第101話 大阪湾の制海権奪還
明石海峡を通過しようとする我が織田艦隊に対して、丸に上の旗印の村上水軍と三階菱に五つ釘抜紋の旗印を掲げた三好家の合同艦隊が向かってきた。
村上水軍と三好家合同軍は数で勝負するつもりか多数・・・その数およそ300か・・・の小舟に乗って明石海峡で発生する途轍もなく速い潮流の流れを利用して物凄い勢いで織田家の艦隊に向かって来るのだ。
その小舟に対して、いくら織田艦隊の船には大砲を装備していても小舟を砲撃するのは命中精度が悪い!それにこれだけの数の小舟だ効率的にも悪い!
近づいてくる村上水軍と三好家合同軍の小舟の状況を半世紀ほど早い望遠鏡で見れば、小舟に乗る兵士の平均人数は舵をとる者を含めて10人程で、舵を取る者以外の兵士は焙烙火矢を火縄銃に差し込んでこちらに銃口を向け、火縄銃が無い者は弓に炮烙火矢を番えてこちらを狙っている。
確かに300艘ほどの数の小舟を大砲で迎撃するのは無理だ!
撃ち漏らした小舟が織田家艦隊の懐に飛び込んできたら、彼等の放つ炮烙火矢によって発生する甚大な損害が見込まれる。
決死の思いと一撃必殺を狙って村上水軍と三好家合同軍による小舟が潮流に乗って刻々と向かって来るのだ。
合同軍の掲げる旗印の状況からして半々、村上水軍が150艘・三好家が150艘程か・・・それにしても、どうしても俺に敵対したことがある村上水軍や三好家の指揮官は最近の戦いでは大砲の砲撃で散々な目に遭ったことから、大砲の威力に目がいき織田式鉄砲の威力を忘れがちである。
織田式鉄砲は火縄銃に比べて、連発ができ、命中精度も高く、有効射程距離にあってはなんと10倍ほども違うのだ。
明石海峡の速い潮流を利用して素早く接近戦にすれば勝てるとでも思ったのだろうがそうは問屋が卸さない!
ずらりと各船の銃眼から何百丁もの織田式鉄砲が構えられる。
「撃て!」
の号令で織田式鉄砲の火蓋が切られた。
村上水軍と三好家合同軍から見れば
『パーン』『パーン』『パーン』
という乾いた音が響いた。
村上水軍や三好家の指揮者は
「臆病者がいるぞ!
鉄砲弾の届く距離を知らないのか笑ってしまうぜ!」
と大声で味方を鼓舞したが・・・次の瞬間、眉間を撃ち抜かれて血飛沫をあげながら
『ドーッ』
と倒れた。
その後も鉄砲を構えたり、弓を引き絞っている兵士が次々と倒れ、海に落ち海を赤く染めていく。
この状況に村上水軍と三好家合同軍全体に恐慌が走る。
織田家の艦隊の各船からさらに織田式鉄砲が発する
『パーン』『パーン』『パーン』
という発砲音がするたびに村上水軍の多数の小舟で火縄銃を構える者や弓矢を構える者が打倒される。
打倒されるならその前に相手に一撃を加えてやると火縄銃を撃ち矢を射るがそれらは合同軍と織田艦隊の間の海に虚しく消えていった。
ほんと虚しい村上水軍と三好家合同軍は白旗を揚げて降伏するしかない。・・・以前にも書いたが、白旗の文化は西洋の文化であって戦国時代では竹竿に笠を刺した使者が降伏を願い出るのだ。その他では中国における三国志の時代では指揮官は
竹竿に笠を刺すより白旗の文化を広めよう。
俺達の艦隊に近づきすぎた村上水軍と三好家合同軍の小舟に乗る撃たれて亡くなった以外の兵士は構えていた鉄砲の火縄を外し、弓の弦を外し、腰の武器をも手放して頭を抱えてうずくまって降伏の姿勢を示している。
向かってきた小舟300艘のうち100艘近くの小舟に乗る兵士が全て織田式鉄砲の餌食になり、100艘近くが降伏し、残りの100艘が淡路島へと我先に向かって逃げ出した。
この一瞬の戦いでおよそ1000名もの命が失われたのだ。
淡路島に向かって逃げる小舟を明石海峡を流れる速い潮流が押し戻す。
鉄砲や弓矢を持って船に乗っていた兵も櫂に持ち替えて必死に漕ぐがまるでミミズがのたくるように上手く進まない。
その時、織田家の艦隊に動きがあった。
旗艦の浮きドックを押したり曳いたりしていた安宅船の帆が降ろされ、代わりに煙突から黒い煙が上がりそれが白煙へと変化すると安宅船は浮きドックから離れて動き始めた。
その時逃げる村上水軍と三好家合同軍の兵士は悪夢を見た。
帆も張らず櫂も艪も漕いでいない和船の中でも最大の大きさを誇る安宅船が白煙を上げながら追いかけてくるのだ。
それも徐々に速度を上げて明石海峡の速い潮流をものともしないで近づいてくれば逃げる村上水軍と三好家合同軍も悪鬼を見る思いで、ついには諦めて次々に櫂や艪から手を放して降伏していった。
これにより村上水軍と三好家合同軍の捕虜の数は2千名に及びそのうち500名程が織田式鉄砲による銃創を受けていた。
銃創を受けていた者は浮きドックの一角にある病院に収容された。
西欧の最新医療技術と松様の前世の知識による医療技術とにより普通なら亡くなっていた者も治療の結果命永らえた。
病院という事で捕虜の取り扱いが少し甘かった。
というのも捕虜であるにもかかわらず医療実習として医師見習いの女医を
手籠め
にしようとした不届き者がいたのだ。
あろうことか、それが俺の実の妹の犬だった。
俺は丁度それを目撃して妹の純潔を守ったが、その際逃げる捕虜を刀身を当てて圧し切った。
史実でも『へし切長谷部』という名刀があるが織田信長がその刀で自分に無礼を働いた茶坊主を刀身を当てて圧し切ったという逸話がある。・・・それで捕虜を圧し切ったこの刀は『へし切長谷部』と命名され俺も『第六天の魔王』の名を更に高めた。・・・閑話休題。
これにより捕虜の取り扱いが厳しくなったのは言うまでもなく、怪我が癒えた捕虜達は淡路島の明石海峡と鳴門海峡の灯台を造らせたり、弟信行のもとに送られて土方となって道路の建設や馬車鉄道の敷設作業に携わせたのだ。
俺が捕虜を圧し切った事に恐怖して唯々諾々と命に従っているようだ。
今回の戦いで織田家が村上水軍や三好家によって奪われた大阪湾の制海権を取り戻すことができた。
一部三好家の小舟は四国へと逃げのびることができたが、村上水軍の方の兵士は亡くなった者以外は全て捕虜にしている。
大阪湾の制海権を手に入れれば次は瀬戸内海の制海権を奪い取るのだ。
瀬戸内海に入れば村上水軍との直接対決やさらには中国地方の覇者である毛利家と対立する事が予想されるのだった。
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