第12話 王都にて
一晩クノシーに泊まって早朝から王都に向かうと予定を告げられました。
道中狩った魔物の肉をクノシーの冒険者ギルドに納めて王都への伝令を依頼されたそうです。
ルチルさんは岩蜥蜴と森林蛇の肉を受け取ってにこにこでした。
「ネアちゃんはしばらく同行やなぁ。水出せるし火ィつけれるからな。王都で水不足の場所でちょい頑張ってもろーて、アッファスが学園都市での受験までは一緒でええかなぁ。グレックのオッさん、ネアちゃん学園都市受験させたがっとたしな」
「まっ、なんなら受験費用くらい用立てちゃう? 今ならリリーちゃんもいるし良いかもだわ」
「寮費と受講料ちゃーんと稼げんと詰むやろが阿呆か」
「タガネちゃんひっどーい。ネアちゃんは薬草をちゃんと摘めるのよ? 学園都市の初心者向け迷宮でちゃんと稼げると思うわよ? 荷物袋あるし」
「ちまいうちからソロはヤベェやろうが」
「リリーちゃんもアッファスもいるじゃないのー」
「阿呆。それは妹ちゃんとあっちゃんが不利益被るやろが。行ける難易度がちゃうグループはどこかで不満がたまるしようないわ」
そんな感じで夕食後も大人二人は言い合っていたと思う。
心配されているのありがたいのです。
私は途中から記憶がありません。
寝落ちました。
朝は朝食を出してもらって、ついでに水瓶に水をためる練習を一度させてもらってから出立。
アッファスお兄ちゃんは学園都市にいるルチルさんの妹リエリーお姉ちゃんに手紙を届ける依頼を引き受けていた。
タガネさんはギルドの事務員さんに王都宛ての小荷物(書類束らしい)を預けられていた。
町を出てしばらくは荷馬車で進んでいたけれど、途中でタガネさんとアッファスお兄ちゃんは降りて横を歩き出した。
すこし大きめの岩蜥蜴や火を飛ばしてくるタヌキの討伐のためだった。
魔物を狩りながらも昼前には王都の城壁が見えてきた。
そこまで高くない城壁はところどころが裂けて崩れていた。立ちのぼる煙は煮炊きの煙だろうとタガネさんが教えてくれる。
門番の人はギルドカードをチラッと確認すれば「長居はするなよ」と通してくれた。
崩れた家、ごろごろとハゲた石畳み、広場に広げられた天幕に疲れているのがわかる人々。
なにもできない人間が増える余裕がないのだと思えた。
たぶん、クノシーの方が余裕があるだろう。
「ちーっと待ってな。さっさと渡すモン渡してネアちゃんとあっちゃんの出国許可とってくっわー」
アッファスお兄ちゃんが未成年の出国には国の許可が必要だと説明してくれた。大人になればギルドへの届出だけでいいらしいけど。
「ネアちゃんはオッチャン戻ってくるまでそこの水路でお水を流しときぃ。あっちゃんは護衛とお水欲しいつー人がいたら小金もらう役なー。水路を流れとんを汲むんはほっときぃ」
振り返ったタガネさんのそんな言葉に何人かの人がうつむいていた頭をあげた。
だからなのか、水路までの道はすんなりすすめた。
水路の水は少なくて澱んでいる。
「いつもはスライムが浄化作業しているんだけど見当たらないし、水量も少ないなぁ」
「そうなんだ」
水を出す。
落ちた水は澱みに混じりゆっくり流れをすこし早めさせる。
「アッファス、水、買わせてくれ」
「スヴェンセン、容器持ってこいよ」
「ああ」
アッファスお兄ちゃんの知り合いっぽい冒険者のお兄さんが声をあげてアッファスお兄ちゃんが了承してみせると他からも声があがった。
よくわからない私はアッファスお兄ちゃんにおまかせでタガネさんが戻ってくるまでひたすらお水だしてました。
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