第102話 瀬戸内海で人類初の熱気球
織田家の旗艦だった海進丸等のガレオン船は風次第だが船の平均速度は7ノット(1ノットは時速1,852キロ)時速約13キロで、これはのろのろした台風並みの速度だ。
蒸気機関で航行することのできる安宅船はその倍ほどの速度を出す事ができるが、虎の子の5隻を先行させるわけにはいかない。
ましてや艦隊行動をとり、それに旗艦の浮きドックは
風次第のガレオン船だがそれでも一日中動かすことが出来るので、平均速度の7ノットで一日航行すればおよそ312キロも進むことが出来る。・・・ちなみに大阪から福岡まで直線距離では485キロなので、なにも無ければ二日もあれば瀬戸内海を横断する事ができる。
しかし敵中突破の強行軍だ、なにがあるか分からない腕がなるぜ。
今のところ村上水軍と三好家合同軍を瀬戸内海最大の島、淡路島の明石海峡付近で打ち破り、向かってきた合同軍のうち村上水軍は壊滅、三好家の軍についてもほんの一部が本拠地の阿波の国(徳島県)に逃れただけだった。
後年『淡路島の戦い』と呼ばれる戦いにより大阪湾の航海権・制海権を掌握することができた。
瀬戸内海から大阪湾への抑えとなる淡路島に灯台と要塞を構築して航海権・制海権の確実な掌握に勤めた。
ある程度目処が立てばこの淡路島の明石海峡を越え瀬戸内海へと入っていく。
瀬戸内海にはいり特に村上水軍などがちょっかいをかけるようなことは無く、夕闇がが迫るなか、村上水軍の本拠地・・・現在の
『しまなみ海道』
と呼ばれる瀬戸内海の航路を遮るように点在する島々が見えてきた。
このしまなみ海道と呼ばれる場所は毛利家(小早川水軍)の本拠地とも近く、村上水軍の本拠地として城が6か所もある因島、それに能島は位置的に見て瀬戸内海でもしまなみ海道でもその中央付近に存在していることから、村上水軍の主力艦隊が集まりやすいと見てこの二つの島を避けた。
これにより、しまなみ海道にある大島と四国の今治(現在の今治市)の間にある来島海峡を通過する事にしたのだ。
その名の示す通り来島村上家の本拠地来島があるが、すぐ隣の四国の今治市側は河野家(河野通宣)が治めており、他の村上家や毛利家(小早川水軍)は河野家を刺激しないために、ここでの集結はないと思われたからだ。
来島に近づくと織田家の旗艦巨大な浮きドックの一部の甲板上に秘密兵器、試作の熱気球が置かれて火が入れられた。
熱気球はあの三国志で有名な諸葛亮(孔明)(181年~234年)が天灯を使ったという逸話がある。・・・なおこの天灯は実際に台湾で見ることができ、台湾の観光案内の写真等でも見ることができる。
実際に人が乗れる熱気球は1783年フランスのモンゴルフィエ兄弟が作成して人を乗せて飛んだのだ。
その飛行の10日後、ジャック・シャルルという方が水素ガスを詰めた気球による有人飛行を成功させている。・・・閑話休題。
永禄2年(1559年)では200年以上も前に有人飛行の出来る熱気球を造っちゃったのだ。
その熱気球に火が入り丸く膨らんでいく。
それに乗り込むのが俺の妹達・・・市と犬の姉妹だ。
彼女達は医科薬科大学や将官大学の学生であり、伊賀国にある忍者学校の生徒でもある。
今回の旗艦にした浮きドックの上には病院も建てられておりその見習い医師として二人とも乗り込んでいた。・・・実は俺よりも親父殿は最近二人のことが気に入って手元に置きたいと浮きドックに乗り組む際に是非にと言って連れて来ていたのだ。
忍者学校にも通っているので二人とも織田式信号に精通しており、俺とよく行動を共にしている事から、俺がサーシャさんと秘密裏に開発していたこの熱気球にも精通しているのだ。・・・う~んこれから二人とも熱気球で空を飛ぶが、本当に飛んだ御転婆だ!
彼女達を特に心配そうに見つめる四人がいる。
それは俺と親父殿それに医科薬科大学で彼女達を直接教えている船医のグランベルと将官大学で彼女達を教えている明智光秀だ。
熱気球開発チームの松様やサーシャさんはそれ程心配していないようだ。
同じく熱気球開発チームの大隅益光が熱気球にガスバーナーで熱気を送ってついに飛びたてる状態にした。
前世の記憶があり科学技術に強い大隅益光だけのことはあるガスバーナーまでつくった。・・・実は金属製の船を作成する際リベット打ちではその接合部が破断する事が多いために金属溶接が考えられ、その過程で生まれたガスバーナーである。
市と犬の姉妹はガラス製のゴーグルの付いた飛行帽に旧海軍の零戦乗りのような制服を着て勇ましい姿で敬礼する。
制服の上には救命胴衣を着けて背中にはパラシュートまで背負っている。
熱気球の下に吊り下げた
本当は俺が行くつもりで二人は乗せたくなかったが、二人して懇願されたら・・・可愛さダブルだよ!それに言う事聞いてくれないと一生口をきかないだよ!しまいには二人して守り刀を首に当てて自決するとまで言われたのだ・・・負けた!負けた結果がこれだった。
二人はピクニックにでも行くつもりで暗闇の中熱気球に乗り込んだ。
二人はガスバーナーの火を
『ブーワッ』
と調整しながら熱気球に熱を送り込む、その度12歳になる美少女二人の真剣な顔を照らし、熱気球をフワリと浮す。
熱気球の下に吊り下げた籠に縛り付けている砂の入った重しを二人して次々と外すとさらに上昇を開始した。
籠の真下に取り付けられたロープが
『スルスル』
と伸びていく。
熱気球を降ろす為の巻き取り装置が逆回転してロープを送り出す。さらに熱気球の高度が増した。
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