第28話 スカイスフィア改装、DORA(ドーラ)2
木星の衛星ガニメデ近傍で謎の天体を発見したスカイスフィアは予定通り地球に帰還を果たした。
帰還後、3日ほど休日を考えていたが、誰も休むことなく研究所に出勤した。
阿木真理亜による謎の天体に対する観測結果の分析から以下のことが判明している。
まず、謎の天体は、ガニメデを周回する衛星軌道を描くことなく、ガニメデとの相対位置を変えないまま、ガニメデと共に木星の周りを公転していることが分かった。また、謎の天体の孔の部分は、直径約2.43キロの真円だった。
「ガニメデとの相対位置を変えていないということは?」
「なにがしかの力、この場合はエネルギーがあの天体で消費され、ガニメデとの位置を保っていると言えるんじゃない」と、真理亜。
「形が真円ということだし、人工物という可能性はないかな?」
圭一が少し興奮して真理亜に尋ねた。
「それは何ともいえないわ。わたしたちが知らない何らかの物理メカニズムであの天体の位置がガニメデに固定されているのかもしれない」
「しかし、直径が2.43キロというのも気にはなる」
「圭一、それはどういうことだ?」
「地球では、歴史的な変遷を経て、1メートルの長さと1秒の長さが今のように光の速さと、セシウム周波数で決まったが、宇宙人がいたとして、何らかの長さや時間の基準があると思うんだ」
「それはそうだろうな」
「それで、電子のコンプトン波長(注1)はたしか2.43の10のマイナス何がしか乗だったはず。宇宙人が10進数を使っていると仮定して、直径が2.43キロというのは電子のコンプトン波長の10の何がしか乗だろ?」
「かなり仮定が多いが可能性はあるな。ゲートが人工物だとしてあんなものを作った宇宙人に会いたくはないぞ」
「今のところはな。それはそれとして毎度のことながら、原理やメカニズム、今回は素性だが、そういったものは分からなくても現象は利用できる。それでいいだろう」
「ねえ、謎の天体とかあの天体とかというのもアレだから何か名まえを付けない?」と、真理亜が提案した。
「ガス雲の中に穴が空いていたわけだから、クラウドホールでどう?」と、明日香。
「まだあの孔の先がどうなっているのか分からないけれど、どこかにつながっていると仮定して、俺としては、スターゲート、ないしはただのゲートを推す」と、圭一。相変わらず嬉しそうだ。
「クラウドホールだと、その先が詰まっている感じがするけど、ゲートなら通り抜けられそうだから期待を込めて、圭一のスターゲートかただのゲートでいいんじゃないか。
スターゲートだと著作権があるかもしれないから、ゲートかな」
「そうね。ゲート。それでいいんじゃない」
「では、あの謎の天体の名称はゲートということにしよう。
「
「確かにな。それなら、いっそのこと新たに
「気密化は諦めて、真空前提で、電熱や放熱板で装置類の温度を保った方が良くないか?」
「
「圭一兄さん、内部はそれでいいんじゃない。
「サーマルブランケットという手もあったな。金紙で包んだボールチョコのような見た目になるが仕方ない。それでいこう。
あとは、
「外でもいいかもしれないわよ。
「外付けで
「圭一、外付けもアリなら、半格納はどうだ? 開閉部を作らなくて済むし、スカイスフィアへのドッキングも楽なんじゃないか?」
「翔太さん、ナイス!」
「しかし、そうするとサーマルブランケットをむき出しにして大気中を移動することになるぞ」
「スカイスフィアが大気圏を抜けるまでは低速で上昇することで対応できないかしら?」
「上空のジェット気流とかは空気密度が低いと言っても秒速100メートルを超えることもあるというぞ」
「サーマルブランケットは軽さを追求した断熱材だから、ペラペラだけど、
「それならいけそうだ。よーし、それでいこう。
だいたいの方針はこんなところだな。
俺は、スカイスフィアの改造用の図面を引いて、作業員の手当てをする」
「それなら、俺は
「わたしは、
「ゲートの位置特定というのは?」
「ゲートを抜けた先で
「確かに」
「わたしは、ある程度プログラムできるから、明日香の手伝いをしておくわ。特に
「それじゃあ、そういうことで」
注1:電子のコンプトン波長
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%88%E3%83%B3%E6%B3%A2%E9%95%B7
なんとなく、らしいことを書いてみました。もちろん、作者も良く分かっていません。
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