第56話 環太平洋防衛機構
連絡艇は圭一たち4人と生鮮食料品を乗せてスカイスフィア3に帰還し格納庫に係留された。
『みんなブリッジで待ってるからそっちに転送するね』
4人は連絡艇からスカイスフィア3のブリッジに転送された。4人がブリッジに現れた時、ブリッジには、全員、翔太と明日香、それに真理亜とドーラのアバターである小型ロボットがいた。連絡艇に積まれていた生鮮食料品はカートごと食糧庫に転送されている。
「ご苦労さま」
「それじゃあ、わたしは多羅尾と食糧庫にいって荷物を整理してきます」と、一橋シェフは多羅尾文子を連れブリッジから出ていった。
「わたしは部屋に帰って、ファイル関係を確認しています」。波内女史もブリッジを出ていき、自室に戻っていった。
「圭一、大変なことになったな」
ドーラにより、圭一と高一首相との電話での会話はスカイスフィア3に残っていた3人にも伝わっていた。
「成り行きだが、受けざるを得ないだろ」
「確かに。
これからは、地上での仕事が増えるってことだよな?」
「ドーラがいるんだから、オンラインで仕事は可能なんじゃないか」
「なるほど」
「ねえねえ、池内さんがスカイスフィアのスポークスマンになるんだったら、スタジオがいるんじゃない?」と、明日香。
「そうだな。準備は必要だろう。
ドーラ大丈夫だよな?」
『任せて』
「池内さん次第だが、ちゃんとやってくれるだろう。
ほんとに嫌がられたら、明日香か真理亜さんだな」
「えー」
「ダメ。わたしはダメ」
「そこらへんはまだ先の話だからいいだろう。
それより、宇宙軍だな」
「こうなってくると、当面スカイスフィア3は日本の上空から動けないから、宇宙海賊たちの本拠地を探す前に、スカイスフィア3が地球から離れてもいいよう、武装した宇宙船を建造する必要があるだろう」と、翔太。
「それも複数だな。
政府から頼まれてもいるし、それなりのものを作ってやらないとな」
「スカイスフィア2にはX金属弾を飛ばすレールガンを乗せたが、さすがにX金属弾を大量に作ることは厳しいし、あのレールガン程度では宇宙では通用しそうもないしな」
「せっかく作ったが、日の目を見なかったな。
スカイスフィア3の技術を転用できればしめたものだが、
ドーラ、何とかならないか?」
「ある程度の機械はスカイスフィア3の工作室で作ることはできるけど、本格的な機械をここで作るのは無理。
ちゃんとした宇宙船を作るなら、時間がかかるけれど、まずはここで小型の
「なるほど。
宇宙軍の最初の仕事はそれだな。こうなってしまうと、1年間は動けそうもないな。
3人には助けてもらうからな」
「仕方ないな」
「わたしたちもなの?」
「あたりまえだろ!」
一橋シェフと多羅尾文子は、食糧庫で食材を収納整理しながら、その日の献立に必要な食材をカゴに入れ、
自室に戻った波内女史は下の屋敷で使っていたのと同じ作業机の上のPCを立ち上げたところ、屋敷と同じデスクトップ画面が現れた。調べたところ直近までのファイルがすべてそろっていた。こちらも、一橋シェフと多羅尾文子と同じで全く違和感なく作業ができる。波内女史は驚く以前に、自分が屋敷の自室で仕事している錯覚にとらわれていた。
翌日。
再度圭一と高一首相は何度か電話で連絡を取り合って今後のことについて双方大まかな合意を得ている。
「最初に申しました、発電技術で発電した電力を大々的に供給することができます。燃料は水素でクリーンかつ安全です。この技術を導入すれば、日本の電力事情は一気に解決し、国際競争力も飛躍的に高まります。
プラントはこちらで建設しますので、電力会社への根回し等お願いしたいんですが」
「通常なら、にわかに信じられないお話ですが、スカイスフィア3を見せられた以上信じざるを得ません」
「実はすでにある程度の売電はしていますが、これを大々的に進めることが可能です。
おそらく、日本の電力の過半は賄える。再生エネルギーは当然として原子力による発電分は賄えると思います。
そこで上がる収益を使えば、宇宙海賊の本拠地を探し出すための宇宙船団を作り出すことも可能でしょう。根拠地が見つかれば、そのあとはスカイスフィア3で処理します」
日本が国連を脱退して5日後、日本政府は日本、アメリカ、カナダ、台湾、オーストラリアの5カ
すでに世界の空運、海運なども通常に復帰し、各国の金融取引所も、
そして全世界の軍事力を優に上回ると考えられるスカイスフィア3を所有するスカイスフィア研究所は上場会社ではないためその企業価値は推定することしかできないが、最低でも世界の年間軍事費の合計2兆ドル、場合によればその10年分に相当する20兆ドルを超えるのではないかと考えられていた。圭一の保有する上場株の評価額などこれに比べれば微々たるものだった。
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