第217話 クノシー七日目二つ名
今日はクノシー最終日です。夕方前に野営地にむけて町を出る予定だと大人組に説明されたネア・マーカスです。
つまり、教会に行って『今日、クノシーを出ます』とマコモお母さんたちに連絡を入れておかねばなりません。
昼過ぎまで自由行動で、お昼から軽く伐採追加してそのまま一番近い野営地で野営ですよ。
明日の朝、野営地出発時にクノシーでの評価書をドンさんが預かって、ティクサーの警備隊に提出後、往復の魔物狩り伐採の評価も併せて報酬が決まるらしいです。(フロアの焼き払いは別料金で支払われてる)
教会で会った王都から来たらしい警備隊所属の人がちょうど居住登録しているところに居合わせたんですが、振り返った彼が私を見て嬉しそうに笑ったんですよ。たぶん初対面、だと思うんですが?
「ああ、あの時、王都で水を売ってくれていたスライム虐めの幼女! あの時はろくに礼も言えず、追い払うように追い出してしまって。無事で良かった。……あ、えっと、受験は、また、機会があると思う、よ?」
お礼を言われて驚いているうちに勝手に学都受験失敗して今ここにいると思われてしまいましたよ? スライムと遊んでいたのは確かですが、彼ら喜んでましたからね? 虐めじゃないんですよ!?
「元気です。そして、ちゃんと合格しました」
「ああ、そうでしたか! おめでとうございます。クノシーにお住まいならまた会えますね。嬉しいことです」
こちらの微妙な心境に気がつかないのか警備隊の制服の人はにこにこです。
「あ、今日でティクサーに戻ります。ご健勝によきご活躍を」
グレックお父さんに聞いた会話切り上げ挨拶ですよ。ちょっとご挨拶文句は欠けているかもしれませんがお互いにご用事あるし、実際のところ知り合いというわけではないのです。
司祭様が立つ伝達窓口でさくさくティクサーの教会経由で役所の父宛ての伝言を頼んで、クノシーの町を散策するんですよ。スライム虐めは人聞き悪いと思います。
でも、マシだったんですよね。
「え。酒場では『クズ狩り幼女』だったぞ?」
「そうそう、『延焼の使徒』とか『クズ狩りマジン』とかも、じゃないかな。みんな好意的な意見が多いけど、絶対本来の意味忘れられる異名がつきそうよね。まだ不安定だけど、すでにつきかけているのが流石と思うよ」
ドンさん、イゾルデさん。
ネア、聞きたくなかったかなぁ。
それに『好意的』?
「好意的なんだ」
「だって、ネア。小さいからギルドカードじゃなくて、まず教会の住民カードの提示を求められるでしょ? 自分からはギルドカード見せびらかしているけど」
う。
「ちゃんと十歳だし」
「そうね。だからぼんやりネアちゃんとかうっかりネアが定着せずに行動で呼ばれているんだからいいんじゃない? 『あの葛をたくさん刈ってくれた子』『葛を燃やして迷宮探索を進めやすくしてくれた子』って感じっぽいし」
でも、ちょっとイヤなんだけど?
「クズ狩り幼女なんて二つ名は学都にいけば薄れるさ。次の凶々しい二つ名が安定するだろうさ」
「二つ名なんていーりーまーせーん!」
クズ狩り幼女のクズの響きが妙に葛じゃない気がするのがまたイヤですね。
話題ついでに聞いたんですがルチルさんは『茶熊の』と呼ばれるそうです。髪色ですかね?
ドンさんは『お調子者の』と呼ばれているそうです。面倒見のいいおじさんだと思うんですけどね。
【『茶熊』は帝国迷宮でよく出没する魔物『グーノス』の別名でもあります。狂化しやすい魔物であり、見境ない攻撃を繰り出すため迷宮の厄介者ですね】
へぇ。雑学。
でも、魔物の種族名を二つ名にもらうってこと多いものなの? 知名度による感じ?
【印象と納得度合いでは?】
だから、私は『クズ狩り幼女』だと……。
幼女は成長するんですけど?
成長しますから。まだまだ成長しますからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます