第89話 琵琶湖の戦い・沖島の湖賊

 堅田の湖賊を降伏させて傘下におさめたと言っても琵琶湖にはまだ湖賊はいる。

 それは琵琶湖最大の島、沖島をねぐらにする湖賊だ。

 その沖島を織田家の水軍が取り囲み、沖島の湖賊に対して青鮫が負傷しているので、青鮫の叔父さんと言う方が降伏を勧告しに行ったが戻て来たのはその叔父さんの首だった。

 戦国乱世とは言え徹底抗戦の意思を伝えると言っては、使者の首をいちいちねなくても良いものを!人的財産の無駄遣いだ!


 その沖島の湖賊を退治するために沖島を取り囲んだ織田家水軍による艦砲射撃が開始された。


 沖島・・・面積1,51キロヘイベイ、海岸線長6,8キロ、最高峰の蓬莱山が標高225メートルである。

 その島から海へ脱出させるために包囲網の一部は降伏する島民の為に開けたが、島の周りを織田水軍がビッシリと囲む、関船や織田家の旗艦海進丸の舷側に並べられた大砲が


『ドーン』『ドーン』『ドーン』『ドーン』『ドーン』『ドーン』


焼夷弾しょういだんが発射される。

 延焼目的の焼夷弾が蓬莱山を初めとする山々に着弾して木々が燃え上がる。


 一瞬で山々が火山のように火を噴く、島民は島に危険な何か事かあれば山々に逃げ込もうと思っていたので逃げ込む場所が無くなった。

 余りの出来事に島民は武器を投げ出して、島から着の身着のままで包囲網の一部の隙間を目掛けて小舟に乗って逃げ出してきた。・・・当然島民と言えども多くが湖賊を生業なりわいにしているのでそう簡単に逃がすわけがない。


 徹底抗戦を騒いで堅田の湖賊の賊長青鮫の叔父さんの首を切らした沖島の湖賊の首謀者を斬首の刑にしてさらした。・・・う~ん人的資源の無駄使いだが、堅田の湖賊の感情を考えればやむえない。


 これにより沖島の湖賊は降伏した。


 問題は紅蓮の炎を上げながら燃え盛る沖島の火災鎮火だ。

 織田家水軍が常備している龍吐水で湖水を汲み上げて鎮火しようとするが中々鎮火できない。・・・う~ん誰だ焼夷弾などを使った奴は。戦術的には効果的だが、その後の環境その他戦略的には考え物だ。

 しょうがない山々の木々が、まる三日三晩かけて燃えて無くなるまで燃え続けさせた。

 黒焦げに焼け爛れた禿山が出来上がった。


 皇女松様の京都脱出行の最終目的地を琵琶湖内で小谷城に近い竹生島としていたが竹生島には古くからの神社仏閣があり、ここに皇女松様の住む御殿を建てると手狭になってしまう、目の前の沖島が禿山になってしまっているのだ。

 沖島復興と言う名目により、竹生島より中央(京都)に近いこの島に皇女松様の住む御殿を建てるとともに、この沖島を織田家の拠点化・要塞化する事にしたのだ。


 先ずは沖島に織田家が100パーセント投資している京屋や近江屋、尾張屋の物流拠点としての倉庫を建てる。・・・しばらくの間は関船が積んでいた馬車をそのまま使うことにした。

 島民を使って沖島のほぼ中央にある蓬莱山に向かって幅約5メートルの石畳で出来た道路がつくられて、皇女松様の宮を建てる建築資材が運ばれていくのだ。

 沖島に宮が建てられるまでの間、旗艦海進丸に乗艦してもらっている。


 琵琶湖に織田水軍が侵攻した初日に、琵琶湖の湖賊を全て退治して、琵琶湖における制海権を織田家が抑えてしまった。

 これで琵琶湖内で活躍の場を失った織田家の旗艦海進丸は琵琶湖に置いておくだけでは宝の持ち腐れである。

 織田家の旗艦海進丸を遊ばしておくわけにもいかず、2番艦、3番艦が出来るまでの間、他の国々に睨みを利かす為に松様を乗艦させたまま桑名港に戻ってきたのだった。

 その織田家の旗艦海進丸が今の松様の仮の宮となっているのだった。

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