第229話 迷宮探索という名のピクニック

 お芋入りのふっかふかちょっともっさりのパン、蒸しパンと兎肉の塩焼きを朝ごはんでいただき、家族での『ティクサー薬草園』探索に向かうマーカス一家ですよ。

 基本的安全は確認されているそうです。逃げるウズラぐらいしか攻撃力のある魔物いませんからね!

 グレックお父さんが警備隊人たちに「変わりがないか」と確認をとって大丈夫らしい返事をもらい、久々の『ティクサー薬草園』です。

 ようやくの二階層ですよ。

「この葉っぱがブラナン。軽く水に晒してから茹でて食べると美味しいよ。根の部分を裁断して煮詰めると糖が残るからある程度煮詰めてから『分離』か『抽出』系のスキルギフトで砂糖が採れるんだよ。残存魔力は低いから魔力の慢性枯渇症の人にも食べてもらえるって尼僧様がおっしゃってた」

 地上で栽培するとほぼ魔力はなく、甘いだけの嗜好品が採れるそうです。

「お砂糖が安く手に入るのはスゴいね」

 残存魔力の少ないものは薬草だとお安いですが嗜好品でもある砂糖はどうなんでしょう?

 そして、このブラナンが存在したのでシュガーポットグラスは不人気です。砂糖としては高品質のはずなのに、なぜ負けた?

 おかげで在庫は蓄積されているそうですよ。

「この階層はウズラもいますからね。お肉と卵をドロップするまで狩ってみせるわ」

 マコモお母さんがにっこりです。

 ウズラは逃げ足がものすごく速く、今までに狩りに成功したひとは十人に満たないらしいですよ。

 ウズラの逃げ足……。

 グレックお父さんに抱っこされてたマオちゃんは「あんまり走り回らないようにと注意されながらおろしてもらっていました。

「それにしても、ネアはずいぶん体力がついたのね」

 マコモお母さんが優しく髪を撫で梳かしてくれますよ。どうしましたか?

「十分なごはんを用意してあげれなくてごめんなさいね」

 確かに国を出てから食生活は改善されて、動かせる魔力はどんどん増えて、それに合わせて体力もついてきたけど……。あ!

 横でグレックお父さんがショックを受けてますよ。マコモお母さん! 横見て、横!

「成長期だったのに。まだ、間に合うといいのだけど」

「……す、すまない。用意ができなくて……」

 グレックお父さんの声にマコモお母さんがきょとんとした表情でゆっくりと横を見ます。

「あら」

 あら?

「いらっしゃったのね」

 マコモお母さん……。

「住居の用意はしてくださったでしょ。なら私が獲物を狩るべきだと思いますよ。私は私が不甲斐ないだけですわ。グレック様は十分に責を果たしておられます」

 えっと、たぶん、このままグレックお父さんはデレデレタイムだから、私と弟くんでマオちゃん見とこうね。と視線を交わしますよ。

 いや、両親仲が良いのはいいんだけど。ちょっとツンされるのがグレックお父さんにとってはツボらしいですよ。よく、わかりません。

「甘すぎず、ツン過ぎず。この距離感が円満?」

「ぅうん。たぶん性癖?」

「ああ、狐耳とかのもふ要素と絶妙塩対応……お父さんってそういう癖かぁ」

 もふ、いいよね。もふ。

「弟くんのせーへきは?」

 ついでなので聞いてみた。

「僕の、性癖。なんだろう?」

 えっと、例を出すならぁ。

「胸の大きさ」

「特にこだわりがないなぁ」

 ないのか。

「じゃあ、年上か年下か」

「それぞれに魅力があると思う」

 年齢は節操なしっと。

「はーくん、もふもふは好きだよぉ!」

 マオちゃんが可愛らしく主張します。

「それはマオが尻尾のお手入れをサボるから僕が梳いてるの」

「はーくん、マオのもふもふさわるの好き!」

「ネアもマオちゃんのもふもふさわるの好きー」

 マオちゃん自体が好きー。

 すり寄ってくるマオちゃんかわいー。

「マオちゃんが可愛いからって妙な気、起こす?」

「おこしません。マオは可愛い妹だろ」

 ちょっと怒らせちゃったかな?

「うん。ハーブくんもネアのかわいい弟だよ」

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