第60話 1年
スカイスフィア3が地球に到着して1年が経過していた。木星の衛星軌道上にはすでにガス収集井戸が完成している。
ガス収集井戸本体には、動力部、ガス分離用プラント、タンカー用桟橋、そして、木星大気まで伸びる長大なガスパイプ、ガスパイプの先端で木星大気流からパイプを保護しつつガスを収集するアンカー部からなる。アンカー部は木星大気流からパイプやアンカー部にかかる力を相殺するよう推力を常時発生している。
木星表層部の大気の主成分は水素とヘリウムだがわずかにメタンなどの炭化水素も含まれている。わずかと言っても量は膨大なため、炭化水素は炭化水素として分離して、化学原料として日本に向け専用
この半年で圭一の地上の屋敷周辺の開発はさらに進み、現在は延べ30平方キロのコンビナートにまで発展していた。宇宙船用の基幹装置の他、スカイスフィア3の外殻相当の特殊合金を含む各種の合金の製造も可能となっている。さらに、
宇宙海賊の根拠地ないし宇宙文明を発見すべく、地球の衛星軌道上の宇宙船組み立て工場で完成した小型無人探査艦12隻が第一陣として太陽系に3つ存在するゲートのうち、木星ゲートを除く土星ゲート、天王星ゲートを目指して旅立っていった。小型探査艦は宇宙海賊の根拠地を探し出すため、スカイスフィア3の持っていたゲート情報に従って星系を順次探査していくことになる。
もちろんスカイスフィア3の中にも対象恒星系のデータは蓄えられていたが、なにぶん13000年前からアップデートされていない関係で、惑星の位置、星系内のゲートの位置など13000年前のデータから予想した結果とは大きく異なると考えられるため、複数の探査艦を対象恒星系に投入し再探査する予定である。
現在地球の衛星軌道上の宇宙船組み立て工場では、小型無人探査艦6隻と、小型無人戦闘艦6隻が建造されており、小型無人戦闘艦は間もなく竣工する。
なお、小型無人探査艦も小型無人戦闘艦も製造はスカイスフィア研究所だが、環太平洋防衛機構所有であるため、『船』ではなく『艦』と称している。
「小型無人探査艦が土星ゲートを通過中、土星ゲートで妙なものを見つけちゃった」と、
「いったい何を?」
「ゲートを短時間で往復している小型宇宙船がいたの。ゲートを利用した通信用中継器だと思う。
超空間通信技術を持っていない場合、二つの恒星系を結ぶゲートを往復しながら、蓄えたデータを相互に送受信することで星系間通信を行うの。
太陽系の中に、この中継器を利用している装置がいるはず。
中継器を捕獲して分析すれば、太陽系内に潜む装置の位置と、次の中継器の位置が分かると思う。最終的には、中継器を送り込んで土星ゲートに設置した
「送り込んできた大元は、あの宇宙船団を太陽系に送り込んだ連中の可能性が高いな。
捕獲するには、転送機を使うんだよな?」
「相手は小型だし乗組員は乗っていないはずだから、ロボットを送り込んで拿捕できない以上それしかないと思う」
「転送装置のある宇宙船はスカイスフィア3しかない以上、スカイスフィア3で捕まえるってことか」
「そういうこと。
今だと地球から土星まで16億キロだから、片道17時間かな」
「何か特別準備するものはあるのかな?」
「おにいちゃんたちにはないけど、スカイスフィア3の方でちょっと作業があるかな」
「どんな作業?」
「相手は
「なるほど。そっちは任せた」
「任せて」
「地球については、2日ほど、スカイスフィア3が地球を離れることを
「圭一、最初の戦闘艦の竣工は1週間後じゃなかったか? 戦闘艦の竣工を待ってもいいんじゃないか? 無人だから乗組員の訓練の必要はないんだし」
「そうだな。1週間捕獲が遅れるが、それだけだものな。
戦闘艦の竣工を待とう。
「主砲はともかく、あとの武装は完全に地球の軍隊を想定したものだしな」
「公表する必要などないが、戦闘艦の武装について
「ということは、あの国とかその北の国には漏れてるな」
「だろうな。抑止力という意味じゃ、それでもいいんじゃないか」
「全くだ」
小型戦闘艦諸元
球形:直径36メートル。
外殻:厚さ600ミリの特殊合金製
武装:
主砲6門(小型電磁波砲:宇宙空間用)
副砲6門(小型実体弾砲:大気中の小型目標撃破用)
誘導弾24発(大気中、水中の大型目標撃破用)
防御兵器は、
内側から第1スクリーン(戦闘時展開)と第2スクリーン(常時展開)
一週間後、6隻の小型戦闘艦が竣工し地球の衛星軌道上を周回し始めた。スカイスフィア3はそれに前後してゲート間中継器と思われる装置を捕獲するため、地球から土星ゲートに向かった。
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