第4話 レベルが上がりました

『レベルが3から4へ上がりました』

 そのメッセージが聞こえたのは、ゴブリンを十数体倒した時のことである。


 俺は周辺に横たわっているゴブリン達の死体を剥ぎながら、ステータスを確認することにした。


 ――――――――――

 年齢:15

 レベル:4(+1)

 HP:175/175(+25)

 MP:110/110(+8)

 力:19(+3)

 耐久:16(+2)

 敏捷:14(+2)

 技術:15(+2)

 器用:11(+1)

 魔力:9(+1)

 抵抗:10(+1)

 ギフト:修行

 スキル:『剣術Lv2』『体術Lv2』

 ――――――――――


 HPと力、耐久を中心に、全ステータスが上がっていた。


「やっぱ俺って近接系のステータスが上がりやすいんだよなー、『修行』の報酬も近接系ばっかだったし……あれ?」

 鍛錬メニューを確認しながらそんなことをつぶやいていると、メニューに新しいものが追加されていることに気付く。


 ・ダメージを受ける100HP 報酬:HP10


「げえ、そういうのもあるのか」

 ただゴブリン相手だとダメージなんて喰らわないんだよなー。

 せっかく冒険者になったんだし、もっと強い魔物を相手にするのもありかもしれない。


「とりあえず今日は終わりにするか」

 もうすぐ日が沈むので帰ることにした。




 ◇


「……合わせて4250ギルとなります」

 冒険者ギルドで魔石の買取と討伐報酬を受け取る。この金額は夕飯付きの宿一泊にかかる費用と同じくらいだ。

 朝からゴブリンを狩り続けてもせいぜい倍程度。

 レベルも上がって強くなったことだし、明日はもっと森の奥へ向かおうかな。ゴブリンの出現頻度が上がるし、より多くの収入が見込めるはずだ。




「初めての狩りだったけど上手くいってよかったな!」

「まあ、みんなそれぞれに合ったギフトだったおかげね」

「僕のギフト戦闘では役に立たないけどねー」

 冒険者ギルドを出ようとすると、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。


 ――教会に並んでる時に後ろに居た奴らか。

 彼らも冒険者に登録して早々狩りに出ていたらしい。


「上位種に出会ったときはどうなるかと思ったけどな!」

「上位種といっても所詮はゴブリンだったわね……」

「多分あれは進化したてだと思うよー。……あ、素材の買取と討伐の確認をお願いしますー」

 へえ、上位種が出たんだ。

 ますます森の奥へ行くモチベーションが湧いてきた。ずっと普通のゴブリンとばかり戦ってても成長しづらいと思ってたところなんだよね。


 俺は剣の修理や買い物を済ませて帰路についた。



 ◇


〈腕立て伏せ998/1000 残り時間4:42:36〉



〈腕立て伏せ999/1000 残り時間4:42:33〉



〈鍛錬:腕立て伏せ1000回が完了しました。報酬として力1が与えられます〉


 家に帰ってきた俺は、食事を済ませ鍛錬を始めた。


 ――きっつー。


 休憩を挟みつつ一時間と少しで終わらせることが出来たが、素振りやランニングに比べて疲労が半端じゃない。

 残り時間は結構余裕があるから、もっと休みながらでも出来ると言えば出来るんだが、時間がもったいない。


「――さて、やるかー」

 腕立て伏せの疲労感も休まらないままに、俺は鍛錬メニューを開いていた。


 ・ダメージを受ける100HP 報酬:HP10


 これだ。ゴブリン狩りの結果新たに追加されたこの鍛錬。


〈ダメージを受ける100HPを開始しますか? はい/いいえ〉


 俺は、はいを選択した。


 今、俺は家に居る。


 俺にダメージを与えてくる魔物なんて居ない。


 まあつまり、そういうこと。


 俺は剣を抜き放ち、右腕で剣を持ちながら左腕に切り傷を入れる。


〈ダメージを受ける1/100 残り時間5:59:45〉


 やはり。これは他者から与えられたダメージに限らないようだ。

 自傷行為によってダメージを負った場合でも、有効なようだ。


 そして、この鍛錬をこなすのに、最適なアイテムを俺は帰る前に買ってきていた。


 毒薬――摂取した対象に持続ダメージを与える毒状態を付与するアイテム。本来は弓矢に塗ったりして魔物相手に使うスキルだが、これが俺にとって都合がいい。


 解毒薬と回復薬も一緒に買っているので、大丈夫だと確認しつつ、俺は毒薬を少しだけペロリと舐めた。


 ――うげえ、マジで不味い。


 良薬口に苦しと言ったりするが、毒薬も苦いようである。


〈ダメージを受ける7/100 残り時間5:58:24〉


 よしよし、順調に進んでいってるな。



 少しすると毒が解除されたのでまたペロリと舐める。本能的に身体が拒絶しているが、それをねじ伏せてさっきよりちょっと多めに舐めている。


 そして毒が解除されるとまた毒を舐めて、と繰り返す。


 ――そんなことを繰り返していると急に。

『スキル『毒耐性』が手に入りました』


 というメッセージが聞こえて来た。

 ステータスを見てみると『毒耐性』というスキルが追加されていた。やったぜ。


 誤って死んでしまわないように、常にステータスを開いてHP残量と鍛錬の進行度は確認している。

 毒耐性の影響で毒が解除されるペースが多少速くなり、HPの減りが緩やかになったが、あと少しだ。


〈鍛錬:ダメージを受ける100HPが完了しました。報酬としてHP10が与えられます〉


 ――よし終わったー!

 今日一番の達成感を感じる。

 あの毒薬の苦痛から解放されるというのは幸せすら感じさせるらしい。


 鍛錬メニューは全部灰色になっている。

 もしかしたら鍛錬を全て完了すると戻るかもと思ったがそんなことはなかった。


 まあ、明日になったら回復してるかもしれないし今日は寝よう。


 帰ってきてからの鍛錬によってゴブリン狩りの100倍疲れた俺は、ベッドに入るとすぐさま眠りに就いた。

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