第247話 悪巧みではありません
ひと仕事終えてティカちゃんちの食堂でお昼ごはんなネア・マーカスです。
弟くんは食材持って厨房にお邪魔中です。
【危機管理認識力が少々かなり不足でしたね】
だって、資材が足りてないならって思っちゃったんだもん。
【ぼんやりなだけでなくうっかりですか。バティ園長がとめてくれてよかったですね】
ああ、うっかりもついたぁ。でも本当にとめてくれてよかったと思う。
【忘れてはいけません。人は今、探っているのです。迷宮の脅威度を。そしてその有益性を。迷宮もまた様子見をしています。同じように人も見ているのです。アドレンス王国は十分に育った迷宮を抱えていた国で。人はそんなよく育った迷宮から迷宮核を抜くことができたのだと。そのことを理解すべきでしょう】
あ、はい。
増えていく深層階の強化に魔力を投入していきたいと思っていますよ。
『蒼鱗樹海』の一階層は魔物の強さと採取物は今のままでたぶん、少しリポップ時間を長く設定するよう求めるつもりです。現在の国境内と同じ広さの一階層。二階層への扉は現在ひとつだけ。
誰かが二階層探索をはじめれば、あとふたつ二階層への扉が出現しますよ。
『ティクサー薬草園』の三階層には『蒼鱗樹海』の三階層への扉(隠し部屋です)があったりはしますがたどり着く人はいるんでしょうか?
「あー。ひんやりしてるわね」
ティカちゃんが氷水の入ったグラスを抱えるように持っています。少しだらけた隙がちょっとギャップかわいいですね。
夏の期もそろそろ半ば。どちらかと言えばじっとりと蒸し暑い日々が続いていて……やっぱり昼を過ぎると過ごし難いのである。湿気を集めて氷にしてもしばらくそのあたりが涼しいだけで、より蒸し暑さが際立つというか、まぁ難しい。
そう思う人が多いのかお昼過ぎから夕方にかけては店舗前にも日陰をつくる布をはりだし、暗くした部屋で過ごすか『ティクサー薬草園』で涼むかが定番です。つまり昼からは迷宮混みます。
いっそ森の葛刈りの方が涼しいとそっちに向かっている人たちも多い印象です。ただ、砦側の入り口の日帰りは厳しいのが現状です。行っても最初のフロア散策したら帰る時間になっちゃいますからね。だから周辺葛刈りなんでしょうけど。
「ティカちゃん」
「なぁに?」
「『蒼鱗樹海』への時短路どっかにないですかね?」
「ネア、つくるんじゃないわよ」
真顔で返されました。
でも通りやすい道は通した方が良くないですか?
「あと、あとですね! 最初のワンフロア焼き払ったら、周辺の葛も減らないですかね?」
迷宮までの道も迷宮の中でも葛刈りをしながら進むから迷宮探索は進まないんですよね。
「それ、あんまり大きい声で言うんじゃないわよ。まずグレックおじさんに通しなさいよ。ネア」
眼差しがキツイですよ。ティカちゃん。
「グレックお父さんに?」
「他の探索している冒険者への通達とかあるでしょ。人、焼き殺したいわけじゃないでしょ? 迷宮内なら死体も残らないといってもねぇ」
荷物袋に集積して遺品が入ってくるのは確かにいやですねぇ。
なぜかお互いに無言で見つめ合いました。
「ネア、私は見えなければないことになるとは思わないし、敵意を持ってきた相手に容赦も必要ないと思うわよ。でも、不意打ち焼き払いの被害者は被害者だと思うわよ?」
つまり警告は必要ってことですね。
【あってますが、少し違いますね】
なにが!?
「お昼ごはんよー」
おばさんが今日の料理がのったトレーを持ってきてくれます。後ろに弟くん引き連れて。あと、ティカちゃんのお兄さんも。
「姉さん、ティカちゃん、困らせちゃダメだよ?」
弟くん!?
誤解ですよ?
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