第85話 瀬田川の戦・戦端
俺は、今京都で力をつけている三好三人衆や松永久秀が皇女松様を害しようとしている事から
『琵琶湖の湖賊退治』
を名目にして皇女松様の救出作戦を展開中である。
俺は旗艦海進丸を中心に珍妙な帆を張った・・現代風のヨットの帆を張った・・船首・船尾に2連装鋳鉄製の大砲を装備した関船20艘と織田の化け物船と恐れられた関船2艘を伴なって、大阪湾から琵琶湖へ向けて淀川から宇治川さらには瀬田川へと名称を変えて流れる琵琶湖からの唯一の流出河川を使用して遡上している。
皇女松様は俺の命を受けて織田家の忍軍が京都の町に火を放ちその騒ぎに紛れて皇女松様を御所内から脱出させ、淀川から名称を変えた宇治川付近で無事に俺の乗る旗艦海進丸に迎え入れることが出来た。
旗艦海進丸以外の、20艘ある珍妙な形の帆・・現代風のヨットの帆を張ったどの関船も京都の店舗にあった高級商品を満載した馬車を船尾に積んだため船尾側の鋳鉄製の2連装の砲塔が使えなくなった。
馬車を載せると関船は次々とマストに帆を張り琵琶湖に向けて船出を開始する。
宇治川から名称を瀬田川へと変わろうとする場所付近において、またしても京都側の河川敷から織田式光信号(モールス信号)の発光が見えた。
その内容が
『本願寺派の僧兵、三好三人衆と松永久秀の兵が総計でおよそ600名、堺で買い上げた大砲を持ち出して上流およそ1里(約4キロ)先で布陣しようとしている。』
と言う内容だ。
俺の悪い予感が当たった!
堺で売り払った青銅砲がさっそく疫病神になりそうなのだ。
この付近の川幅が600メートル前後なので、青銅砲を使用した場合その有効射程距離が1キロもあるので川を越えて十分に砲弾を飛ばせる。
これでは川を進む我々は簡単に打倒せる射的の的になってしまう!
ただ有効射程距離を言えば我が方の鋳鉄製の大砲の砲弾の方が5キロも飛ばせる優れものなのだ。
それで本願寺派の僧兵や三好三人衆と松永久秀の兵の移動状況や布陣場所さえわかれば先制攻撃が出来るというわけだ。
俺は旗艦海進丸のマストにスルスルと登り物見の位置まで行くと・・・遠くにいくつもの
松明のおかげで部隊が照らされて、その
最後尾を僧兵特有の
中軍を三好家の家紋『
各部隊はおよそ200名づつで、そのうち20名程の兵が重い青銅砲に縄をかけてそれを曳きさらには同数の兵が砲を押していく、その後方を砲弾や装薬の詰まった樽を満載した荷車を同数程の兵士が押したり曳いたりしている。
その兵を取り囲むように松明を掲げた兵士が進む・・・う~んこれは危ないね!?
何が危ないって・・・火薬の側に松明だよ!
そう言えば東郷平八郎元帥が日露戦争で旗艦として乗艦していた戦艦三笠も弾薬庫前で信号用のアルコールに火を付けて、吹き消した後飲むと言う悪戯の最中に謝ってその火を火薬に引火させて爆発沈没させ乗員339名もの死者を出したと言う爆発事故・・・諸説あり・・・も起きている。
その爆発沈没事故は佐世保港内で、東郷平八郎元帥は上陸しており無事であった。
また佐世保港内であったことから引き揚げられて修理している。
・・等と物思いに
それを見かねた松明を持った兵士が助けに行く・・・松明は!
何と火のついたままの松明を砲弾や装薬が詰まった樽が載せられた荷車の上に置かれているよ!・・・結果・・・
『ドーン』
と言う轟音と真赤な火柱が立ち昇る、それに伴って砲弾や火の付いた装薬の詰まった樽が飛び回る。
砲弾や火の付いた装薬の詰まった樽が飛び回り、転げ回ってさらに阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていく。
飛び回る砲弾は付近の兵を負傷させ、火の付いた装薬の詰まった樽はそこかしこで爆発炎上させていく。
その火の付いた装薬の詰まった樽が何と僧兵部隊の前方で中軍を行く三好家の軍にも飛び爆発炎上させたようだ。
おかげでこちら側からはその惨状が丸見えだ。
我が珍妙な帆・・現代風のヨットの帆を張った20艘の関船に備え付けられた船首2連装砲塔が回されて燃え上がる場所に狙いが定められていく。
風を受けて軽快に関船が進み、先頭の関船の砲門が開かれた。
『ドーン』『ドーン』
と砲弾が撃ち出され、後方の爆発事故に驚き騒ぐ先陣の松永の部隊に落下する。
見事に一弾が青銅砲を直撃して吹き飛ばされる。
さらに後続の関船が
『ドーン』『ドーン』
と松永の部隊に情け容赦なく砲弾を浴びせかけた。
我が方の関船は20艘で艦首の2連装砲塔しか使えなくても20×2で40発もの砲弾が松永の部隊や三好の部隊に降り注ぐ・・・本願寺派の僧兵の部隊は松明を砲弾や装薬の詰まった樽を満載した荷車に置いたことによる自爆で壊滅している・・・のだ。
先陣を進む松永の部隊も、中軍で僧兵の部隊の爆発事故にも巻き込まれている三好家の部隊にも浴びせかけられた砲弾によって青銅砲が破壊され、装薬の詰まった樽を満載した荷車が宙にまって爆発炎上させていった。
俺は青銅砲1門を20万貫(約24億円)以上で本願寺派や三好三人衆と松永久秀にそれぞれ売り払ったものが、この戦闘で何の成果もあげることなく
完勝に終わったこの戦いも瀬田川での戦いの序章でしかなかった。
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