第2話 かつての迷宮跡
私の名前はネア。
ネア・マーカスである。
恐怖に負けたとはいえ迷宮管理者になった私がマーカスを名乗るのはよくないのかもしれないがネア・マーカスである。迷宮管理者は人の天敵とか呼ばれるかも知れないならお父さんお母さん妹が世間様から排除される要素は廃したい。最悪私今日からおうち帰れないななんて思いつつ周囲を見回す。
ここはよくわからない暗い空間。
私は立っているわけでもなく、なにもない場所にへたり込んでいる体勢だ。そんな私の目前には『管理書』がふわふわと浮いている。さぁ、触れろとばかりにページがめくられる。
目次には迷宮一迷宮二迷宮三と書かれていた。ちかちかと光る迷宮一に触れる。
『迷宮一・ティクサー』(入り口一薬草園)
さっとティクサーの地図が開き赤い発光点がゆっくりと減っていくのが見えた。赤い発光点が森からの魔獣だと理解できる。
減っていくのは警備隊や冒険者達がなんとかしているのだろう。なんかそんな感じの情報が流れていっているなぁというくらいの理解。被害は出ているが町が落とされることはなさそうでほっと息を吐いた。
周辺地図もついでとばかりに広がる。
『森』状態劣悪非支配
『山』状態劣悪非支配
『水源』汚染非支配
!?!?!?!?
表示された情報に私は混乱する。
汚染と劣悪に囲まれたこの町このままじゃ崩壊一択じゃない!?
慌てて立ち上がり表示された『森』につい勢いで触れる。
パッと世界が変わった。
洞窟である。どこかじっとりと湿った空気は澱んでいる。
「ここは……?」
【大森林の迷宮核の間跡】
は?
【跡地を支配しますか?】
は?
【放置すると森の壊死までの猶予はあと三年となります】
「支配させていただきます!!」
タァップ!
【大森林迷宮を支配しました。大森林迷宮はフィールド主体型迷宮です。エリアボスとなる魔獣を選択してください】
狼
猪
熊
蛇
え。悩む。
狼や熊、猪は美味しいけど怖いイメージが強いのでとりあえず蛇で。
蛇を選択すると目前に三十センチくらいの黄色い蛇が現れた。
エリアボスとして小さくない?
【大森林迷宮の環境を変更してください】
パパッと森の地図が出てきて変更可能地点が点滅して自己主張してくる。
【エリアボスが栄養を摂れる環境を作りましょう】
先に作らせろよっ!!
キィっと気持ちヒステリックになりつつ森の奥の地図をバシンと叩く。
蚤と蛭と栗と魔力草を設置してみた。エリアボス蛇はするりとちかちか光る地図に滑りこんでいく。
ところで蛇ってなに食べるの!?
眺めていると蚤と蛭はもともと森に棲む猪や狼を餌として弱体化させエリアボスな蛇に献上した。
半自動で活動してくれるのはありがたいけれどその光景にはちょっとひく。
エリアボス蛇は肉を丸呑みついでに魔力草ももぐもぐ摂取しているようだった。あ。火吹いた。
妹も大好きな林檎も設置してそのエリア管理から私ははなれた。
他のエリアの光の明滅は消えており、今は何も触れないことがわかった。というか魔力欠乏で怠いです。
【ティクサー薬草園に戻りますか?】
もう私に用はないとばかりに天職の声は私を町に帰してくれた。
狼が暴れてめちゃくちゃになった薬草園に。
いろいろと思考する暇を奪った天職の声に苛立ちも感じる。
おのれ、天職の声め!
「ネア!!」
「あ、おとっ……んぁあああ」
お父さんに呼ばれ振り返ると首が痛くなる勢いで抱き締められて意識が途切れました。
ほんと、魔力を使い過ぎたんだと思います。
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