第112話 決着

 大友家の重臣・立花道雪が織田家艦隊と交戦中に主君・大友宗麟の乗る大友家旗艦としていたイスパニアのガレオン船が僚艦と衝突団子状になって現在の門司港へと漂うようにして近づいた事からこれを助けようと大友家の持つ市場の一つ小倉城から躍り出た。

 その小倉城であるが・・・小倉城の最初の築城が文永年間(1264年~1274年)と古く現在見ることができる天守閣は1959年に再建されたものだ・・・閑話休題。・・・海岸から500メートル程しか離れていないのだ。

 弓矢の時代ならこれでも良かったのだろうが武器の時代が大砲へと大きく変化しているのだ。

 ただこの時代、西欧諸国で使われている青銅砲では有効射程距離が1キロ未満しか飛ばないのだが、織田家が誇る鋳鉄製の15センチ砲になると有効射程距離が5キロと目覚ましい進化を遂げているのだ。


 大友家艦隊の後続の4隻のジャンク船が大友家の旗艦を救うことなく帆を降ろして降伏・恭順の意を表しており、その大友家旗艦のイスパニアのガレオン船は僚艦と衝突団子状になり戦闘不能の状態になって毛利家の門司城と大友家の小倉城の中間地点現在の門司港付近へと押し流されるように漂っている。

 俺はこの機を逃すことなく織田家の内燃機関・蒸気機関を載せた安宅船の尾張丸や駿河丸それに三河丸をイスパニアのガレオン船と衝突していたジャンク船に急行、接舷させて竹中半兵衛が指揮する陸戦隊が乗り込ませて、次々と抵抗する乗組員を制圧してこれらを拿捕した。


 陸戦隊を降ろした後の安宅船・尾張丸や駿河丸それに三河丸から内火艇・装載艇である小早が降ろされて後続の遠江丸や桑名丸に接舷してそれに乗船中の残りの陸戦隊が乗り込む。

 内火艇を降ろした尾張丸や駿河丸それに三河丸は陣形を組みながら小倉城方面に向かって進む。

 遠江丸や桑名丸からも内火艇が降ろされて同様に陸戦隊が乗り込み何とその陸戦隊の指揮を降将・小早川隆景が行っている。

 内火艇は合図を待つように暫くその場にとどまる。

 陸戦隊を降ろした遠江丸や桑名丸も尾張丸や駿河丸それに三河丸の陣形に加わるようにその後続へと続く、5隻の織田家の誇る安宅船が小倉城を囲むように静々と陣形をかえて、その船首・船尾部に備えられた15センチ2連式砲塔の砲口が小倉城へと向けられる


『ドーン』『ドーン』『ドーン』『ドーン』『ドーン』『ドーン』


と艦砲射撃が開始される。


『ドカーン』『ドカーン』『ドカーン』『ドカーン』『ドカーン』『ドカーン』


と小倉城へと砲弾が着弾するたびに、土煙をあげながら城門や城壁それに天守閣などが崩れ落ちていく。

 艦砲射撃は続く・・・砲撃が終わりその相図を受けて内火艇に乗り込んだ陸戦隊が小倉城付近の浜辺に乗り付ける。

 艦砲射撃を受けて小倉城は見るも無残な格好に成り果てていた。

 攻め寄せる陸戦隊を見て小倉城内で何とか生き残った兵は武器を捨てて恭順の意を示した。


 小倉城に艦砲射撃を行った5隻の安宅船は反転、小倉城から出て大友宗麟の乗るイスパニアのガレオン船を救出すべく動いた立花道雪の部隊にも砲弾の雨を降らせようとその後を追った。

 立花道雪の部隊は門司城から打って出た吉川元春の部隊と小倉城と門司城の中間地点で距離500メートルの間を開けて睨み合っていた。


 立花道雪は後方に控える小倉城が砲撃を受ける轟音を聞いた。

 思わず振り返る立花道雪の目には着弾の度に土煙をあげながら崩れ落ちる小倉城が見えた。

 立花道雪はその惨状を見て


『もはやこれまで。』


と思い対する吉川元春のもとへ降伏を願い出よと配下に命じようとしたが・・・前線で戦う兵は小倉城のあまりの惨状に驚き腰を抜かす者もいたが死兵となって彼・立花道雪から

「突撃!」

との命が発せられる前に吉川元春の軍にバラバラと襲い掛かってしまった。

 それを見た立花道雪は・・・命令も聞かずに動いた事や個別にバラバラと襲いかかり集団での軍事行動ができていない事から


『しまった!』


と思った・・・彼等に同調して吉川元春の率いる軍に襲いかかるか?


『どうする?どうする?』


と自問自答した。

 苦悩する立花道雪の目に尾張丸を先頭に駿河丸・三河丸・遠江丸・桑名丸と織田家の誇る蒸気機関を載せた安宅船が沖合いのすぐ横まで迫り砲塔がぐるりと回って黒々とした砲口が立花道雪の軍に向けられるのがやけに大きく映っていた。

 立花道雪にはこの砲門が開かれれば小倉城と同じ道が来ることが予想された。


 吉川元春の率いる軍に個別でバラバラと向かって行った兵は次々と血吹雪きをあげながら倒れていく。


『すまん!すまぬ!』


と立花道雪は飛び出した兵に心から謝り・思い、配下に向かって大声で


「武器を捨て、10歩後退して膝を付け。」


と命じた。・・・突撃の命が発する前に暴発して飛び出した兵を見捨てて降伏したのだ。

 その頃には降将・小早川隆景が小倉城を占拠し、その証として織田家の家紋・織田木瓜紋が描かれた旗印と毛利家の家紋・一文字に三つ星の描かれた旗印、それに小早川隆景の掲げた左三つ巴の家紋の入った旗が高く天守閣のあった場所に掲げられていた。

 立花道雪の軍が武器を置いて後方へ10歩下がったところで、命を待たずに暴発して突撃した立花道雪配下の最後の兵を吉川元春自らが切り伏せた。


 関門海峡の瀬戸町側に身を潜めていた浮きドックが静々と現在の門司港側に現われた。

 その頃には帆を降ろして恭順の意を表している4隻のジャンク船を織田家の4隻のガレオン船がそれぞれ拿捕した。

 無傷で拿捕したジャンク船4隻と大友家艦隊の旗艦として使われていたイスパニアのガレオン船と接触して団子状になっていたジャンク船も門司港側に織田家艦隊の安宅船によって曳航されてきた。

 浮きドックの後方部分が外されてコの字型になった後方部分の右舷側にジャンク船2隻が縦列で配置され、その横にイスパニアのガレオン船と団子状になったジャンク船が配置され、浮きドックのコの字状態になった左舷側にジャンク船2隻が縦列で繋がり、最後に今までの浮きドックの後方部分が繋がった。


 浮きドックにジャンク船が加えられた後方の微調整が行われた。

 浮きドックの後方部分がずんぐりむっくりした状態になったが何とか浮きドックの様相を呈した。

 僚艦と衝突して穴が開き海水が流入し始めたイスパニアのガレオン船やジャンク船の沈没はこれで免れるようになったのだった。

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