第115話 倭寇

 倭寇の船員たちは大友艦隊が1日も持たないでほぼ瓦解して水没を免れた船は拿捕されて織田家旗艦の浮きドックに縛り付けられた。

 大友旗艦に使っていたイスパニアのガレオン船は片側舷側だけで25門の青銅砲を積み込み、その船の定員は500名程だが、実際に乗っていた船員は死者や負傷者を合わせて約100名程だった。・・・奴隷を合わせると250名程がこの船に乗っていたことになる。


 問題はイスパニアのガレオン船に乗っていた船員達だ。

 ヨーロッパ諸国はゲルマン民族の大移動のように先住民を後から来た民族が殲滅するという歴史を繰り返している。

 この時からもう白人至上主義・・黒人奴隷をアフリカ大陸から労働力として連れて行くが前にも書いた奴隷船ブルックスのように物扱いにしている・・ような思想を持っている船員達では黄色人種の俺の言う事を聞きそうもない。


 ・・現在もイスラエルが国民を強引に拉致されてハマスとの戦闘を続けているが民族だけでなく思想・宗教観からお互いが憎しみ合って戦闘が激化の一途をたどっている。思想、宗教は自由であるが戦争を続けるのは・・・閑話休題。


 それにイスパニアのガレオン船に張り付いた僚艦を大砲で撃とうとした艦長・提督であったゴンザレスは大友宗麟の手によって亡くなっていた。

 僚艦を撃てと思う事こそが黄色人種を下等と見てそんな命令を下すのだ。

 それに下等と見ていた黄色人種の大戸宗麟がゴンザレスを切り殺したことから、今度は拿捕して捕虜とした俺・黄色人種の憎しみを増しているようだ。・・・う~んおおこわ!


 艦長・提督がいないのでそれでは副長のアントニオはどうか、副長と船医を兼ねている。

 彼は船医というより赤鬼の様な大男で大工のような道具で治療していたがこれはアカン・・・治療具を清潔にするという概念が無いようだ。

 前世の医療技術や知識のある皇女松様に再教育された医師であるグランベルや桜子達の方が医療技術が進んでいるのだ。

 船医よりも船長としての能力や砲術士官としての能力の方が上のようだ。

 その他の航海士3名で、いずれも船長として独り立ちできるような人材だったのだが、ただ彼等に船を渡すと思想・白人至上主義で宗教的な違いもあるし、日本人・黄色人種の俺に指示を受けるよりもとイスパニアまで帰るだけの航海術を持っているので船を乗っ取って無理をしてでも帰ってしまいそうだ。


 ただ彼等の航海術や砲術は倭寇の船長の知識よりも上なのは認める。 

 織田家の蒸気機関を載せた安宅船よりも、彼等が慣れ親しんだヘンリー8世号等のガレオン船に乗せて徹底監視の上で彼等の知識を吸収する事にしたのだ。


 大友艦隊のジャンク船から降ろされた倭寇の船員たちの方は


「船が縛り付けられて身動きも出来ず織田家に忠誠を誓うしか道も無い、それに倭寇の一員となってこの戦いにジャンク船4隻を率いて参戦したインド人の提督が織田信長の娘婿だというのだ。

 これで待遇も今までより良さそうだ。」


ということで、倭寇の船員達は喜んで皆誓紙を差し出して配下になった。


 大友艦隊として戦ったイスパニアのガレオン船の船尾にはイスパニアの国や当時の国王を表す彫刻が施されている。

 いくら拿捕した船とは言え船尾の彫刻は返還を求められる証拠となるので削り取るよりも剥ぎ取って、博物館にでも飾ることにした。

 それにヘンリー8世号にも船尾にはイングランドの国やヘンリー8世を表す彫刻が施されており、どうやらイングランドから今で言う国際手配がかかっているようなので、イスパニアのガレオン船の修理の後にヘンリー8世号も船尾部を引っ剥がして新たに船尾部を造る事にした。


 船尾部の彫刻は日本国なら古事記に基づき、伊邪那岐(伊弉諾)・伊邪那美(伊弉冉)の二神が国を造るところを表し、親父殿の肖像でも彫り込む事にした。


 イスパニアのガレオン船の船尾を剥ぎ取っていると倭寇の提督で俺の義父・舅にあたるランジード・ノボリクスが


「今まで乗っているジャンク船よりもイスパニアのガレオン船の方が大きいので乗り換えたい。」


と希望してきた。

 希望を叶える代わりに、この際舅ではあるが織田家の支配下に入るとの盟約がなされた。

 織田家の支配下に入るというので急遽引き剥がされたイスパニアのガレオン船の船尾部に彼のインドのマハラジャを表す彫刻と彼の肖像を彫り込んだものを取り付けることにした。


 今までイスパニアのガレオン船の船尾部に伊邪那岐や伊邪那美の二神が国を造るところを表した彫刻を施そうと作成していたが、それはそのままヘンリー8世号に使うことにした。


 イスパニアのガレオン船は彼ランジード・ノボリクスの肖像画が付いたことから、今後『ノボリクス号』と呼ばれた。

 倭寇・ランジード・ノボリクスの旗艦になったのだ。

 ノボリクス号の織田家では旧式の装備となった青銅砲は降ろされて、追従させる予定のジャンク船に4隻に載せ、ノボリクス号には青銅砲の代わりに織田家の誇る15センチ鋳鉄砲が載せられた。


 これで舅のランジード・ノボリクスはノボリクス号を旗艦として自国で作った今までの乗艦だったジャンク船を含めた青銅砲を積載したジャンク船4隻、計5隻の織田家の第2艦隊が出来上がった。

 ランジード・ノボリクスにはイギリスの海賊のように敵対する船には攻撃して船どころか積み荷を奪う権利・私掠免許しりゃくめんきょを与えたのだ。

 これで彼の率いる織田家第2艦隊は海外進出の先駆けになった。


 歴史的に見て朝鮮半島に下手に手をつけると痛い目を見るので、ランジード・ノボリクスが指揮する織田家の第2艦隊は史実でも倭寇の拠点がある台湾を中心に動き、ランジード・ノボリクスが弟に譲位したインドの地にも母港を置くことにした。

 これによって織田家の第2艦隊はインド・東南アジア諸国・日本を周遊するように交易をおこなう事になったのだ。

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