第185話 クノシー伐採二日目3
お昼のパイを食べて、イゾルデさんが迷宮の入り口にむかうのを見送るネア・マーカスです。
伐採をすることは昨日到着時に迷宮入り口の詰め所まで連絡はいっているらしいのです。区切り区切りに印をつけておき、侵入禁止した上でその区間と区切って伐採しましょうという意図らしいです。
印は三つついているけれど、伐採は一番小さな範囲で、人が寄ってもいいのは一番大きな範囲でとなっているそうです。具体的には街道から森の小道に入って街道にむけて伐採剪定するらしいです。枝が多少落ちるのはかまわないけれどぶっ飛ばしてはいけない繊細な操作を求められているようです。
諸注意担当の木こりさんと狩人さんはここまでの街道伐採の後始末でまだこっちに回って来れないらしいのでのんびりモードですよ。氷をいくつかつくって空気を冷やしながらの待機ですよ。
木々の周りでましはましでも暑いんですよね。
ティカちゃんが言うように夏の期は夏の期らしくあるのがいいというのもわかるんですけどね。
すこしだけツル植物(葛以外もある)を風で分断し、落としていく。それだけでもすこしだけ明るくなっていく。あと、迷宮への入り口に続く小道を広げるために下の茂みも刈りとっていく。木はまだ切らない。ただ細かい枝は落として禿げさせていく。ドンさんの目が「なにやってんだ」と言ってるようにも感じるけれど、言われてないから大丈夫ぅ!
茂みの切り拓きは「街道塞ぐのもな」と容認っぽいです。
細い木々を斬って、根っこを掘り出して地面を踏み固めていく。私が担当しているのは木をとりあえず切り倒すまで。あとの作業の方が大変だと思います。
ドンさんが枝葉を落として禿げた細い木をばっさばっさと切っていきます。使っているのはナタですね。
「魔物に襲われた時に武器をふるうことできる広さを確保できてある方がいいんだよ。水を含ませてゆるむ地面なら適当に根を切れば引き抜けるだろうしな」
ごっつい木はこのあたり生えてませんもんね。主に葛の繁殖に伴う日照不足で。
ちょろりと泥からわく蜥蜴はそのままナタで無造作に叩き落としていますね。小さな泥なので出てくる蜥蜴も小さく、皮をとるまでもない感じです。
この感覚が足りているっていうことなんだろうなと感じます。それをそう伝えてもティカちゃんはすこし難しい表情で睨んできます。たぶんわかり難い感情と説明だったんだと思います。
おなかがすいていたら、この小さな蜥蜴でも皮を剥ぎたとえ少量でも肉を食べるためにあがいたと思うんです。自分も飢えていない。弟妹も両親も間違いなく飢えていないんですよ。
だから、今。自分は食べることは足りていて、それ以外のなにかのためになにかをしようと思える余裕がある状況なのである。
「それ、ネアが考えすぎだと思う」
ティカちゃん、容赦ないですよ。
「ティカちゃんは、それまで狩っていたものを狩らなくなったなと気がついた時、どう思うんです?」
ちょっとムッとしたので聞いてみますよ。
「うん? 狩っていたのを? そりゃ他に効率のいい狩り対象ができたのか、飽きたら他に移るんじゃないかしら? ぅん、つまり、特になんとも思わないかしらね」
ええぇ。
「ふ、不満そうね!?」
泥に沈みかけていた蜥蜴の死体をつまみあげてティカちゃんは物思いに吐息をこぼします。
「自分が狩らない魔物は次の弱い子が狩るわね。だから私たちは次の狩り対象を見つけて移動するの。それぞれにできること違うんだからできることを頑張るんでしょ」
青いただの革になった蜥蜴を揺らしてティカちゃんが私を見ます。
「革になった!」
「ギフト『皮革化』っていうのよ。けっこう便利なんだ」
得意げなティカちゃんですね。確かにすごいです。すごい時短ですよ!
「すっごい。それにすごい綺麗な青い革になったね!」
「そうだね。綺麗な青だね」
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