第249話 予行演習にいこう

 昼からちょっと伐採会になりましたネア・マーカスです。

 ちょうど役所におられたヒゲ紳士な警備隊員のおじさま(お得意様)が「予行演習も兼ねてかりばの入り口をひらけにいこう」とおっしゃったのです。くるっと振り返って「予定していた護衛隊の班長役急いで集まれ。ついでにナーフ嬢が来れそうなら誘ってこい。無理強いはしないように」と指示を出してらっしゃいました。

 日暮れ頃に自宅まで送るとおじさまがグレックお父さんにお約束していましたよ。

 ちょっと疑問なんですけど、『かりば』の意図がちょっとわからなかったんですよ。『狩場』なのか『刈り場』なのかが。

「隊長ー、装備は予定していた装備ですか、簡易ですか?」

「予定していた装備できたまえ。かりとった物を集める人員は不在なのだから。おまえたちで回収すべきは回収だぞ」

 テキパキと準備は行われ「では、行きましょうか」と私はおじさまに抱き上げられ、弟くんもまた警備隊員のお兄さんに肩車されていましたよ。

「かっる! かっる! ハーブ少年もっとメシ食えよ?」

 ある意味、高速移動でした。

 裏道を使ったのかほぼ誰ともすれ違いませんでしたね。

 あんまりきたことのない壊れた城壁と門は町の南側にありました。おじさまが「南門からいきますからね」と声かけてくれましたから南門なのでしょう。

 砦に続く西門と王都にたどり着く東門しか使わないんですよねぇ。他の道の先には人の集落ないわけですし。

 はじめて南門見ました。

 クノシーまわりはざっくり伐採まわりしましたが町周りは部分部分ピンポイント除草しかしてないかもしれません。

「この壁修繕するの?」

 石を積んである壁を眺めつつ弟くんが聞いてます。

「迷宮が中にもあるからまだ判定されていないのですよ。壁は外敵から内側を守るものであることが本分ですからね」

 学都の場合は封じる目的なので実質同じですね。

 外に『蒼鱗樹海』中に『ティクサー薬草園』迷宮を外敵認識するなら双方に敵がいますね。ついでに言えば繋がってますし。まだ、ウズラの魔核三百個は投入されてないので階層のフロアが増えるくらいの改装以外は深層階強化に努めさせてもらっておりますよ。うん。

「ああ、人の敵は人だものね。壁の素材は石かなぁ粘土かなぁ」

 弟くんの中でどんな納得があったのか、壁は修復される認識ですね。迷宮核を奪っていったのは人なのであながち間違いとは言えませんね。確かに人が人の生活圏を脅かした結果が今なのでしょう。

 つーまーり。

「修繕しやすいように町の外周伐採をすべき。ってことになるのかな?」

 すこしおじさまは考えているようで静かでした。

「町周り伐採……。やっぱり『蒼鱗樹海』の入り口からティクサーの町に対応しているフロアまでは一回焼き払うべきですね」

 でないと葛の繁殖速度に負けてしまう。

「ふむ。上にあげておこう。今日はここの場所を軽く伐採してもらえるかな。直そうが直すまいがここが『蒼鱗樹海』への道にしたいのだから」

 クノシーの時のように数日かけて伐採、それから迷宮な感じかな?

 学都に向かう冬の期の終わりまでは町にいるし、のんびりでもいいんだよね。伐採は。

「えーっと、人いませんよねー。上部の枝の伐採からはじめるので頭上注意でーす!」

 一応声をあげておく。魔力探知に引っかかる存在はないと、思う。

 すぅっと深呼吸。

 一旦、目を閉じて集中する。

 葛の蔓を断ち切りながら伐採するつもりの木から枝を落としていく『伐採』。集中して無言発動です。

 やわらかく冷気を帯びた風が下の茂みを揺らし、天に向かって枝を打ち払いながら駆け抜けていきます。打ち落とされてくる杖に使えそうな太さの枝たちに分断された蔓である。下のターゲット外の枝や細い木を巻き込んでちょっと酷いことになった。蔓はもう少し細かく切った方がいいかもしれません。

「な。予行演習しておいて良かっただろう?」

 おじさまがそう言いながら私の頭を撫でてくれます。その言葉はどうやら警備隊員さんたちにむかっていたようですよ。

「ネアくん、お見事」

 褒められましたがなにが『な』なのでしょうか?

 とりあえず、門前の一部空間をすこし広くしてみましたよ。

 壁を修復するなら壁から家屋一軒分くらいは伐採すべきか悩んじゃいますよね。

 茂みから驚いて飛び出してきたらしい魔物たちは隊員さんたちにサクサク討伐されていましたよ。

 猪とか兎、バッタに幻惑蝶でした。蝶々綺麗でした。

 あと、細い獣道が完全に埋ましたね。

 後片付けをしてらっしゃる警備隊員さんたちを見ながら私は壁を突き破っている大枝をぶった切って壁の外側に枝を引き出して落としておきました。壁の穴を警備隊員の一人が土系の魔法で埋めてました。ああいうこともできるんですね。

 おもしろいです。

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