかってる。ネア?」
ティカちゃんがほっぺたをぐりぐりしてきますよ。顔の皮膚はそんなに伸びませんよぅ。
「あー、もーう。わかってない顔だー。むーかーつーくー。学都でも一緒に遊ぶんなら私だって予算確保大事なんだからね!」
少なくともティカちゃんは困らせちゃったかぁ。
薬草園産の魔力飴(ちょい苦)をぽんと口に入れて転がしているティカちゃんはそれなりに魔力を使ったようです。
「自然回復だけだともうじき魔力切れ起こしそうだったから事前にね」
ふぅん。すごい頑張ってたんだ。
「まだ朝早いんだから無理しちゃダメだよ?」
そう言ったらほっぺた引っ張られた。ふびゃん!
「それを言っていいのはちゃんと自制したお仕事をネアがしてた場合! ネアがやり過ぎたからみんな、今ギリギリまで頑張ってるの! はい。反省! ハーブもちゃんと止めなさいよね」
「え、あの勢いだとムリ。アレはドンさんの配慮を無にかえした警備隊長さんの失敗じゃないかなぁ。想定外だったと思うけど」
「うむ。すまないね。ナーフ嬢。そして存外手厳しいな。ハーブくん」
指示だししながら時々魔物を斬り捨てていた警備隊長さんが戻ってらっしゃいましたよ。弟くんは軽く肩をすくめて「姉さんもほめられて喜び過ぎただけですよ」とか言いますよ。だって、誉められたら嬉しいからできる最大限お役に立ちたいじゃないですか。
「だって、壁を直すんなら作業する広さいるしって」
人がいると範囲で伐採とかしにくいし。
「町の近くだからこそ慎重に行わなければいけないんだよ。たとえ弱くとも魔物は魔物だ。町に入れるわけにはいかないし、対応できる戦闘力もまだまだ育成中で足りていない。頼りなくてすまないが、力を振るう際は合図を出させてもらいたい。いいかな?」
丁寧に確実にしたいってことかな?
もちろん、かまわない。
「次は先走っちゃわないように気をつけますね」
誉め言葉を真に受けないようにしなくっちゃね。気を使わせちゃうのも申し訳ないよね。
「姉さん」
弟くんに声をかけられてそっちを見る。
「人はこれからここに集まるんだよね?」
うん。そのはず。クノシーでも伐採して戦闘班が討伐してから素材集め班が念の為護衛されながら配置されていくってドンさんが教えてくれた。町に近い場所が一番安全になるように護衛と討伐巡回を配備して最初のポイントは安全な予定だから十歳以下の採集者がいても大丈夫。次のポイントも条件次第では大丈夫。みっつめくらいになると護衛が複数人と戦える採集者がいて許可が出る。それ以降は十歳以下は町に戻される。だったかな?
あ。戦力に弟くんカウントしていいのかな?
十歳以下だけど、強いよね?
「そうよ。ハーブ。そしてクノシーよりティクサーは警備巡回範囲が広いの」
え。ティカちゃん、そうなの?
「そしてクノシーより警備隊の隊員さんも冒険者も少ないの」
あれ?
そうだったの? 人ずいぶん増えたと思ってたんだけど?
「わかってないわね。ネア。いいかしら?」
なんでしょうか。ティカちゃん。
「不用意に『ティクサー薬草園』の迷宮核を破壊しようという侵入者警戒もしなきゃいけないのよ。しかも一階層には託児所と化してるしね」
警備隊の護衛ありがたいよね。冒険者の人たちも見守ってくれているのだけど、時々荒くれ者スタイル過ぎてちびっこに泣かれるのだ。
「つまり、ひと手はこれっぽっちも足りてないのよ!」
ビシィッと眉間に人差し指を当てられました。
「人の数足りない。安全確保には人が必要。人の手が足りていないとお子様の安全保持が危険」
軽くぐりぐりされながら問題点をティカちゃんが強調してくれます。守られるお子様枠にマオちゃん入ってますからとても重要です。
合図に従うことは効率よく非戦闘員の安全確保に必須だということですね。ここでここにもっと人の手が必要となった時、どこを削ってここに回されるか。
「タイミングを崩させて皆さんにご迷惑でしたね。ごめんなさい」
うん、反省。
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