第246話 ひと休憩でちょい確認
人口増加を確認すればティクサーだけじゃなくアドレンス王国国境内全体が増加傾向です。
対処できるのアドレンス王国。なんて思っている迷宮管理者ネアです。
確かに警備隊には新人がそれなりに配備されているそうです。仮採用人員用の寮もようだてられたようで、役所勤めや警備兵の家族で余裕のある人が寮の厨房で短時間労働をしているそうです。
仮採用の人は基礎体力向上訓練とその他雑務に割り振られるそうです。厨房手伝いから武具の整備、簡単な家屋の修繕から掃除まで多岐に渡るようです。文字の読み書き算術も含んでいるようです。
『適切な適性がわかっていればそれなりに配置できますからね。それに野営をするのなら全て必要なことです。警備隊員に適性がなくとも冒険者として生きていく技術は手に入るでしょう』
家屋の修繕とかに適性があれば大工さんになれるものね。今ならすごく稼げそう。
横にいて私が広げている資料を見下ろしバティ園長が教えてくれます。
あと最近は職業訓練に『薬草園』にくる人も多いらしいです。二階層で建材と煉瓦用の土や粘土を採取していくそうです。
「邂逅ちゃん、早めに開放した方がいいのかな?」
『いけません』
金属資材ないよね。と呟けば、食い気味にバティ園長にダメされました。
『失礼致しました。今開放しては、国が迷宮周辺の治安維持ができず、岩山の国が出てくる可能性と、それを通じて帝国が干渉してくる可能性が出てきます。アドレンスと契約を結んでいないとはいえ、人の世では国境、そして国の権限で管理された迷宮は尊重されますが、国が管理しきれぬ迷宮は危険視され国ごと潰してでも強国が管理するものというのが各国に存在する迷宮系天職を持つ者を管理する王族の思考形態なのです』
つまり、『蒼鱗樹海』と『ティクサー薬草園』だけで人手不足に陥っているアドレンス国にとっては不味いということですね。
「つまり、金属資材が欲しければ、さっさと『蒼鱗樹海』の二階層に降りろってことだよね」
『そうなりますね』
ただ、『蒼鱗樹海』の探索は特に進んではおらず、現在のところ砦側の入り口からはかろうじて三つ目のフロアまで。クノシー側はギリギリ私が拓いたところまでを定期的に警備隊パーティで維持しているそうです。
クノシーと王都の間に迷宮探索用中継の野営地は無事に構築されたらしいですよ。あの森を拓いた空間ですね。
共有食堂や応急処置のできる簡易の小屋、道具屋やギルドを併設した宿には資材管理する倉庫や馬車置き場が充実している。建材を王都やクノシーに運ぶ施設だ。
ここに溢れた者がきてるかと言えば、否である。
警備隊のそれなりに信頼度高い人員が複数配備され、王都やクノシーで研修を終えた隊員が定期的に探索しているようです。選ばれた精鋭がハリボテ城でエリアボス蛇の分体討伐を二日に一回くらいのペースで挑戦しているそうです。四時間に一度リポップするのに。などとちょっと思います。『除草』ギフト持ちが少し増えて葛対策にクノシー側では光が見えたそうですよ。
学都から帰国した国兵も混じって城攻略隊を組んでいくのだろうというのがバティ園長の予測でした。
『時折り武器も手に入りますし、伐採した材木を収められる荷物袋を高確率で入れるように伝えております』
エリアボス蛇の分体討伐のご褒美は『除草』や『盾』『圧縮』『毒付与』というギフト系とヘビ皮の鎧や牙を使った剣、槍、ソードブレイカーなどの装備系。ヘビ皮の守り(金運アップ)や小銀貨百枚入りのヘビ皮袋。そこに材木運搬に適した荷物袋が足されたわけだ。
一度倒してご褒美を回収後、四時間後にご褒美箱と分体くんがリポップ。この時点でのご褒美箱の中身はランダムでご褒美ひとつ。八時間でもうひとつ、やっぱりランダムで。八時間毎にご褒美は増えていきます。あと、討伐時の魔力を受けて素材が追加されたりしていくそうです。
……美味しい討伐スポットらしく、周辺で狩りをして参加を狙う冒険者パーティもいるらしいですよ。バティ園長はうっすら笑って「早くソロ討伐できる方がくるといいですねぇ」とおっしゃってました。
あ、討伐失敗でお亡くなりの場合装備品や所持現金、所持スキルギフト、魔法(巻物化した物)は迷宮核が回収し、魔物に付与したり宝箱に詰めたり、ドロップ品にしたりします。ハリボテ城の隠し部屋に一階層である地上エリアの死者のギルドカード保管部屋があるそうです。
生存者がいればギルドカードだけでも持ち帰ることが理想なんですが、状況によっては無理ですからね。
記録によると慣れていない冒険者が熊や猪の群に敗北する案件はすでに二桁をこえているそうです。
一階層エリアは怪我程度で攻略してほしいなぁとちょっと思います。
一階層に潤沢にある資材は果樹や食肉、皮や骨に爪の生物由来に木材と泥。石材が少々山に向かえばクノシーを模した町跡地で武器や道具、金属資材が買えたりもする。
ただし、その町跡地は夜間ゴースト系の魔物が徘徊だ。難易度が低いとは言えないのですよね。
「『砦』側からももう少し進めるように『蒼鱗樹海』に行くべきですね」
ついでに伐採しまくって技能低めの人たち用の雑務依頼増やしちゃおうと思います。
砦側の入り口は食堂や休憩所はできるのですが、長期滞在者はかなり少なく、少し時間がかかっても通っている人が主らしいです。砦むこう国境の先は死の荒野的なものが広がっているせいだと思います。
ええ。
まだ干渉できません。
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