第253話 さぁ、道開きです

 今朝は朝から南門直行のネア・マーカスです。警備隊長さんとご一緒ですよ。門ではティカちゃんがお兄さんとドンさんと談笑中でした。

「ティカちゃん!」

「あら、ネア。おはよう。早かったわね」

「えへへ。おはよう」

「おはようございます。姉さん、歩くのは遅いけど、朝は早いから」

 別にそこまで遅くないんだからね!

「まぁ、いいわ。うちのとーさんからネアとハーブの分もお弁当預かってるから一食はコレよ」

 ぉお。それは嬉しい。

「おじさんのごはん美味しいよね。楽しみぃ!」

「はは、店としては嬉しいよね。警備隊長さん、お弁当販売所の設置許可感謝です」

 ティカちゃんのお兄さんが警備隊長さんにお礼を言っています。

「いや、救護所も兼ねてもらえると聞いている。設営はもう少しだけ待ってほしい」

 くるりと私を見た警備隊長さんが手招きですよ。

 はーい。お仕事ですね?

「ネアくん、まずは壁周辺を少しばかり伐採してくれるかね? 狩人氏と森番氏には来てもらっているし、数体の魔物なら今いる冒険者と警備隊員で大丈夫だからね」

 壁周辺。

 承知ですよ。

「あ。ネアちゃん、ネアちゃん。まず門を挟んで片側方面で頼むわ」

 ドンさんからの方向指定きましたね。警備隊長さん見たら頷いてたので、片側からいこうと思います。

 ティカちゃんとティカちゃんのお兄さんも武器をすぐ使えるように構えていますね。では。

 風で蔦と細い枝を切り落として、壁のてっぺんをこえた部分をまず、切断。変な方向に落ちて壁の内側に落ちないようにしたいと思います。そして細かい破片屑が飛び散らないように凍る寸前まで冷やした水滴を散布。根本近くを狙って『伐採』です。家を建てる時、柱にする木材はある程度長さがあった方がいいと聞いたことがある気がしますからね! 壁周辺に道をつくる感じで伐採。ついでに森の木々を剪定しておきます。植物は適度に日光にあたる方がいいはずですからね!

 住居を荒らされて飛び出してきた魔物も物によっては落下してきた枝で串刺しになったまま暴れています。

 まぁ、ちょっと地獄絵図って感じではないかと思いますが、しかたありませんね!

「うっし!」

 壁は壊れなかったぞ!

 警備隊員の人たちと冒険者の人たちが「あ、わいてくんの雑魚だ。さっさと始末すっぞ」とか言いながら走り回っていますよ。

 先日ご一緒した班長な隊員さんと砦への往復で知り合った冒険者さんが数人、おられるようです。

 時々、「さっぶっ!」と悲鳴が上がります。あれ? 冷やし過ぎた?

「ほう、ネアくんは昨日の惨状から改善を目指したんですね」

 警備隊長さんが髭を撫でながら伐採跡を眺めています。

「はい。壁のそばだから斬った木が壁に当たらないように頑張ってみました!」

 えへへ。うまくいきましたよ。壁は無傷です。

 あと、冷やすと虫系魔物の動きが鈍るんですよね。ティカちゃん、今のうちに狩りガンバ!

「お見事ですね」

 褒められました。褒められるって嬉しいですね!

 なんか弟くんが「あっ」って言ってますがなんですか? なぜ視線を逸らすかな?

 まぁ、いいです。

「じゃあ、反対側も伐採しちゃいますね!」

 さっきとおんなじように。

『伐採』です!

「ネアくん……。ふむ、しかたない。ハーブくんも大人しくこの場にいるように。警戒域をひろげろ!!」

 警備隊長さんがいきなり大きい声を上げたので、鳥がそれなりに飛び立ちましたよ。

 ちょっとビックリでした。

「姉さん、タイミング悪い。もう少し間をあけるか、警備隊長さんの指示待たなきゃ」

 弟くんに注意されました。

 そーゆーものですか?

 静かに頷く弟くん。そーゆーものなんですね。気をつけようと思います。

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