第251話 保護者付き帰宅
ティカちゃんは「予定覆すわけないでしょ。日程はちゃんと決めてきなさいよ」と夕方前に今日の依頼を終えてから南門まで来てくれました。「ちゃんと歩かないと体力つかないわよ。バカなの? ねぇ、ネア、ちゃんと体力つけたり護身術身につけるんでしょ?」と詰られてちょっとティカちゃんの心配が嬉しいネア・マーカスです。
「なににやついてんの。ちょっと気持ち悪いわよ」
ツンとむこうをむくティカちゃんのお耳が赤いので照れてますね。コレは。
「もうじき日も暮れますし、お送りしましょう。ナーフ嬢、ネアくんの順で問題ありませんね?」
ティカちゃんと私は頷く。弟くんは降ろしてもらってこっちに寄ってきましたよ。
隊長と呼ばれていたおじさまはにこりと笑って弟くんを肩車していた隊員さんに「さて、君も参加してきたまえ。警備隊作業として不備のない出来栄えを期待している」と言い、肩を叩いていました。
警備隊員さんたちは一度すべての作業を止めておじさまにむかって『は!』と応えていました。
ちょっとカッコいいですよ。
そしておじさまの護衛のもとティカちゃんをまず送っていきます。
「あの様子じゃ、明日から迷宮目指すのは無理ね」
道々ティカちゃんがそんなことを言います。ため息まじりで。
「ネアくんの伐採風景に圧倒されていたからねぇ」
「まぁ、イゾルデさんがふらっと冒険者ギルドに夕暮れからの薪及び資材取り放題が南門付近であるって言っていたから後片付け自体はなんとかなるんでしょうけど」
「おや。イゾルデくんが仕事してますね」
「問題は欲をかいたおちびちゃんが森で迷子になることね。警備隊さんたち大変ね」
「ああ、ありそうですねぇ」
ふぁあ。
ティカちゃん、すごいなぁ。警備隊長のおじさまと難しい会話している。
「ギルドに依頼しても良かったんですか?」
弟くんがおじさまに問います。
「もちろんですよ。本番と同じ装備で。そう告げたでしょう?」
そういえば、そうでしたね。
「ギルドに根回しのない突発予行演習とはいえ、当日メンバーに入れる予定の新人隊員を連絡役に連れてきておくとか、グレックくんがあの場にいたんですから根回しを頼むとか、まぁできることは多かったんですが、予行演習と言われて舐めてかかっていたんでしょうね。嘆かわしい」
おじさまが大げさな動作で頭を振っています。
「報告書あったんでしょう?」
ティカちゃんが不思議そうです。面倒そうにイゾルデさんとドンさんが書いてましたね。そういえば。
「ええ。もちろんですよ。読んでいなかったようですね」
「読んでいても理解ができてなかったとか?」
おじさまが答えて弟くんがまた問います。
「そうかも知れませんね。ですが、これでよい知見を得たことでしょう」
「ネア。他人事っぽく聞いてないの。明日は一緒に依頼まわりましょ。朝ギルド前で待ち合わせね。いいかしら?」
ティカちゃんがクールですよ。
「うん。また明日ね」
「ウズラ退治に挑戦してみるといいんだわ」
え?
テ、ティカちゃん?
「また明日ね。警備隊長さんもありがとうございました」
「はい、どういたしまして。ぜひ伐採探索時にはご一緒にどうぞ」
「日程決めてくださいね。明日はないでしょ?」
「ええ。森に詳しい方々に参考意見を聞きませんと」
おやすみなさいと挨拶をしてティカちゃんとはわかれました。明日は一緒に依頼を受けるわけですが、「ウズラ退治は競争力高いのでは?」と思うんですよね。
「二階層で走り回って体力をつけましょうということでは? 警備隊でもたまに三人ぐらいに競争させてウズラ狩りをさせてますよ。だいたい自滅してますけどね」
警備隊の訓練って?
「脱落した者はティクサーの外周を一周走ってもらっているんですが、時々、新人が消えますね」
それ、逃げられてるんじゃ?
「ああ! ご心配なく! ちゃんと捜索隊を組んでオハナシアイをしてますからね」
オハナシアイ……。それコワイオハナシアイでは?
日雇い労働者である冒険者は依頼で生活費を稼ぎます。
物を造る人も物に対して対価を都度、支払われます。
商店も販売にかかってきます。
店員さんは商店店主の判断で一年払い、一期払い。日払いでお給金を支払われるそうです。
で、アドレンス王国では秋の期に税金の計算日が有り、それを踏まえて冬の期に年給が一括で支払われるんですよね。情報源はグレックお父さんです。
つまり春の期に警備隊に入隊すると年給は冬の期まで貰えないのかと言えばそうです。が、仮採用時に支度金が渡されます。銀貨五枚ほどだそうです。仮採用時に食事付き宿舎を当てがわれ、装備品も基礎装備は支給なので困らないらしいです。
ただ、イゾルデさんは減給も喰らってましたし、臨時報酬もあるように言ってましたけど。
下手をすると支度金持って逃亡ってとても拙いのでは?
「姉さん、なにグルグル考えてるの? 慣れない事すると熱出すよ?」
「出さないから!」
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