第9話 エリアボス蛇

 はい。ネア・マーカスです。

 蔓を編んだマットを荷馬車の荷台に敷いてもらって寝ているお子様です。

 アッファスお兄ちゃんが栗鼠とか兎、蛇を狩ってきたので具沢山スープと焼き肉と結構豪華な夕食でした。血と内臓を洗い落とす穴を掘って解体作業。

 やり方がわからない私は洗浄水担当として頑張りました。

 蛇を見た瞬間、『エリアボス蛇!?』と焦ったら天職の声さんにソッコウ【違う個体ですね】とツッコミいれられたんですよね。

 エリアボス蛇はもう少しサイズがあって鱗模様も違うんですけどどう成長するかわからないんですもん。

『アルジ、エリアボス蛇、簡単ニハヤラレナイ。チャントヤル』

 差し出した手のひらにごりごりと自らその頭を押しつけてくるエリアボス蛇はかわいいと思います。


【野営地を越え中継の町までは『森の迷宮』の守備範囲内です。中継の町を越えれば迷宮への干渉にかかる魔力が増えます】


 荷馬車の外で火の番をしているのはアッファスお兄ちゃん。しばらくタガネさんがお兄ちゃんに野営の注意をしてから火のそばで仮眠にはいっていった。

 私はそれを迷宮の管理空間で眺めていた。

 薄い緑の迷宮核へエリアボス蛇が魔物核を投入していく。

「配置魔物増やしておくね」

 増やすのは兎と栗鼠。蟷螂と百足。ワームと茸、蒲公英と百合と蜂。

『アルジ、多様性重視』

「うん。エリアボス蛇、私は無知だ。だからお兄ちゃんについて外に出る。いろいろ見てくるから迷宮を守っておいてくれる?」

『アルジ、エリアボス蛇モ迷宮守護樹モ居場所大事。迷宮守ル。迷宮ノ産物、倉庫イレル。アルジ、倉庫確認スル。アルジ、知ッタモノ倉庫イレル。エリアボス蛇カ迷宮守護樹、カッテニ迷宮ニ配置スル。迷宮育ツ』


【迷宮の倉庫と荷物袋を同期させることでエリアボス蛇が倉庫に入れた物をネアが引き出せます。ネアが入れた物は意図して『配置魔物』にしたい『ドロップアイテム』『宝箱の中身』にしたいと想定すればそれが反映されます】


 おお。楽ちん便利。


【消費魔力は距離で決まります】


 魔力切れになると荷物袋が使用不可になるらしいです。

 まぁいいか。

「荷物袋!」

 掲げるとエリアボス蛇がまっすぐ私を見て尻尾をかるく床にぱしぱしと叩きつける。拍手がわりか。かわいいぞ。エリアボス蛇。

『荷物袋!』

 繰り返した。かわいい。

「倉庫と同期!」

『同期!』

「近いうちにちゃんとエリアボス蛇と迷宮守護樹にもお名前付けるね」

 はしゃぐエリアボス蛇を撫でる。なんか動き止まった?

『……エリアボス蛇、名前ナイ?』

「エリアボス蛇はアルジ、名前じゃないと思う」

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