第2部 スカイスフィア3

第42話 スカイスフィア3、ドーラ

[まえがき]

第2部はスカイスフィア3ということで。

第1部では、重力の制約もあり、かなり移動の制限を受けていましたが、ついに重力の制約から解き放たれ、自由に宇宙を飛び回れるようになります。作者も面倒な計算から解放されホッとしています。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 スカイスフィア2は巨大宇宙船のハッチをくぐってD4をまず回収した。そのスカイスフィア2対して、


『スカイスフィア2、そのまま直進して格納庫中央で停止願う』


『了解』


 格納庫内のライトの点滅に従ってスカイスフィア2は前進し、指定された位置で停止した。


『スカイスフィア2、係留完了。これよりスカイスフィア2内の重力を天底方向に1.0Gまで上昇させる』


 それまで、無重力状態だった座席に体が押し付けられていった。


『スカイスフィア2、船外の観測はこちらが受け持つので、そちらの機器を操作すればこれまで通り船外の観測は可能だ。もちろん$#&%126からの観測になる』


 明日香が試しにモニターに天頂望遠鏡の映像を映したところ、確かに格納庫の中に入る前に見えていた天頂方向の星が輝いていた。


「これって、スカイスフィア2がこの宇宙船の操縦室になったってことじゃない?」


「その通りだ。

 この宇宙船の乗組員がどういった宇宙人だったか分からないが、地球人と同じ空気を吸っていたとは思えないから、この宇宙船の中を見学するためには宇宙服は必要だろうしな」


『スカイスフィア2、

 キーボードでの会話は不自由そうなので、音声による会話に切り替えてもいいか?』


「もちろんだ」


『126、了解』


 スピーカーから、126の声が聞こえてきた。機械音と言えば機械音だが、どこかの男性声優の声に似ている。


「どうも、126の声と話し方がしっくりこないな」と翔太。


「確かに。できればDORAドーラの感じで会話したいな」


『こちら、126了解。


 こんな感じでどうかな?』


 スピーカーから10歳くらいの女の子の声が聞こえてきた。まさに圭一が思い描いたDORAドーラの声だった。


「すごくいい。

 126。これからきみのことをドーラと呼んでいいかい?」


『もちろん。圭一おにいちゃん』


「うおーー!

 それと、ドーラの宇宙船だけど、俺たちだと発音できないから、これからはスカイスフィア3と呼んでいいかな」


『うん。ちゃんとした名まえができて$#&%126も喜ぶよ』


「そいつは良かった。

 それじゃあ、さっそく地球に向かってくれるかい?」


『了解。

 スカイスフィア3、これから地球に向かって出発しゅっぱーつ

 地球到着まで燃料をセーブするから、7時間かかるけど、その間みんな我慢してね!』


「なんだか、ドーラが家族になったみたいだな」


「全くだ」


「二人の趣味かもしれないけど、確かに可愛いわね」


「言えてる」



「ドーラ、スカイスフィア3の中を見学したいんだけど、できるかな?」


『スカイスフィア3の居住区画の温度は現在摂氏マイナス60度ほどなのと、ほぼ真空なので体に合う宇宙服があればいいけど、今は無理。

 地球にいったら、空気を一杯取り入れるからそれまで待ってて』


「了解」


 そういった会話をしているうちに気づけば、操縦席前のモニターにはスカイスフィア3から見たゲートの薄く赤い平面が広がっていた。


『スカイスフィア3、今からゲートを通過しまーす』


 ……。


『太陽系に到着とうちゃーく!』



 モニターには見慣れた木星の縞模様が大きく映し出されていた。


『地球に向かって飛んでいきまーす。だいたい、秒速3万キロまで加速してそこから6時間そのままでそれから減速しまーす』


 見る見るうちに木星が遠ざかっていった。スカイスフィア2の操縦室内では下向きに1Gの加速以外全く加速を感じていない。


「重力制御か、スゴイ技術だな」


『わーい、褒められちゃった』


 思っていたドーラより、今のドーラは陽気なようだ。暗いよりよほどいいし自分好みだと圭一は一人ニヤケていた。



「長時間無重力にいたせいか体がなまったような気がするから、少し走ってくるか。圭一も来るだろ」と翔太が提案したら、


 圭一の他、明日香も真理亜もランニングすると言ったので、着替えを待って4人揃ってトレーニングルームのトレッドミルでランニングを始めた。4つあるトレッドミルは各自の能力に合わせたランニング速度にそれぞれ設定されている。


「しかし、驚いたなー」と翔太。


「相変わらず翔太の引きの強さは異常だよな。とうとう宇宙船まで引き当ててしまった」


「何をバカなことを」


「そうは言うけど、とんでもない幸運続きなのはやっぱり翔太さんの引きだと思う。それに真理亜もいるし」


「単なる偶然だと思うけどなー」


「そうでもないと思うぞ。なんだか、地球に帰ったら、もっと面白いことが待っている感じがするんだよな」


「またかよ。よしてくれよ。真面目に走るぞ!」


「おう!」


 ……。


 30分ほどのランニングで汗をかいた4人は、タオルで汗を拭き、トレーニングルーム備え付けの冷蔵庫から、好きな飲み物のボトルを取り出して水分補給している。


「翔太、そう言えばスカイスフィア3は探査艦とか言ってたろ」


「そうだな」


「なにか凄い武装はあるのかな?」


「スカイスフィア3が建造された時、なんとか帝国に明確な敵がいたのなら武装していると思うが、そうじゃなきゃ攻撃用の武装はないんじゃないか。強いて言えばスカイスフィア2のレールガンみたいな、邪魔になる小天体を破壊するための武器だろうな」


「レールガンを撃つ機会がなくなったのは残念だが、この格納庫の中に、戦闘機みたいなのが沢山あったろ? アレは攻撃兵器じゃないか?」


「探査艦なんだから、探査用の無人探査機ドローンか、有人探査機なんかじゃないか。操縦室に戻ってドーラに聞けば教えてくれるよ」


「それもそうだな」


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