第252話 普段通りのいちにち
今日の依頼はいくつかの井戸まわりの『清浄』と『冷却』治療院で『癒し』や『治癒』を使ったお手伝いをさせてもらったネア・マーカスとティカちゃんです。雑用係に弟くんがついてます。
朝、ギルドに来ると妙にざわついていましたよ。ただ、すぐティカちゃんのお姉さんに呼ばれてティカちゃんと合流です。すでにめぼしい依頼を見極めて受けておいてくれたそうです。
「ネア。ちゃんと確認しておきなさいよ。嫌な依頼があった場合の対応もあるんだから」
依頼を選り好みしているつもりはあまりないので大丈夫だと思うんですけどね。
「普段はネアの『水使い』と『清浄マスター』の称号を参考にして依頼を選んでもらっている事実はわかっておきなさいよ。『伐採』の関係で攻撃スキルもつかえると認識されたら指名依頼で受領すべきじゃない依頼がくることだってあるんだからね。受けちゃったら、全部ネアの責任になるんだから。って、ネーア。ちゃんと聞いてる?」
「はぁい」
サッと見た限り問題はありませんでした。
実際まわってみても問題はなかったです。
ティカちゃんと雑談している間に教えてもらったことは今朝のギルドでの賑わいは荷物運搬依頼と南門付近の周辺調査依頼(町中)があり、普段より依頼種類が多かったからだそうです。
壁を修復するならば、資材収集依頼も出るだろうから今から集めようという人も多かったようです。資材は普通に募集していると思うんですけどね。弟くんがため息まじりで「納入渋りをして値上げをはかる人が出るのかなぁ」とか言ってました。え。なんでそんなことをするの?
「ある程度は商売の基本でしょ。ネアは採算無視し過ぎなの。生活質向上に現金は大事よ。通貨による物品取引きが成り立っている限りね」
学都でも生活費大事って言われてたし、納税も大事だし、それくらいわかってるんだけど、なんだか二人ともに『ネアはわかっていない』と思われてそうですよね。
買い物経験は社販(チケット制)とカタログショッピング(御用聞が来て支払いは通帳引き落とし)と小銭握って屋台買い物。出入国審査での納税くらい経験しているんですけどね。あと物々交換。だから、迷宮産物は大事なんですよね。
【だから?】
迷宮と人がしてるのは迷宮が出し産物と人の魔力と命をかけた物々交換的な商談でしょ?
私は迷宮側の者なんだからちゃんと考えてはいるんだから。
「ちゃんと労力と対価は大事だってわかっているんだけどなぁ」
「そこの普通を理解しようとしてないように見えるから、危なっかしいのよ。ネアは!」
えへへ。ティカちゃんが心配してくれてる。
「ああ、もうにやついてないの!」
「ティカちゃん大好き」
「バッカじゃないの! いつまでも誤魔化してられる子供じゃいられないんだからね!」
でもさ。今はまだ子供だから。
うん。きっとティカちゃんみたいな存在を幼馴染みな親友って言うんだと思う。
家族じゃないし、アッファスお兄ちゃんみたいな疑似家族とも違うし、知り合いより友だちだと思うし、きっと、ねぇ、きっと親友って思っていても嫌がられないよね?
裏切るために優しくしてくれてるんじゃないよね?
握ってくれる手を信じていいのかな?
「ティカちゃん、私、ハーブくんとマオちゃんの前ではちゃんとお姉さんしてたい」
「は?」
言外の言葉が聞こえる。『なに言ってんの? ネア』って。なんでかな?
「バカね」
優しく手の甲を撫でられた。くすぐったいよ。ティカちゃん。
「手遅れに決まってるでしょ。いまさらなに言ってるんだか」
ため息!?
手遅れ?
「そんなことないよね! ハーブくん」
あ、弟くんが視線逸らした。
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