第4話 スカイスフィア研究所
謎の金属Xがキオエスタトロンの影響下で謎の力を受けて飛んでいく追実験は成功したのだが、翔太にはそのエネルギー源が何なのか皆目見当がつかなかった。
それもこれも明後日、圭一がやってきてから考えようということで、翔太は休日までの二日間、滞り気味だった自分の業務をこなしていくことにした。
山田圭一との約束の土曜日。
午後4時に圭一から電話があった。あと30分で到着するということだった。圭一はこれまで翔太の自宅を訪れたことはなかったが、クラブのOB名簿もあれば年賀状もやり取りしているので住所は簡単にわかるはずだ。従ってナビを使えば簡単に翔太の自宅にたどり着ける。
翔太は午前中、麓のスーパーで惣菜物や酒類を買い込み圭一をもてなす準備をしている。圭一から連絡があり、あと30分で到着と言うことだったので、居間に置いた座卓に皿に取った惣菜物を並べたりしていたら、4時5分前に車が家の前の砂利を踏みしめる音が聞こえてきた。
玄関先に急いだ翔太はそこで圭一を迎えた。
「久しぶり。と言っても3カ月ぶりか」
「そうだな」
「わざわざすまない。まあ上がってくれ」
「お邪魔する」
圭一は左右の手に紙袋を持っていた。
「お土産だ」
「すまんな」
「こっちが酒の肴で、こっちが酒だ」
「後で出そう。料理の方は惣菜ものだが用意している。まずはビールで乾杯だ。
そこの先の居間に料理を用意してるから先にいっててくれ。俺はビールを運ぶ」
翔太は圭一から受け取った紙袋を持って台所に向かい、圭一は言われた通り居間に入っていった。
グラスと瓶ビール2本をお盆に乗せて翔太が居間に入り、先に座卓の前に座っていた圭一にグラスを渡し、ビールを注いでやった。
「すまんな、それじゃあ、翔太」
今度は圭一が翔太のグラスにビールを注いだ。
「「
「プハッ。
それじゃあ、さっそくだが詳しい話を聞かせてくれ」
「最初から話そう。
6日ほど前、……」
ビールを飲みながら翔太がプラチナ隕石と、試料を試験した結果について圭一に詳しく話した。
「やはり、そのなんとかトロンが
もっと詳しく調べたい。
少なくとも謎の力が発生したことは再確認できたわけだから、推進剤を使わない夢の宇宙船の推進力になり得る。
やはり、翔太、早いうちに今の会社を辞めて俺のところにこい。
俺の
どうだ?」
「ありがたい話だ。うーん。
よし分った。今の仕事が区切りがついたら、お前の世話になる」
「よく言ってくれた。いつくらいの目途で俺のところにこられる?」
「1カ月はかからない」
「その間に研究室を作っておいてやる。計画図面をここに送るから要望が有ったら知らせてくれ。
それと、必要な機材についても、知らせてくれれば俺の方から発注しておいてやる。メールで送ってくれ」
「圭一、俺はお前が相当な金持ちなのは知っているが、正直、今回の研究所を含めて、宇宙船にいくらくらい出せるんだ?」
「当面は300億程度で考えているが、状況を見て追加でさらに200億は余裕で出せる」
「そんなにか!?」
「宇宙船は俺の夢だからな。500億使ったとしても夢が叶うのなら安いものだ。それにその程度なら俺のところは安泰だから気にしなくていいぞ。とはいってもX金属が俺の期待通りのものだったらそれほど金はかからないと思うぞ、なにせ、主要部分は自前で作れるんだからな」
その後、二人は朝まで飲み明かした。
その日の夕方まで翔太ともども居間で寝ていた圭一は、そのまま車に乗って帰っていった。
週が明けて研究所に出社した翔太は、その足で上司に退職届を提出した。そのさい、今抱えている案件を1カ月以内に片付けてから退社すると明言しており、一言引き止められはしたが、退職届は無事に受けとってもらえた。退社予定日は1カ月後ということにしている。退職予定日の1週間前には案件が片付きそうなので、最後の1週間は有給を消化して引っ越しの準備などをするつもりだ。
退職理由は、友人の会社で働くことになった。と告げている。業務研究の傍ら、午後からは研究所の人事部門に赴き手続きをした。と同時に、圭一に、退職届を出したむねスマホからメールしておいた。
圭一からの折り返しのメールには、株式会社『スカイスフィア研究所』の登記を行うとあった。資本金は1億円。研究所建設や宇宙船建造も含めた運転資金は圭一の資産運用会社からの借り入れで賄うことにしている。登記は遅くとも10日で完了するらしい。発行株数は100株で額面は100万円。取締役社長が圭一で取締役副社長兼研究所所長が翔太。各々50株ずつ持つということだ。翔太には5千万の金などないが、そこはヘッドハンティング費用ということにするらしい。来年度翔太が払うべき税金等は圭一の税理士が良しなに取り計らうそうで翔太は気にかける必要はないようだ。
『スカイスフィア研究所』の名まえだが、圭一が子どものころ読んだ宇宙SF小説のタイトルにちなんだものだそうで、今後開発する宇宙船の名まえにするそうだ。
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