第58話 幕間2つ。


 太陽を目指す長楕円軌道に入ったコルセアの探査ドローンは地球の観測を続け、観測結果を土星ゲートを往来する中継器に送り続けた。探査ドローンは、早い段階で地球に張り付いた巨大宇宙船の存在を確認している。コルセアの本拠地では、ドローンから送られてきた地球より漏れ出た電波情報を分析した結果、巨大宇宙船は地球人が所有する宇宙船であることも判明している。


 この科学技術的ギャップはコルセアの科学者を混乱させたが、事実は事実であり、コルセアは地球への再侵攻を断念し、これまで通り彼らの既知宇宙内での海賊行為に活動の重点を戻した。


 コルセアはこの時点で、環太平洋防衛・・機構の設立と機構にスカイスフィア3が深くかかわっている情報を得ていたが、地球側が自分たちを根絶やしにするための牙を磨いているとは想像できなかった。また、太陽系に残した探査ドローンはそのまま地球を中心とした観測を続け情報を中継器に送り続けたが、コルセア本拠地で本格的に取り上げられることなく、データの山の中に埋もれていくことになる。




 なお、ゲートを行き来する中継器の大きさは直径3メートルほどの多面体のため、この時点では地球に張り付いている現状のスカイスフィア3では、その能力をしても発見することはできなかった。




 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 金田光は光発電の事業拡大のため大陸系窃盗団を教唆して、まんまとスカイスフィア研究所からプラチニウムを手に入れたものの、たかだか十数キロの大きさしかなかった。それでも、電力用とすれば相当な量なので満足はしていた。


 さらに運のいいことに、謎の宇宙船団の来寇により国内外で混乱が続き、捜査が中断している間に、金田光の接触していた盗賊団は大陸本土に帰っていった。


 プラチニウム強奪に関しては一安心なのだが、謎の宇宙船団と入れ替わりに、スカイスフィア3なる巨大宇宙船が東京上空に現れた。なんとスカイスフィア3は、プラチニウムを盗み出した当のスカイスフィア研究所所属というではないか。


 さすがの金田光もこれには混乱したが、謎の宇宙船団を簡単に撃破してしまったところを見ると、未知の技術を保有していることは確実であり、プラチニウム強奪の足が着く可能性も否定できない。


 金田光はしばらく地下に潜むことにして、預金を一部現金化し、残りはスイスの銀行に口座を設けそちらに移している。


 身辺整理を終えた金田光は、所有する光発電を部下に任せ東京を離れ、地方の国際空港からすでに正常に戻っていた国際航空便により空路大陸本土に向かった。


 大陸中国への高飛びの際、今回手に入れたプラチニウムの大陸本土への持ち込み方法が思いつかなかったため、プラチニウムは会社の隠し金庫に保管したままである。そのかわり、超小型のキオエスタトロンを組み込んだプラチニウム発電機をスーツケースに忍ばせていた。大きさはティッシュペーパーの箱ほどで重さは2キロ弱。空港などで説明を求められたらどうしようかと思っていたが、特に問題なく大陸本土に持ち込むことができた。


 首都国際空港から首都内のホテルにチェックインした金田光はかねて自分に接触していた大陸本土の工作員らしき者の名刺に書いてあった大陸本土での連絡先に電話をかけた。

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