第232話 ダラける
実際のところ、人との付き合いは不得意としているネアです。
移動中や旅の逗留先の雑多な付き合いが大丈夫なのはそれが一時的なものだからです。
弟くんと言葉を交わし距離のようなモノが近づいた気がするのに、同じくらい遠ざかった気もするのです。これ、訳がわからない。
【不器用ですか】
不器用ですよ。ええ。
家族を楽しむ時、なんていうか、この光景を外から見ていたいって思っちゃうんですよ。
マオちゃんもかわいい。弟くんもかわいいと思える。でも、近くにいすぎると『しんどい』も出てくる。好きなのに。一緒にいたいのに。そうすると、迷宮内にいたこともあって管理空間に逃げてしまう。だって時間はほぼ流れていないようだから。狡い逃避。
べったりと床にだれる。
【ずっと此処に居てもいいんですよ】
甘く囁かれても、ここはここで流れていく情報量が多過ぎて疲れるの。どちらもしなくてはいけない。しなくてもいいとされていてもした方がいいことが多過ぎてきりがない。
それが、うん。生きるってことだと思う。
考える時間すら消える忙しさはどうかとも思うけど。いや、なにがあっても捻出していけってことかな?
【作業は自ら増やしているのでは?】
天職の声さんに無茶振りされていることも多いとネアは思います!
後悔はしていないけど、迷宮支配とかはほぼ強制でしたよね?
迷宮跡地の汚染壊死は最終どうなるのかはわかりませんが、ろくなことにならないことはわかるのです。
【砦の先、『失われし大森林の先』『呪われし荒野』が参考になるかと】
獣人の王国があったというお隣の国ですよね。国境線できっぱりとなんの草も生えない土地がひろがっているのです。砦の物見台から見学できる光景は遠くを見ようとすればにじんで歪んでいるように見えました。
そう言えば、あっちには迷宮跡地ないんですね。
支配せよとか言ってきませんもんね。久々に天職の声さんが返事をくれるので嬉しくて色々聞いてしまいます。発声しなくても答えてくれますしね。……やっぱり最近は放置されてた?
【獣人の国のすべての迷宮は地上と共にせん滅されました。迷宮の怨嗟と呪いは管理者の権限により迷宮神子に留めおかれております】
は?
管理者の、権限?
待って。待って。天職の声さんはなにを言っているの?
【神子の意識が磨耗しきれば、呪いと怨嗟は周辺国の迷宮に波及するでしょう】
えっと、それって、気のせいじゃなければこのティクサー、まだまだ危ないってことじゃないですか?
迷宮への影響はその影響下への影響ですよね? 待って。わけがわからない。
迷宮みっつ管理支配下において、迷宮さえ維持できればこの町安泰じゃないんですか?
え?
ええ?
ティクサーで安心しておだやか生活を送るためにはまだ攻略するべき難業が待ってるんですか?
【はい。そうなります】
天職の声さん、間違いなく天職の声さんが私の作業を増やしています!
【いいえ。迷宮核を兵器利用し獣人の国を滅ぼし、アドレンスの三迷宮より迷宮核を奪った者こそが事態を引き起こしました】
あ、はい。実行犯がいる訳ですね。帝国っていう。つまり天職の声さん自身の犯行ではない。と。そこは失礼しました。
【実行者も主犯も不明となっております。対処をせねばならない訳でもありません】
確かに、それを結局選んでいるのは私だ。なんとかしたい。安全に暮らせる場所を維持したい。
【あなたは自由です】
うそつき。
【選択権は常にあります】
私以外にも迷宮管理者はいるの?
【います】
ねぇ、天職の声さんをどこまで信じていいの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます