第12話 vsゴブリン剣士 後編

〈鍛錬:同格以上の敵を倒す1体が開始されました。時間内に完了できない場合、ペナルティが課されます〉

〈鍛錬:MPを使う100MPが開始されました。時間内に完了できない場合、ペナルティが課されます〉


「さあ、逆転開始だ――」


 俺は再び剣を構えて奴を見る。


 剣技スキルの一つ、【閃光斬】をもろに当てたのにかすり傷が出来ただけのようだ。

 こっちは掠っただけで大ダメージだってのに、ふざけた差だぜ全く。


「ガァ゛ァ゛ァァッッ!!!」

 奴は俺に反撃を喰らったのが予想外だったのか、激怒した様子で叫んでいる。


 怒りのままに振るわれた一撃を俺は回避し、またカウンターで【閃光斬】を放つ。

〈MPを使う 10/100〉

〈ゴブリン剣士ソードマンに攻撃する 2/5〉


 さっきまで回避に徹していたおかげもあって、奴の動きは手に取るようにわかる。

 だが、致命傷に至るには程遠い。

 単純な威力だけで考えれば【強撃】の方が強いんだが、奴と俺の敏捷差を考えればリスクが大きすぎる。

 奴が攻撃した隙を縫うには【閃光斬】の速度でなければ難しいのだ。


 今度の俺の攻撃は意に介さないらしく、続けざまに剣が振るわれる。


〈MPを使う 20/100〉

〈ゴブリン剣士ソードマンに攻撃する 3/5〉


 だが、俺に届くことはなかった。

 とはいえ、奴に対しても俺からの攻撃は微々たるもの。


 それを奴も理解したのか、俺の反撃などお構いなしに何度も攻撃を続けてくる。


 しかし、それは今の俺にとって好都合以外の何物でもない。


〈MPを使う 50/100〉

〈鍛錬:ゴブリン剣士ソードマンに攻撃する5回が完了しました。報酬が与えられます〉


『スキル『鳳剣』を手に入れました』


 俺は瞬く間に鍛錬を完了させ、新たなスキルを手に入れた。


 スキルはギフトと違って手に入れた瞬間に使い方を理解することが出来る。

 本来スキルとは使い方を理解した後にスキルとして発現するものなんだが、こういう後付けの取得法だと取得と同時に使い方も叩き込まれるのだ。

 つまり、今獲得したばかりの鳳剣コレも使えるってことだ。


「ガァ゛ァ゛ァァッッ!!!」


 俺は奴の攻撃に反撃することなく、背後に回りその後、距離を取る。


 そして、数メートル離れた奴に向けてを振るった。


 ――ブゥゥゥン

〈MPを使う 80/100〉


 剣が描いた軌跡からはが現れ、その鳥は扇状に広がりながらゴブリン剣士ソードマンへと飛んで行った。

 魔力を用い、斬撃を飛ばすスキル。


 距離によって威力に減衰がかかるため、相変わらず奴に入るダメージは極僅かだ。


 だが、


〈ゴブリンを倒す 71/100〉


 扇状に広がった鳥は、周りに居た他のゴブリンに対して大きな被害を齎した。

 あくまで俺の相手は格上たるゴブリン剣士ソードマン。つまり、鳳剣の威力には【強敵殺しジャイアント・キリング】の力も加算されている。

 ゴブリン剣士ソードマンに対しては僅かなダメージしか与えられないものの、下位のゴブリンであれば一撃で葬るだけの威力を見せた。


 俺は周囲の状況を確認し、ゴブリンの群に紛れるようにしてゴブリン剣士ソードマンから逃げる。


「ガァ゛ァ゛ァァッッ!!!」

 当然のように奴は追いかけてくるが。


「『鳳剣』!」


〈ゴブリンを倒す 82/100〉


〈鍛錬:MPを使う100MPが完了しました。報酬としてMP10が与えられます〉


 周囲のゴブリンを巻き込みながら奴に攻撃を当てる。


 これを何度か繰り返す。

 今、新たなゴブリン剣士ソードマンやそれと同格以上の魔物に出くわすと普通に死ぬから群に紛れる前にそういうのが居ないことを確認するのがコツだ。

 居たら居ない方の群へと逃げていく。


「――ハァ……ハァ……」

 MP:25/225


 とはいえ、この『鳳剣』はMPの消費が激しい。一度で30MPも消費するからな。


〈鍛錬:ゴブリンを倒す100体が完了しました。報酬が与えられます〉

『ギフトが付与されました』


 おかげで、最初に発生した緊急鍛錬をクリアすることが出来たが。

 報酬として手に入ったギフト『英雄の卵』の効果は分からないが、全ステータス10上昇の恩恵は大きい。


 MP:48/248


 MPを見る限りだと10以上、上がっているようだ。英雄の卵の効果だろうか? とはいえ確認している暇はない。


 今なおゴブリン剣士ソードマンはその勢いを緩めることなくこちらに向かってきているからだ。


 俺は『鳳剣』の使用を止め、剣を構えて迎え撃つ体勢に入る。


「ガァ゛ァ゛ァァッッ!!!」

 俺はその攻撃を躱し、剣技【強撃】を放つ。


 ――グサッ


 その一撃はこれまで鋼鉄のようだった皮膚を深く抉り、肉を斬った。

 それはゴブリン剣士ソードマンに対して初めて与えた、明確なダメージと言えた。


 ゴブリン剣士ソードマンは絶叫しているが、俺は構わず二撃目を放つ


「【強撃】ッ! ――ッ!」


 二撃目も見事当てることに成功したが、俺は奴の反撃を喰らってしまう。


 HP:105/395


 とはいえ、HPと耐久が上昇していたことによって、掠った程度であれば全然耐えられるようになっていた。

 今の一撃で25ダメージ程度だろうか。まだ全然大丈夫だ。



 未だに奴の方がステータスは圧倒的に上だが、初めて出会った時に比べればその差はかなり縮まっている。

 そんな俺の全力の攻撃を二度もまともに喰らっているのだ。

 奴も大きくダメージを受け、胴に出来た二か所の傷口から大量の紫色の血液が流れ出ていた。


 これ以上時間はかけられない。今はまだ大丈夫だが、他の上位種が合流しないとも限らないのだ。


 俺は一気に駆け出し、ゴブリン剣士ソードマンに向かっていく。


 奴もまた、俺を迎え撃つべく剣を振る体勢になる。


 俺はこの一撃を最後にすべく、極限まで集中力を上げる。


 ――集中


 奴とぶつかる瞬間、奴が振るった剣を『体術』『回避』『予測』を駆使して回避し、『剣術』スキルによって洗練された一撃に『剣技』の【強撃】を乗せて放つ。


 ――ッブシャァァァ


 奴の首に出来た大きな傷から一気に血が噴き出す。


 三回の【強撃】によって大きく削られたHPに、大量の出血ダメージが重なったことで奴の体力はたちまち尽きることになった。


『スキル『剣術』のレベルが上がりました』

『スキル『体術』のレベルが上がりました』

『スキル『集中』のレベルが上がりました』


〈鍛錬:同格以上の敵を倒す1体が完了しました。報酬が与えられます〉

〈鍛錬:ゴブリン剣士ソードマンに勝利するが完了しました。報酬が与えられます〉


『レベルが13から14へ上がりました』

『レベルが14から15へ上がりました』

『レベルが15から16へ上がりました』

『レベルが16から17へ上がりました』

『レベルが17から18へ上がりました』

『レベルが18から19へ上がりました』


『ステータスが全回復しました』

『任意の所持スキルをレベルアップ可能です。選択してください』


 回復したことによって一気に身体が軽くなる。HPとMPが回復しているようだ。


――よし、逃げるか。


 俺は周囲の状況を確認して新たな上位種が迫ってきていないことに安堵しつつ、『鳳剣』を使い周囲を掃除しながら、一度門へと退避することを選択した。


―――――――――――――――――――

読了ありがとうございます。


 英雄の卵――ギフト。成長が早くなり、成長度合いに合わせて能力値が上がる。(獲得経験値上昇&全ステータスLV*1上昇)

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