第235話 商談
問題とは物資の融通と支払いについてでしたよ。めんどくさいなと思うネア・マーカス十歳です。
小麦とかの食材提供ですね。ただの在庫処分を兼ねて美味しいものが食べられるなら問題なさそうなんですけどー、違うらしいですよ。めんどくさい。
弟くんは話を聞いてすこし悩んでいたようですが、「支払いは食券で」と言い出しましたよ。食券ってなんですか?
お食事提供権利だそうです。
うーん、なんかそういうシステムには覚えがあるような気もしますね。
弟くんの説明によると、私たちが食材を提供する。有り余ってますからね。その見返りに調理済みの食品を交換できる権利券を渡してもらう。期限枚数はティカちゃんちのご両親が決めてくれればいい。うん。確かに。
食材は私たちが渡すのはティカちゃんちのお店にだけど、渡した食材の使用方法は当然不問。
知り合いにパンを焼いてもらってもいいし、そのパンを食券で交換でもいい。つまり、私たちとの取引はティカちゃんちとだけ。私たちは食材を提供して、その対価に応じた食券をもらい、適当なタイミングで食品と引き換える。
つまり美味しそうなものがある時に「それください」と伝えればいいと!
荷物袋もあるからタイミングよければうっはうは?
じゃあ、猪の腸詰も出す?
「営業の邪魔はしちゃダメなんだよ」
なぜか弟くんがそんなことを言います。
わかってまーすだ。
「ナーフのおばさんならいいように差配してくれると思うし、料理美味しいし、ティカちゃんしっかりしているからだいじょうぶだと思うんです」
弟くんがティカちゃんの名前を出したことでティカちゃんが「私?」と疑問符を飛ばしている。
「お姉さんだってギルドの受付けで頼りになるんでしょう?」
弟くんが私を見て尋ねるから。
「もちろん! 時々熱心過ぎるって思うけど、ちゃんと考えてくれてるし、注意もしてくれるよ」
いい人だよね。
「お兄さんもいい人でした」
弟くんからしたら一緒に砦まで行った相手だし、もしかしたら『薬草園』で時々会ってもいたのかもですしね。
それにティカちゃんのお兄さんだもんね。
【それは贔屓の強い思い込みでは?】
えー。
そのくらいかまわないと思うけどなぁ。
「僕たちは子供です」
ん?
うん。子供だよね。それっぽくないけど。
「僕、料理好きですが、まだ小さいのであんまり量を作れないし、不都合が多いので美味しい料理を作ってくれる信頼できる大人は信じたいです」
小声で「姉さん、大雑把だから価値判断難しい系の商売は向かないんだよね」って言ってるんですが、失礼だと思います。弟くん!
おばさんが苦笑いして頭を撫でてくれましたよ。
「小麦一袋の対価に翌日のお弁当ひとつじゃ払わなすぎなんだよ。ちゃんとこっちの判断基準で食券の枚数を決めていいんだね?」
「迷宮で穀物が採れるようになれば価値は下がると思いますよ? 蕎麦粉とかは『薬草園』でも採れますし」
「魔力が薄すぎて採取人がほぼいないけどね。蕎麦粉」
おばさんと弟くんが言葉を交わしあっています。
「『豊穣牧場』の小麦粉と混ぜて使えばちょうどいいかもしれませんね」
「しかたないわね。ティカ、蕎麦の採取覚えなさい」
「え!?」
粉化か分解が有ればそこまで難しくはないハズですよ?
「あと、噂のウズラ狩り。頑張ってみなさい」
「え? なにこの思わぬぶち当たり」
しばしば目を瞬かせているティカちゃん、かわいいですよ?
「ウズラはたまごドロップするんだよー」
「たまご」
ティカちゃんはたまご大好きらしいです。
美味しいよね。たまご。
弟くんはにこにこと『豊穣牧場』産の穀物袋を数袋おばさんに渡していました。
私もと思ったのに、弟くんに「姉さんはもう少し商業ギルドに卸しておいた方がいいと思う。あとは教会に寄付かな」と提案されましたよ。
迷宮で芋と果実、肉は採取できるようになってきたとはいえ、今は人の増加の方が早く食料がいきわたってはいないという話は昨日、冒険者の人とグレックお父さんがしていたのを耳にしました。
「おなかがすくと妙な行動を起こす連中もいるからね。あんた達ちゃんとまわりには気をつけておくんだよ」
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