第188話 クノシー伐採二日目6
一応、迷宮入り口までは行きましたネア・マーカスです。なぜ一応となるかといえば土泥を撒き散らした後始末に木こりさんたちがお顔をひきつらせたからです。斜めにすっぱりと切れた木の断面は危険だと判断され引き抜くなり、鋭利な部分を折るなりの処理が多いらしくて手がまわらないと言われてしまいました。
土埃をかぶっているので薪拾い班も速度がゆっくりです。
泥地のヒルもちょっと散布してしまったらしいのは反省します。
夏の日差しが泥を乾かすんじゃないかという予想はあたりましたよ。
土埃が悪化しました。
えっと、迷宮入り口までの残りの距離は軽い剪定で葛と枝を落とす作業となったんです。葛の藪がすごいなと思ったらちょっとした岩場だったりすこしわき道にそれたりもしながら迷宮入り口にタッチです。
迷宮入り口は大きめの岩場で、裏にまわろうとすると地面が急になくなり、その下には川が流れているのが見えました。川はすこし行くと地面の下に潜っている潜り川と呼ばれているものでした。
つまりあの辺、下手に掘ると穴があいて下を流れる川にどっぽんと転落するわけですね。『天水峡連』にたどりつきそうな感じですがこのルートだと死にますね。普通に。
水流きつそうですよ。はい。
周辺の草刈りと葛刈りはしときました。
迷宮入り口周辺は冒険者の人たちが休憩場所を作るために木を切って怪我人を休ませることができる場所をつくってありました。ほったて小屋葛まみれ仕様です。内側にはなかったから雨を凌ぐためにあえて葛の侵略を許したっぽかったです。
「間引かれているあとはやっぱり木の幹が太いね。おひさま浴びて気持ちよさそう。このくらいの太さならテーブルは無理でも簡易の椅子ぐらい作りやすそう」
「そう日光は大事だ。ティルケはよくわかっている」
イゾルデさんがにっこりとティカちゃんを褒めます。褒められたティカちゃんはイゾルデさんを胡散臭げに見上げました。わかる。あやしいよね。
というわけで、(本当は何がというわけなのかわからない)私はイゾルデさんに「あっちに人はいない。熊が出ようが猪が出ようが狼が群れで出ようが対処できる戦力はある。やってしまえ。好きなスキルを使って森を蹂躙せよ! あ。燃やすんなら消火は考えとけよ。やばいわ」と唆されてしまいました。
町に帰ってきて他の人たちから報告をもらったというクノシーの警備隊隊長さんに怒られて(イゾルデさんが主体で怒られてた)からの夕食になったとだけ述べておきます。
もぐもぐしながら眠気を振り払います。まだ、ごはん中なのです。
美味しい。眠い。魔力使い過ぎた。です。
帰り道もちゃんと葛の蔓を刈りながらでした。
魔物は、エリアボス蛇が気を配ってくれたのか熊がでました。おっきいですね熊。
ばっきばきに細い木々を薙ぎ払っての登場でしたよ。
切りにいった冒険者のお兄さんの剣がぶち折れて吹っ飛んできましたよ。ドンさんが弾いてくれたので驚いたで済みました。
「ちょっとネア、眠いんならもう食事を諦めて寝なさいよ。あとで食べられるようにまとめといてあげるから! スープで溺れ死んだらイヤでしょ」
ティカちゃんがなんかお世話やいてくれてます。
「うん、桶に張った水で人は死ぬし、濡れた布巾一枚でも死ねるもんね。寝る」
「う、うん。あ、お部屋まで連れて行くから! もう、先に行かないの。ほらつかまって」
うーん。ティカちゃんがデレた?
お布団に放り込まれた時に巻き込んじゃえってしようとしたら「ごはんの残り、あとで食べられるように詰めておかないとイゾルデさんたちが食べちゃうわよ。いいの?」
それはイヤだったのでかいほうしました。
「おやすみなさい。ネア」
ティカちゃんがお母さんのようだなと思いながら私は眠りの深淵に落ちました。
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