第234話 ティカちゃんのお迎え
家族でのピクニックはちょっと疲れたけど、楽しかった。などと回想するネア・マーカスです。
グレックお父さんもマコモお母さんも「ネアはもう少し体力をつけないといけない」と言うので私の体力は低いらしいです。
「いくわよ」
そう言い放つティカちゃんが我が家にお迎えに来たのは早朝でした。
「早くない?」
そう聞いたら、フンと笑われました。
「ネアが普段冒険者ギルドに仕事受けにいく時間を考えてすれ違わないようにと、気温が上がってくるとバテるからよ」
朝食は終わっていましたが。
昨日は迷宮で涼しく過ごしたんですが、地上はやはりあっついんですよね。
歩いているとじんわり汗がにじみます。
「おはようございます」
「あら、おはよう。早いわね。いってらっしゃい」
弟くんが通りすがりに挨拶を交わしています。私も軽く頭を下げます。
こう、歩く道にひと気があると町が活気づいてきたんだなぁと思うのです。
「おはよう、今日もギルド? 頑張ってね」
ご近所の奥さんが声をかけてくれて、……すこし驚きました。いや、見かけてる人ではあるんですが。
「おはようございます。いってきます」
弟くんがにこにこお返事してます。すごいですね。その挨拶力。
「いって、きます」
ちょっとぎこちなくなってしまいました。
「おはようございます。今日はネアとハーブを私がレンコウするの! よい一日を!」
ティカちゃんは元気に言い放ちますよ。奥さん「あらあら」って笑ってるし、さっきすれ違った奥さんも振り返って笑ってるぅう!
ちょっと恥ずかしいですね。
よい一日を。そう挨拶を交わしながらティカちゃんにレンコウされました。
「やっぱりネアの住んでいるあたりは治安がいいわね」
そう、なんですかね?
「うん。そうだね。警備隊員の人達の寮や役人の人たちの寮が主だからね。基本、人柄も警備もいろいろ考えられてるなって思う」
「そうよねー。ハーブってほんとに七歳? おにーちゃんやおねーちゃんの話を聞いてみみどしまに育ったつもりの私でもそこまで思わなかったわ。そう言われれば納得しちゃうじゃない。そうよねー。町のカナメよね。まずボウエイが大事なんだもの」
関連性が、理解できてないのは私だけですか? もしかして。
「警備の人たちは町を守ってくれるでしょ?」
弟くんの言葉に頷きます。
「警備の人たちが問題なくお仕事できるように役場の人や事務雑務を担う人たちがいるでしょ?」
うんうん。寮の管理する人とかお金管理する人とかだよね。
「警備の人たちにも大切で、でも武力の少ない守りたい人だっていたりするでしょ?」
「恋人とか子供とか?」
「そう。だから住んでいるあたりの治安維持は優先されてるんだと思う。教会とかもね」
「何処もそうよ。本来なら余所者はすぐわかるし、少なからず観察されるものよ。大人が『見てるぞ』って周知させてるっていうのもあるかしら?」
弟くんとティカちゃんすごい。
私、そんなこと考えなかった。
「本来なら?」
「だって、ティクサーは今人がたくさん帰ってきてる最中なのよ。誰しもが見知らぬ余所者ばっかりなの。もし、今日声かけが多かったって言うんなら私への警戒じゃない?」
ティカちゃんへ?
「うっわ! ネア、わかってないわね!」
どうせ、わかってないよ。
「もう、ネアってそーゆーとこおバカよね。大事な地元の子供って見守ってもらってるだけよ。まぁ、ネアが井戸まわり冷やすから生活に便利っていう利用価値も含むのかもしれないけどね」
ぽふぽふと撫でられて手を引かれる。
「気のいい人が多いし、姉さんになにかあったらまずお母さんがブチ切れて間違いなく被害甚大だからね」
弟くんのしみじみした口調にティカちゃんが笑ってる。
「あー、わかるかもー。おばさまって圧がアレだよねー」
内容はイマイチわかりにくいんだけど、こういう時間好きだなって思う。
引かれた手をぎゅっと握れば、きゅっと握りかえしてくれて笑ってくれる。転ぶ時は一連托生と弟くんの手も握る。
「さぁ、今日はしっかり問題解決よ!」
ん?
問題?
なんかあったっけ?
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