第248話 お約束とりつけましょう

 お昼後はティカちゃんとお兄さんは『ティクサー薬草園』で薬草未満の採取を教える依頼を受けてるらしく別行動です。『蒼鱗樹海』に行くなら事前に言いにくるように言いつけられました。一緒に行ってくれるそうですよ。

 うっきうきでお役所のグレックお父さんのもとにむかうネア・マーカスです。

 そう。グレックお父さんは役所の事務員さんです。そして元は警備隊員です。

 怪我による退役、そして縁故雇用で事務員でした。人手が抜けていったギルドの管理は一時対応として教会と役所に分割管理されてきたのがティクサーです。

 教会には技術や知識。役所には事務手続きや納税関連。まぁ、実質国営化してたわけです。

 しばらく問答合戦があったらしいですが、ルチルさんが錬金術ギルドのティクサーギルドマスター権を買い取ったらしいです。薬師ギルドの方はいつも役所で見送ってくれていたおじいが「しょうがないの」と薬師ギルドの入り口をあけていました。ずっとおじいは薬師ギルドマスターだったそうです。人がいないため仕事も少ないので役所でお手伝いしてくれていたそうです。

 同時にグレックお父さんの主治医でもあったんですよね。根を詰めないよう様子を見てくれていたのかもしれません。あ。薬草収集の依頼出してくれていたのおじいかもしれません。

「ん。ネア、ハーブ。どうした?」

「グレックお父さん、『蒼鱗樹海』に行ってフロア焼いてきていい?」

 役所には警備隊の人や領主様が連れてきたお役人様がいました。あと領主様の奥様な副官さんも。

「あら。ネアさん、ごきげんよう。今からおでかけするには遅い時間じゃないかしら?」

「領主夫人、時間の問題ではありませんよ」

 領主夫人の言葉に固まっていたグレックお父さんが動き出しましたよ。

 あ〜、ダメですかね。

「あら。時間は大事よ。小さい子は正しい時間にごはんと睡眠をとらなくてはね」

 ここはお役所だし、きっとたぶん不用意に夫人に口きいちゃダメなやつだよね。あと夫人、いい匂いしますよ。お花か蜂蜜かって感じの。

「えっと、今日今からではありません」

 ただ、聞かれたことは答えておかないと。

「そう。そうなのね。ほら、あのね、クノシーから時間が経っていないでしょう? だからもう少ししてからお願いしようと思っていたんですよ。クノシーほどの報酬は出せないのですけどね」

 一フロア金貨一枚は破格ですよね。だいじょうぶです。問題はないですよ。ええ。

 夫人はにこにこと言葉を続けるようです。

「迷宮入り口までの道の切り拓き、砦を経由しない直通路と手前におく宿場用の野営地の道筋を今、冒険者の方々に選定してもらっているんですよ」

 砦を経由しない?


【砦のむこう、『ケモノの国』『月砂翠宮』は周囲から魔力を吸い尽くす勢いですから。国境で遮られているとはいえ、近づけば魔力を奪われます。ですから見張りも短期交代制のようですね】


 故に近づかないのが良い。という対処になってるようですね。

 ケモノの国はすべてが『月砂翠宮』の影響下に有り、それゆえに死の荒野が広がっているそうです。いのちを吸われる大地ってなにそれコワイ。

 砦にはそれを抑えておくために魔法使いが結界を張り続けていたそうです。天職の声さん曰く生け贄有りで。

 そういえば、人がポツポツ減っていってたのはそれもあったんでしょうかねぇ。

 とりあえず、迷宮探索は領主様依頼になりそうですね。

 夫人は特に砦を経由しないルートを求める理由は説明しませんでしたよ。まぁ、子供に聞かせることでもありませんしね。

 町周辺の葛刈りはいつでも歓迎だそうです。

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