第43話 スカイスフィア3。太陽系へ帰還
4人はトレーニングルームでランニングを終え、床に座り込んで水分補給しながら休憩していた。その中で圭一と翔太がスカイスフィア3の武装について話をしていたのだが、
「圭一兄さん、わたし思うんだけど」と、明日香。
「明日香、なんだい?」
「この船の中って、いたるところに電話もあればスピーカーもあるしカメラもあるじゃない」
「そうだな」
「ドーラがわたしたちの会話を聞いてないと思う?」
「聞いているだろうな。
ドーラ、どうなんだ?」
『はい。ちゃんと聞いてるよ』
「正直でよろしい。
それで、実際のところどうなんだ?」
『まず、スカイスフィア3は探査艦、民間船だから
「船体の大きさに見合った武装とは?」
『単独任務が基本の探査艦は大きさで言えば戦艦並なの。戦闘艦じゃないんだけど、それでも重巡洋艦並みの武装が施されてるし防御力は戦艦と変わらないの。
だから単独でも中規模の私掠船団なら撃退できる。もちろん相手が同程度の科学技術水準ならだけど』
「海賊みたいなのが存在してたんだ」
『帝国の辺境には私掠船団が沢山いたの。討伐艦隊が何度も編成されたけどイタチごっこでほとんど成果は上がってなかったみたい。
それで、この船の武装だけど、
攻撃兵器は、
1、主砲6門
2、副砲48門
3、誘導弾
4、無人攻撃機600機。うち150機は大気中、および水中でも作戦可能。もちろん周辺の圧力と温度の限度はあるけどね。
5、戦闘ロボット600体。これは、直接攻撃用の武装じゃないんだけど、一応説明しておくね。転送装置を利用して敵の船を乗っ取ったり。こっちに乗り込まれた時の対応用。敵の転送兵器阻害スクリーンが生きていたら転送で送れないから、その時は突入ポッドで敵の艦体に孔を空けて乗り込むの。地球の言葉で言うと海兵隊とか陸戦隊ってとこかな。
防御兵器は、
1、内側から第1スクリーンから第3スクリーン。それに転送兵器阻害スクリーン。
こんなところ』
「主砲というのは?」
『実体弾を撃ちだすいわゆるレールガン。
副砲は電磁波兵器で直接敵艦に対して砲撃することもできるけど、敵の実体弾や誘導弾を迎撃するのが主な役目』
「スクリーンというのは?」
『電磁波攻撃を阻止するための全帯域に跨るエネルギーの幕のこと。
第3スクリーンだけは放射線の影響から船を守るため、いつも展開してるの。今スカイスフィア3も展開してるよ。
第1、第2スクリーンは戦闘時だけ展開。
転送兵器阻害スクリーンは、船内に対する転送攻撃を阻止するもの。厳密には幕じゃないけどスクリーンって言ってる。
いまは燃料不足だから主砲は1斉射分の6発だけ。副砲は全力で15秒だけしか撃てないからね。
どっちの場合も、目一杯射っちゃうとスカイスフィア3の地球への直接降下はできなくなるから。
あと、第1、第2スクリーンは今の燃料じゃ全然張れない』
「了解。ありがとう、ドーラ」
『どういたしまして』
「ということだそうだ。
おそらくこの船は、燃料を満載したら、地球の全ての軍事力を上回るのだろう」
「いくら何でも核ミサイルが直撃したらタダでは済まないと思うわよ」
「まず、核ミサイルは接近する前に撃ち落とされると思うぞ。その際核爆発が至近で起こったとしても熱線、その他の有害放射線は全て電磁波だ。おそらく、第1、第2スクリーンで防げる」
「僕もそう思う」
「ということは、スカイスフィア3は無敵ってこと?」
「地球相手ならな。
しかもこの船に塔載している攻撃機は地球の戦闘機やミサイルではおそらく落とせない。
宇宙空間から攻撃機を飛ばすだけで地球上の軍事施設を全て破壊できるはずだ。もちろん洋上の艦船も同じだ。スカイスフィア3は探査船だから、海中の潜水艦も簡単に探知できるかもしれない」
「圭一兄さん、どうするの?」
「別に何もしないが」
「それはそうよね。ちょっと安心した」
「そう言えば圭一?」
「うん?」
「今回採集できた隕石なんだが、予想以上に単体大きかったろ」
「そうだな?」
「あの大きさのものを、加工工場で加工はできない上、運んでいくのも簡単じゃないぞ。いったんスカイスフィア2の中で何とか小分けしてしまわないとどうしようもない」
「確かに、盲点だったな」
「スカイスフィア3はこれほど大きいし、単独任務に就くような船だったことを考えると、船内に工場とか持ってるかもしれない。
ドーラ、その辺りはどうだ?
『あまり大々的なことはできないけど、攻撃機やロボットの修理程度なら簡単にできるよ。
もちろんスカイスフィア2の中の隕石の加工くらい簡単だよ』
「それなら、そのうちどういうふうに加工するか知らせるから加工を頼む」
『了解。
それなら、今のうちにこっちに移しちゃうね』
「頼んだ」
汗が引き、軽くシャワーを浴びて着替えを済ませた4人は操縦室に戻っていった。あと6時間弱で地球に到着するはずだ。
そこで、ドーラの声が操縦室に響いた。
『地球周辺に人工衛星の他、大型の人工天体が16機周回してる。どれも同型。こういった形の人工天体を地球で作っていたというデータがなかったから念のため』
「大型の人工天体?」
『紡錘形の形状からいって、おそらく軸線砲を装備した戦闘艦。全長320メートル、最大幅は45メートル。
これが、その中の1機、というか1隻』
明日香の正面のメインモニターに紡錘型の天体が映し出された。艦首と思しき先端には丸い穴が3つ束ねたように空いていた。
「こんなものどこの国が作り上げたんだ?」
スカイスフィア2がチャラワン星系へ旅立とうとした頃。圭一たちがスカイスフィア3により太陽系に帰還する2日前。
地球に接近する16個の小天体が観測された。地球との衝突は確実と思われた小天体群だったが急減速して地球の赤道上空1400キロの衛星軌道を等間隔で巡り始めた。
その小天体の観測結果は、いずれも明らかに人工物と思われる紡錘型。各国は何らかの動きがあるものと、小天体群の観測を続けていたが、その天体群から
「Obey us, and be subject to us!(われわれに隷従せよ!)」と。その放送と前後して太平洋上の無人島の一つが地球上から消えてなくなった。
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