第4話 迷宮核精製

 私の名前はネア・マーカス。

 迷宮の管理者である。

 そして十歳の小娘に過ぎないのである。

 外出禁止の午前が過ぎ昼食後にティクサー薬草園から森の迷宮核の間へ移動する。たぶん、転移。薬草園に迷宮の入り口があるかといえばわからないし。

 森の迷宮核の間はたぶん地下。

 近くに水源があるのか空気は昨日と変わらずじっとりとしている。


【地下水源迷宮の核の間が近接しております】


 理解度を誉めるように天職の声が響く。

 心の声が筒抜けらしい。

 地図上に光る場所はあまりない。たぶん魔力が足りない。


【導力が不足しています。現在迷宮核は存在せず、管理者を核としてその魔力を流用し迷宮管理に充てております】


 十歳の小娘の魔力をナンダと思っているんだ。むちゃくちゃ言うな。


【エリアボス蛇が面会を求めています。お会いになりますか?】


 お会いします。

 てかエリアボス蛇がまるで名前のようですね。


【エリアボス蛇】


 天職の声さんの呼び出しで一匹の蛇。一メートルぐらいが現れた!

 育ちすぎじゃありませんか!?

 昨日うまれたばかりだよね?


『アルジ、ウケトル。魔石』


 ザラザラと魔石が積みあがる。


【主に狼、熊、猪、猿などこの大森林で生き延びた魔獣の核です。まだ足りはしませんが大森林迷宮用の迷宮核が精製可能です。精製しますか?】


「エリアボス蛇、スゴい! 偉い! 魔石って魔物は食べると強くなるんでしょう? エリアボス蛇が自分で食べても良かったんだよ?」

『環境、ツクル。アルジ。エリアボス蛇スコシ、魔石タベタ。アルジハチエリアボス蛇ニ。問題ナイ』


 天職の声の声を後回しにして私はエリアボス蛇を褒めたたえた。褒められたエリアボス蛇はうねりと身をよじりながら返事をくれた。なんていい子!

 ところでコレ、エリアボス蛇が名前になってる。

 名前変更きくかな?

 あとで確認しよ。


「迷宮核精製!」


 空間に浮かんだ『精製』の二文字を殴る。

 いやなんか殴りやすそうで。ね。

 ざらりと量のあった小粒の魔石が砕けてひとつの魔石にかわる。

 空間に浮かぶ水晶球ならぬ迷宮核。

 『森』だからだろうか薄い緑色だ。


【迷宮核ができると迷宮核の間への外部からの道ができます。迷宮核の防衛を上げるために防衛用魔獣を製作しましょう】


 は?

 天職の声さん、今なにおっしゃいました?


【迷宮核が生み出されると奪いにくる者どもがいるので防衛を上げることは必須です】


 だから、先に言ってよぉおおお!


【防衛用魔獣を選んでください】


 樹

 樹

 石

 霊


 項目おかしくない?

 気のせい?

 エリアボス蛇がいつのまにか持ってきたらしい魔石を迷宮核にぶちこんでいる。エリアボス蛇マジでいい子。

 必要な魔力量が違うらしく光具合が変化していっている。魔石から魔力を受けて選びやすくなっているのだろう。

 エリアボス蛇マジでいい子。

 マイペース気遣いのない天職の声さんとは大違い!

 ほら、樹と樹が区別がつかない。違いがわからないっ!

 二個目の樹で!

 タップ!

 迷宮核が植物の幹に埋まりました。まぁ、色々唐突に現れるよね。一応は慣れてはきた。

 虚脱感半端ありません。魔力持っていかれました。

 慣れてきたというより考えを続ける気力がないのかもしれない。追い詰めて思考力を奪うやり方にも思えるので控えてください。天職の声さん。

 天職の声さんが薬草園に送ってくれるそうです。用済みってことですね!

 ああ、帰る前に適当なエリアに設置『葛』『スライム』です!

 余力でできることはこのくらいだった。

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