第31話 DORA(ドーラ)2


「50秒、52、53、……、60」


 DORAドーラがゲートに再突入して1分が経過した。この1分は無時間でゲートを通過した場合DORAドーラの加減速を考慮した場合の最短往復時間である。



「1分経ったな」


「ゲート通過は無時間ではなかったようだ」


「圭一兄さん、DORAドーラからの信号確認。DORAドーラが現れた。突入後ちょうど70秒だったわ」


「無時間で通過するかと思っていたが、ゲート通過に要する時間は5秒だったということか」予想が外れた割に、圭一の顔は嬉しそうだ。


「圭一、良かったな」


「おお」


DORAドーラが撮影したゲート内の映像とゲートの先の映像が送られてきたわよ。

 DORAドーラはこのまま、再突入させる? DORAドーラには今のところ異常はないようだけど、送られてきた映像を確認してからにする?」


DORAドーラはこのままゲート前で停止して、先に映像を見てみよう。ゲートの先が危険な世界である可能性がないわけじゃないからな」


「了解。モニターに出すわ」


 操縦席前の大型モニターに、ゲート内の映像が映されたはずだったが、モニターにはノイズしか映っていなかった。


 5秒ほどその状態が続いた後、いきなりモニターに宇宙空間が映し出された。モニターの左半分にガス巨星らしき惑星が映っており、右手前方には輝く太陽が見えた。ガス巨星が属する恒星系の主星なのだろうが火星から見た太陽ほどの明るさがあった。


「一般的な恒星系に見えるな。真理亜さんはどう見る?」


「前方の明るい恒星はおそらく太陽と同じG型恒星だと思う。

 左に見えるガス巨星については今のところ何とも言えないけれど、土星のようなはっきりしたはないようね。それでも惑星の周りを岩石や氷が回って薄いを作っている可能性があるからDORAドーラを向こうにやる際には気を付けた方がいいわ。気を付けると言っても、具体的にはどうしようもないでしょうけど」


「そのためのドローンだから危険は目をつむろう」


 30秒ほどその映像が続き、その後、カメラが切り替わりゲートが映し出された。外見はこちら側のゲートと全く同じで、ガス雲に囲まれた赤味を帯びた黒い円盤だった。


「それじゃあ、明日香、DORAドーラをゲートに再突入させて、観測を始めよう」


「了解。

 DORA《ドーラ》、ゲートに向けて加速開始。

 10秒後に突入。8、……、2、1。DORAドーラゲートに突入。

 信号喪失。

 それじゃあ、スカイスフィアはこれから木星を周回するわよ。

 回頭開始、現在の速度から秒速110キロまで1Gで加速。2時間45分後に90度回頭するからそれまでシートベルトを外しててもいいわよ。

 翔太さんも圭一兄さんもだいぶ無重力に慣れたみたいね」


「一大発見に興奮して、アドレナリンがドバドバって出たからかな」


「そうだと思う」


「明日香、さっきのガス巨星の映像をもう一度見せてくれる」と真理亜。


「どうぞ」


 明日香が軽くキーボードとトラックボールを操作して、モニターに先ほどDORA《ドーラ》が送ってきたガス巨星の映像が映された。今映っているのは静止画である。


「何か気になることでもある?」


「この辺りを拡大できる?」


 真理亜が指さしたスクリーンの上の個所を明日香が拡大した。その辺りに何かモヤのようなものが横に広がっていた。


「はっきりとはわからないけど、やはりがあるみたい」


DORAドーラは惑星を見つけるため何個所かに移動して撮影するから、少し心配だわね。今さらどうしようもないし、無事に戻ってくることを祈りましょう」


「だな。

 俺は、はしゃぎすぎたせいか、少し疲れたから部屋に戻って次の無重力の時まで仮眠をとってくるけど、みんなもかなり長く起きてるから仮眠をとった方がいいぞ」


「わたしは、スカイスフィアが回頭を済ませたら、次の回頭まで15時間は何もオペレーションがなくなるから、その間に寝るわ」


「わたしは明日香と一緒で次の無重力まで望遠鏡を覗いてる。それから寝るわ」


「俺も起きていよう。

 みんな何飲む?」


 翔太はみんなの希望を聞いて、台所から飲み物を各自に配って歩いた。




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