第187話 クノシー伐採二日目5
街道すぐより、迷宮入り口に近づくほどに道は悪く、半端に育った木々と日光を遮る葛。そして密集して育つが故に成長がうまくいっていないのかなと思うネア・マーカスです。
伐採ポイントに向かいながらも葛の蔓を切り落としていきますよ。
人の気配がないことを確認して小さな範囲で飛地的空白地をつくってみたりです。タガネさんの荷馬車が二台くらい停めることができる広さがイメージです。
兎と山鳥が仕留めれたようですが、ドンさんが確認できた死骸を森の奥に投げ入れてすぐ戻ってきます。
ヒルや蛇、野鼠やアナグマがさっさと血肉を処理してくれた方が伐採後の処理の一環で薪拾いにくる冒険者の人たちの安全確保だそうです。先に森に入るのは警備隊や戦闘職冒険者の人だそうですが集まってしまっていると面倒だそうです。私も庇えるのはティカちゃんくらいですね。
暗い森にゆっくりと光が差し込みます。とりあえず広範囲伐採をしておけば、木こりさんたちがあとの整えはしてくれるという話になっているので気楽なはずだったんだけどなぁ。
いい訓練になると意識を変えるべきなんだろうけど、すこし面倒ですよね。
ざくざくと森を進みます。『蒼鱗樹海』私が管理する迷宮の影響を受ける土地。私を攻撃してこようという魔物はいません。パーティに攻撃してくる魔物はティカちゃんやイゾルデさんたち狙いです。あと接待。ええ。ええ。お肉や美味しい食材は歓迎ですからね。
すこし蛇行する小道を歩いて次の伐採ポイントです。
ちょっとした泥地があるので遠回りになっているそうです。ドンさんが現地の冒険者さんたちに聞き取りをした範囲ではヒルと蜥蜴がうぞうぞいるので寄らない方がいいとのことでした。
とりあえず泥地部分は伐採しようと思います。乾くかもしれないし。
意識を集中して、し過ぎると管理空間に意識がいっちゃうのでほどほどです。ほどほど。イゾルデさんの位置を確認。他にも人がいないことを確認。エリアボス蛇に魔物の退避を要求。扇形に風を使った伐採を行います。上部の枝葉を落としていきましょう。葛の蔓は低めでも切断です。切断。風はイゾルデさんを迂回してすぐ後ろで消失させましょう。できるはずです。
むちゃくちゃ操作に魔力取られますけどね!
起点は地面の土ごとこそぎますよ。荷馬車一台が通れる道にするなら根っこもない方がいいですからね。きっと。
「じゃあ、ここからイゾルデさんにむかって『伐採』すればいいんですよね?」
本来の『カマイタチ』という名前へのこだわりは捨てました。
ギフトがスキルに変わったものは時に鍵となる言葉の詠唱すら不要になることが多いため、ドンさんは「お、スキル化したか。使いまくってりゃそうなるか」と言っただけで流しましたね。
「お、合図送るからそれからな」
え?
「さっきはイゾルデさん何も言いませんでしたよ?」
合図ってなぁに?
「あ? ああ。鈴を鳴らしてたろ?」
さあ、やれ。という掛け声と共にそういえば手首についた鈴が鳴っていたかも知れません。いえ、音は鳴ってません。鈴が付いてたのはただの鈴を模した飾りと思っていました。冒険者の験担ぎ的なお守りか何かだとてっきり。
「報せ鈴っていうの。お互いに鈴同士を触れ合わせることで登録して合図を送るっていう魔道具よ」
ティカちゃんは知ってました。
くぅ。そんな便利道具があるのか。
「人の少ないあたりでないと使い難いけどな。合図送るからなー。さぁ、伐採だ!」
息を整えて。
「『伐採』!」
思ったより、土埃……まきあがった森の土が散乱しました。
黙々とティカちゃんとドンさんに『清浄』をかけさせていただきました。イゾルデさんがきたらちゃんとイゾルデさんにもかけようと思います。
「いろいろ試すのはいいが、もう少し規模は小さくてもいいかもなぁ」
ドンさんに苦笑いいただきました。
あそこまで土がまきあがるとはちょっと思いませんでした。
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