第189話 クノシー二日目は寝落ち

 迷宮管理空間にいることに気がついたネアです。

 夢かな? とも思ったんですが、違いました。

 深い青緑に染まった空間はふわふわと揺れるイメージが強く出ています。

「天水峡連?」

 そう。ここは『天水峡連』の迷宮管理空間です。

 管理者専用の管理空間ともいつもいる『ティクサー薬草園』や行きやすい『蒼鱗樹海』(この二つはあまり印象に差がない)とはずいぶんと違う感じです。

『きげんよう。ヌシ様。お呼びたていたした』

 首の長い亀がそこに居ました。

『天水峡連が迷宮主天水で』

 天水ちゃんでした!

 天水ちゃんは亀でしたか。今までのおしゃべりは気配だけでしたからね。具現する迷宮主や迷宮核の化身ってどういう基準で姿を決めてるんでしょうね? 邂逅ちゃんもその姿を見る日が楽しみです。……蒼鱗ちゃんも見てませんね。そういえば。

 最近天職の声さんは応答が少なめですよ。

 それよりも、ごようはなんでしょうか?

 天水ちゃんもエリアボスが必要?

 開門まだでもエリアボスくらい必要だよね。

 それとも光苔のお花見せてくれるのかな?

「天水ちゃんは天水ちゃんなんだね」

 とりあえず個体名それでいいのかな? いいんならいいんだけど。

『是。天水よりヌシ様へ報告を』

 報告?

「なにかな?」

『『蒼鱗樹海』を含む水流、水路支配迷宮展開の完了を。以後、守備、深化に』

 えっと。


【入り口のひとつに接触したことを機に報告しておこうと思いたったようですね】


 応答が少なめですよ。と思ったらわきましたね。サポートは大事なんですよ?


【常に見守りしています】


 はい。ありがとうございます。

 って、入り口?

「入り口って『蒼鱗樹海』入り口脇の川?」

『是』

 光苔育ててるんじゃなかったの!?

「天水ちゃんからの情報、光苔のお花咲いたって」

 ぇええ。

 ええ。

 なんだろう。うまく反応ができないぞ。

 ええ、この子なにやってるの?

『是』

 するりと回転し、その甲羅を見せつけてくる。

 ん?

 うすらぼんやり輝く苔?

 そっと天水ちゃんが魔力を通すとぽんぽんと小さな花が咲きました。

 そっかー。甲羅でお花育ててるんだ。おしゃれさんだねぇ。

 想定外でした!

「かわいい光苔のお花は守らないとね」

『是』

 天水ちゃんは相談ごとがあるわけではなく、ただ本当に思い立ったので報告しておこうと考えたようでした。

 もう少し個人対応を私がすべきですかね!?

 でも、迷宮の内部の様子を見せてくれましたよ。

 一階層目は地上および一部町中の水路を再現した水場。僅かに乾いた場所あり。魔物の配備はスライムに魚、トカゲや虫の幼虫に蛇やワニ、亀や山椒魚などもいるそうです。

『蒼鱗樹海』のですが、『天水峡連』も二階層に行くのがやたらと大変そうですね。


【物質的な距離は強みですね。迷宮に強さがなくとも侵入者が迷宮を彷徨うことでその生態魔力は迷宮の糧になるのですから】


 ああ、だから恩恵も大事になるんだ。

『ティクサー薬草園』は敵は弱く恩恵多めで迷宮滞在時間を狙ってますからね。『蒼鱗樹海』のような広大さはないですけど、弱者がいきなり『蒼鱗樹海』などの戦闘力の高い魔物がいる迷宮に行くのは危険ですからね。慣れた冒険者の方々には不足ばかりでしょうが、ええ。近所に熊も大蛇も出る迷宮があるんだからいいですよね。

 むしろ『ティクサー薬草園』は冒険者養成施設ですよ。たぶん。ウズラは狩られたんでしょうかねぇ。『ティクサー薬草園』における数少ない……現在唯一のお肉ですが、影ではなく実在魔物とまだバレていない、なんてないでしょうしね。

 それにシュガーポットグラスはどうなっているんでしょうね。私のお砂糖……。


【三階層はほぼ初見殺しと言える危険度では?】


 失礼な。三階層にはスライムと他の迷宮への入り口の隠し部屋しかありませんよ?

『地底鰐のたまご』

 ん?

「天水ちゃん?」

『五個に三つは仔鰐。ひとつは砂糖。ひとつは塩。ヌシ様、食べるのお好き』

 うんうん。

『地底鰐のたまごも仔鰐も美味しい』

 え。

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