焦り
まず自分の屋敷に女が入ったことは一度もなかった。
実際はオババ様は入ったことが何度もあるが、
そんなむさ苦しい所に突如、
オババ様がその
「あ、
「な、何をムキになっておる? 私も知らなかったのだ。」
「し、しかし、あのような可憐な
「あー、うるさいな。私が
「珍しいどころか、初めて見ました!」
「そ、それはそうだが...。とにかく、
「ただの来訪者などと、
「
「いいえ、私は見ました! せき込む
「それに、
「いや、それは、私がきちんと説明せず、たぶん、口移ししたことは…。 そ、それに、そなた、どれだけ人の話を盗み聞いておる!」
「あぁ、こんなことなら
―― 聞いておらぬな。
「もう良い。さっさと仕事をしろ。」
―― まったく、
そしてそう自分に言い聞かせ、仕事に戻った。
次の日、また
「あ、あるじ、ふ、ふ、
「何を焦っておる?
「こ、これにございます。」
明らかに仕事の手紙ではないようだ。
裏をみると、「
―― このような女子らしい
できるだけ平静を装って封を切り、中身を読んだ。
手紙の中には昨日の礼が書いてあり、
カムナリキの修行はまだまだはかどらず、力を消耗するが、あの煎じ薬を飲むと力が回復すると書いてある。
―― そうか、それは良かった。
他にもとりとめもない事が色々と書き連ねてあった。
オババ様の暴挙奇行の様子や、神社にお参りにやって来る
オババ様も、
―― 農村の出? あのような土一つ触ったこともないような手をしておいて、すぐにバレるぞ。
そう手紙にツッコミを入れたことで、
―― わ、私は何を考えておる!
―― 一体どんなことが書いてあるのか。
―― 大体、
と
他にも、昨晩、野良猫が迷い込んできて、オババ様の
―― 何と他愛もない
フフっと
その様子を隣で見ていた
―― 女からもらった文を嬉しそうに読んでいる。
そんなデレっとした
――
「草餅?」
「これも一緒に届きました。」
重箱を開けるとなるほど草餅だ。
さっそく一つ頬張る。
「うむ、これは
「では、頂きます。うーん、これは美味しいですね。
そこに、庭に通じる裏門がガタガタと鳴り、誰かが入ってきた。
「
慌ただしくやって来た男は、軍師の
「なぜ、いつも裏門から入ってくる?」
「
―― 聞いておらぬな。
「ああ。昨日オババ様とここに来た。名は
「
――
「持ち帰った魔獣の
「検死は進んでおります。しかし、魔獣使いの方の情報がつかめませぬ。」
「手がかりが少なすぎるな。厄介だな。引き続き情報収集を頼む。」
「は。では、私はこれで。」
「
「は?」
「いや、新しい土地で新しい生活を始められるところです。色々と要り用でしょうな。いやいや、ふと、思っただけです。では、
―― あいつめ。言外に何か言っておるな。
「
「あ、はい。お
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