第204話 クノシー五日目『蒼鱗樹海』2
ティカちゃんがなんとも言えない表情でイゾルデさんとなにか喋っているのを眺めながら猪肉の腸詰をもぐもぐってるネア・マーカスです。
ルチルさんがにこやかに「『集積』便利ねぇ」とほめてくれます。
分岐路は安全区画ではないらしく、時々虫系の魔物がイゾルデさんとドンさんに排除されています。
「どうして今距離がいるんです?」
あっちあぶないっぽいです。
「んー、ネアちゃん、ティカちゃんのこと好きよねぇ?」
「うん。好きだよ」
おにーちゃんでもおねーちゃんでも通りすがりでもなく、おともだちだと思っているし。
「そっかぁ、そうだよねぇ」
ルチルさんに頭を撫でられましたよ?
「ティカちゃんもネアちゃんが好きなんだと思うのよ?」
ティカちゃんはよくわからない子ではありますが、たぶん好かれているのはわかっていますよ?
すぐ怒るし、厳しい物言いをしますが、私に害のあることは言ってきませんし、行動もしません。すごく助けられていると思っています。
最初に睨まれたと思っちゃったのはたぶん、ティカちゃんの人見知りさんですね。今思えばすっごく頑張って声をかけてくれたんだと思うんですよね。
イゾルデさん、けっこう意地悪だなぁと思うので虐められていないといいんですが。心配。
「でもねぇ、できることが違いすぎてねぇ」
うっ。
確かにできることは違う。
私が気がまわらないところを先回りして注意してくれたり、上手に和ませてくれたりしていて。うん。
「私、いっぱい迷惑かけてる」
「え? そこ? まぁ、かけてないは言えないわよねぇ」
うん。そうなの。今回も無理言ってついてきてもらったような感じだし。
「私、わがまま過ぎたかなぁ?」
嫌われちゃった?
「んー。そこは気にしないでイイんじゃないかしらね。どっちかと言えばティカちゃん、自分の力不足に悔しがっているだけだと思うもの」
力、不足?
「は?」
思わず声が出た。
「魔力総量とか、持ってるスキルギフトとかネ。お互い出来ることと出来ないことを比べちゃうのねぇ。かわいいわぁ」
ルチルさんににこにこ撫でられましたよ。
「魔力総量ってどうしようもない個人差だし、スキルやギフトは迷宮に潜った時の運と親からの血の引継ぎだよ?」
「そうね。家族と移動を繰り返して、築きあげた気配りも個人能力よね?」
あー。
「そうだと思う。私。ネアね、どちらかと言えば対人関係ってめんどくさいって思ってる。だからたまにイゾルデさんの行動がわかっちゃう時もあるの」
「ね。ネアちゃん、イゾルデは理解してあげちゃダメだわ。アレは悪い見本よぉ」
ルチルさんが真顔で注意してきました。
えっと。
「露出趣味と恥じらいのなさは真似してはいけないかと感じてはいます、よ?」
「ならヨシ」
うぅん。今問題になってるのって私とティカちゃんがお互いないものねだりしてるってことかなぁ?
「ネアちゃんはヤキモチや嫉妬むけられるの平気?」
「興味ない相手からのそーゆーのはどうでもいいかな」
「んー、わかるわぁ。でもねぇアタシ、リエリーにヤキモチや嫉妬むけられたら死んじゃう」
ん?
「あんまりの可愛さに悶え死んじゃうの?」
わかる。マオちゃんが嫉妬で「おねぇちゃ、嫌い」なんて言い出したら嫌い攻撃力と反抗期だぁって可愛さで尊さに溺れて死ぬ。可愛すぎる。
「う、否定しきれないわっ」
うんうん。そうだよねー。
「ここでしてる話題じゃないんだろうけど、ティカちゃん、迷ってるならそれは落ち着かないとあぶないよね」
そばにいたら怪我させないように頑張れるけど、距離があると万が一の危険がないなんて言えない。
ティカちゃんがなにを気に病んでいるのかはよくわからない。
「面倒ばっかりかけるから、めんどくさいって思われちゃったのかなぁ」
私なら面倒臭い。時々、イライラさせてるのはなんとなくわかってたし。
「それ自体は気にしてなさそうねぇ。どっちかって言うと金銭的負担をネアちゃんに引き受けさせてる引け目かしら?」
はぇ?
なにそれ。
私がわがまま言ってきてもらってるんだよ?
ほっぺたをルチルさんにぶにっとつかまれました。おっきな手ですね。
「んもー。ネアちゃん、ぜったいにわかってない子だわぁ!」
なにを!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます