大学生と一家

向 ようじ

第1話

僕は大学の四回生だ。今年卒業を控えている。ある夕方道を渡ろうと、していると、一人のヨボヨボのお婆さんが杖をつきながら向こう側から歩いて渡って来るのが見えた。信号は今にも変わりそうに点滅を始めていた。「危ない!」と感じた僕はそのお婆さんに駆け寄っておんぶして向こう側へと渡してあげた。だから赤信号にはかろうじてかからず済んだ。お婆さんは「背負って私を渡してくれるなんて今時なんて親切な子なんだい。」といたく感激して「ありがとう、ありがとう。」と何度も言いながら持っていたカバンからピーナッツチョコレートを取り出して僕に渡してくれた。チョコレートに目がない僕はありがたくそれを頂いた。僕は反対側にある公園を抜けて家路についた。公園を抜ける途中で先日入った神社のおかみさんが、犬を連れて散歩していたので、僕は「可愛いですね」とその犬の頭をなでながらその女性としばらくの間立ち話をした。そして公園を抜けて自分の家があるハイツへと帰宅した。家でぼんやりTVを眺めていると、「ピンポーン」と呼び鈴が鳴った。一体誰だろうと思って出てみると、カメラの前には先ほどおんぶして道を渡してあげたお婆さんと、その家族と思われるお爺さんと父、母、そして男の子と女の子の子供一人ずつという一家が映っていた。僕が「何か要ですか?」と訪ねると、お婆さんは物凄くバツが悪そうにしながら答えた。あなたが先ほど親切に負ぶって渡してくれた後、あとをこっそりつけて行って:お宅を知りました。公園を抜けてすぐの所にお宅があったので、私の足でもどうにか追いつけました。実は私たち多額の借金があって、その苦しさカラ逃れるためにこの土地へ夜逃げしてきたばっかりなんです。だから勿論今夜泊まる当ても何も無い。野宿というのは大人の私たちは我慢すれば済む話ですが、何も知らない子供たちまで野宿させるのは何だか可哀そうで、親切にしらった上誠にすまないが、一晩だけ泊めてもらう訳には行きませんか?とお婆さんは言った。「何?夜逃げ?借金を苦に。それで今晩家へ泊めて欲しいろいう話ですか?」彼はしばらく考えて、今時夜逃げなんて本当にあるんだな。と借金をしたことが無い彼は思った。確かに子供たちに野宿させるのは可哀そうだ。と感じた親切な彼は「どうぞおはいり下さいと言って、その一家を自分の部屋へと通してやった。お婆さんは申し訳無さそうに「本当にすまないねぇ、親切に私をおぶってくれた君だからこそきっと泊めてくれるんじゃないかと思ってこうしてお邪魔したんだよ。絶対に迷惑にならないように静かにしておくから一晩置いておくれ。」とお婆さんが言ったので、僕は「僕はずっと一人っ子で兄弟もいなくて寂しかったから、部屋がにぎやかになるのは大歓迎ですよ、どうぞ僕に気を遣わずに、自由にやって下さい。」と言うと、お婆さんは「そうかい?本当にありがとう。」と何度も僕にお礼を言った。僕は裕福な家に生まれ育ったので、部屋は一家四人が泊まるにしては少し手狭な感じがしたが、住めない広さではないので、僕は彼らをおいてあげることにした。「夜逃げ」の意味が分からない子供たちは見慣れない部屋に泊まることにテンションが上がってかとてもはしゃいでいる様子に見えた。僕は子供が大好きだったので、「可愛いいな。」と思って色々と話hshsた。彼らの学校や家での過ごし方など。聞くところによると、最近の子供は全然TV番組を見ずに、YOUTUBEの動画ばっかり見ているらしかった。そこで僕はテレビではバラエティ番組という面白い放送がしているんだ。」と。お笑いが大好きな僕はテレビで漫才やコントなどを沢山見せてやると、子供たちは面白がってたいそう喜んでくれた様子だった。

 次の日の朝は子供たちのはしゃぐ声で目が覚めた。お婆さんは一晩だけとはいえ、夕べは大変お世話になりました。」と深々と頭を下げた。僕は「実は一人暮らしを始めて四年間ずっと寂しかったんです。人と沢山関われる寮のようなものがあれば、是非とも入りたいと思っていたのですが、しかしあいにく僕の大学にはそういう制度がなかったので。僕は寂しいまま四年間を過ごしたのです。」そこで僕は「お婆さんたち良かったらもうしばらく居てもいいですよ。夜逃げして来たんだからどうせ行くあてなんて無いでしょう。僕は一人暮らしでずっと寂しかったから賑やかなのは大歓迎ですよ。」と言った。するとお婆さんは「なんとまあ親切な子なんでしょう。」と言って涙ぐみながら喜んだ。そして「せめてものお礼に。」と言って、朝食に切り干し大根と高野豆腐も味噌汁を料理して振舞ってくれた。ずっとパン食しか食べて来なかった僕は。その久々の朝の和食に感激して食べた。そして「鍵が必要な場合は集合ポストの中に入れておいて下さい。」とお婆さんに鍵を手渡して学校へと出かけた・学校でも帰ったらあの一家がいると思うと、もう寂しくは無いんだと思ってなんだか嬉しかった。帰宅すると、お婆さんが「君はいつも何を食べて「いるの?一体何が好き?」と聞いて来たので、どちらかというと和食が好きなんです、肉料理よりも魚料理が好きなんです。」と答えた。するとお婆さんは「今晩はさんまの塩焼きなんてどう?」と聞いて来たので、僕は「作ってもらえるならば、是非ともお願いします。」と言って、お金を手渡した。「あっ、お金の心配なら全然いらないですよ。僕は結構裕福な家に生まれたんで。」この部屋も一人暮らしにしてはやけに広いでしょう。」と言った。お婆さんは料理が大の得意らしく、今日のさんまの塩焼きも塩加減が絶妙でメチャクチャにうまかった。僕は茄子の味噌汁を飲みながら感激した。

 次の日学校から帰ってみると、お婆さんたちは昨日買ったバイト雑誌に応募したら、採用が決まったので、明日から働きに出るつもりだと言った。子供たちは近所の小学校へ転入させるらしかった。僕は「お金の心配なら全然しなくてもいいですのに。」と言ったが、お婆さんたちはそれだとあまりに申し訳無いし、大の大人がすることもなくこの家に一日中いる訳にもいかないしね。」と言って、明日から働きに出るみたいだった。

 次の日は子供たちと一緒に学校へ出かけた。途中まで駅と同じ方角に小学校があるからだ。僕は最近学校ではどんなものが流行っているのか尋ねると、彼らの以前の小学校では漫画の本を買って読むことがブームだったらしく、中でも「ドラえもん」が一番人気らしかった。僕は「この辺は今の子供も昔の子供も変わりないな。」と思いながら学校へと向かった。

 家へ帰ってからしばらくすると、あの一家がバイト先から帰って来た。全員デジタルカメラの組み立て作業に一家全員で応募したらしく、丁度応募した時期がその会社のラインの立ち上げの時期に重なっていたらしく一家は全員で同じ職場で働くことが出来ているらしかった。しかしデジタルカメラの組み立ての現場で働いているのはほとんどが20代前半の若い人たちばっかりらしく、お爺さんとお婆さんそしてその子供のおじさんとおばさんという組み合わせは非常に珍しいらしく一家は「若い子たちからたくさん話掛けてもらった」と話した。「そこで私たちは昭和の時代のことについて色々と話してあげたんだよ。昭和の時代は先生が生徒をひっぱたくなんて当たり前の話で、私もよくビンタとかされたもんだよ。」と話すと、若者たちは「今の時代からは考えられない話ですね。」と答って「ビンタ」という耳慣れない言葉をたいそうめずらしがったという。あと電話が携帯できるようになるとは私たちの世代からすれば夢のようなお話でね、昔電話は固定の有線で、黒くてダイヤル式だったんだ。昔は今は滅多に見かけない公衆電話がいたるところにあってね、赤かピンク色でタバコ屋の軒先なんかによくあったんだ。と話すと、電話は携帯するのが当たり前と思っている世代の子にはダイヤルの固定電話というのはとてもめずらしいらしかったよ。」とお婆さんたちは話した。

 僕は今日学校帰えりに流行っているというので、子供たちにお土産にプレイステーションというゲーム機を買って帰った。学校から帰ると僕は早速包みを子供たちに手渡した。「今日は君たちにプレゼントがあります。」と言って手渡すと子供たちは「うわあ。本当!?ありがとうと言ってすごく喜んでくれました。そして包装紙をビリビリと破くと中からゲーム機が出て来ました。子供たちは「うわあ、「ゲームだ!これ僕たちずっとずっと欲しかったんだ。だけど僕の家物凄く貧乏だから欲しいほしいなんてとても言えずにみんなの話題にも全然ついていけずに正直メチャクチャに困っていたんだ。「うれしいよ。本当にありがとうと言って、嬉しそうにテレビにゲームを繋げてやり始めた。僕は手始めにバイオハザードという何処かで聞いたことのある名前のゲームを買って帰ったのだが、僕は初めてやるそのゲームの迫力に圧倒されるとともに正直怖いと感じてしまった。しかし子供たちはそんなことお構いなしにずっとゲームを楽しんでいる様子だった。

 そんなこんなであっという間に一カ月が過ぎた。するとお婆さんは生活のことに色々と面倒を見てもらって本当にありがとうございました。やっと一家四人でアパートへ引っ越せるだけのお金が捻出来ました。と言って出ていこうとしたので、僕は「どうか出て行かないで下さい。僕には兄弟がおらずずっと一人っ子で生きてきて寂しかったんです。だけどあなたたちが来てくれたお陰で部屋が賑やかになって喜んでいたんです。そして何よりい婆さんが作ってくれる料理が食べられなくなるのが残念で仕方がない。できたらずっと僕の家に居てくれませんか?」と僕は言った。お婆さんは親切に生活の面倒を見てくれただけでなく、ずっと居てもいいなんて,君は本当にいい子だねぇ。」と涙ぐみながら感謝した。その日の晩御飯は僕の大好きな田楽とがめ煮だつた。お婆さんが腕によりをかけて作ったと言う言葉通りに、メチャクチャにうまかった。そんな感じで大学生とその夜逃げして来た一家との奇妙な共同生活は続いた訳だが、僕は本当に子供が大好きだったので、その成長をそばで見守れると思うと、うれしくてしょうがなかった。

 そして卒業の時期になったので、僕は家族で暮らしやすいように4LDKの古民家を借りてそこに住むことにした。僕はその古民家はなにかいいふいんきがすると思って借りた物件だったので、お婆さんたちもたいそう気に入ってくれた様子だった。そんな感じで若者の僕とその一家との奇妙な共同生活は僕が結婚して、新しい家庭を作るまでずっと続いた、













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大学生と一家 向 ようじ @mukaiyouji

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