第38話 補足と当主会議までの話

 天文16年(1547年)に吉良大浜城付近の焼き討ちという初陣に失敗して敗走中の織田信長と入れ替わった俺は史実とは少しずつ違った歴史を創り出している。


 何せ前世では高校生とは言ってもおよそ500年も先の知識を有しているのだ。

 関船を改良して竜骨どころか衝角まで取り付け、次代の最先端の火縄銃の火薬の原料である硝石を造る為に桑名新港や桑の里まで手に入れた。

 桑名新港の位置が地理的条件から俺の関船が往来するだけで桑名港が封鎖される状態になった。

 これにより経済的な圧迫を受けた桑名が九鬼水軍と手を組んで天文17年(1548年)に俺に戦いを挑んできたが俺が率いる衝角付きの化け物船や焙烙玉でこれを打ち破った。

 陸上戦でも勝利した俺は桑名港をも手に入れた。


 これによって伊勢国を治める戦国大名の北畠晴具きたばたけはるともとの関係が悪化した。

 同様に桑名港付近を牛耳る豪族の赤倉家との関係も緊張を高めた。


 天文18年(1549年)に斎藤道三の娘帰蝶(濃姫)と結婚をする。

 政略結婚である。・・・帰蝶さん史実でも前領主の土岐家に繋がる土岐頼純と政略結婚して、その土岐頼純を斎藤道三が戦で攻め殺した後、俺の元へ嫁がされたのだ。

 この時帰蝶付きの女官だった根来の楓が俺の命を奪おうとしたが逆にこれを捕らえて根来忍者を配下に組み込み、根来の楓を組み敷いた♡♡♡ムフッ。


 織田信長の初陣の失敗に再戦リベンジするため、桑名地方を治める豪族赤堀家と和睦わぼくのために向かうと、赤堀家の城代家老が謀反して赤堀家の次期当主を切り殺して一向宗に走り、一向一揆を企てようとしていた。

 一計を持って無血で一向一揆の反乱分子を捕らえた。

 その首謀者の一人で赤堀家の双子の親の仇である城代家老がいたのだ。

 親の仇と言えば仇討である。


 赤堀家の双子対城代家老の戦いである。・・・双子の剣の師匠である俺は双子の加勢を当然した。

 双子は見事に城代家老に一太刀を入れて、武士の情けと俺が苦しむ城代家老に介錯の一刀を首に向かって振り落とす。

 見事に首の皮一枚を残して『抱き首』の状態で介錯をし終わる。

 城代家老を討ち果たした赤堀家の双子の名が全国津々浦々に轟いた。


 これによって赤堀家も支配下に治めて後顧こうこうれいが無くなったこの年、俺と入れ替わった織田信長が焼き打ちに失敗して逃げ戻った吉良大浜城に対する再戦リベンジを行った。

 配下となった根来衆の一人、根来の三郎が吉良大浜城を調べ尽くし、火薬の威力を知られないうちにこの城を打ち破って織田家のものにした。

 吉良大浜城の城代に根来の三郎を置いたのだ。・・・う~んこれは他流の忍者にも好影響だったようだ。・・・なにせ織田信長は忍者で有名な伊賀と争う『天正伊賀の乱』等と言う物騒な史実を残しているのだ。


 これでホッとしたのも束の間、イングランド船(ヘンリー8世号)が桑名新港に漂着同然のようにやってきたのである。


 史実でのガレオン船は船長60メートル、乗員600名で大砲が50門も積める戦列艦である。

 ただ今回流れ着いた船は衝角を付けて前後に高い鐘楼を設けた独特なフォルムにした。


 流れ着いた、このイングランド船には当時の最高技術が生み出した鋳鉄製の大砲を積んでいた。

 史実でもヘンリー8世は牧師ウイリアム・レベットに命じて鋳鉄製の大砲を製造させた。

 またヘンリー8世は、芸術を愛する一方で女性も愛した

『芸術にも女性にも目が無い』

と言われる方で6度もの結婚とその王妃の処刑等を繰り返した残虐な王でもある。

 そこで本編では牧師の姪であるキャサリンやグランベルを登場させ、ヘンリー8世の魔の手から逃れるためにヘンリー8世号を奪取させたのだ。


 史実ではヘンリー8世は1547年に過度の飲食により健康を害して亡くなっているが、本編では自分の名を冠した船の砲撃により亡くなった事にしたのだ。

 当然ヘンリー8世号に乗っている者はお尋ね者になり嵐の中、紀伊半島沖でとの砲撃を演じる事になった。


 ポルトガルのガレオン船は転覆してマハラジャのサーシャはいなかった。

 これってまた歴史が変わった?

 史実では1549年はフランシスコ・ザビエルがに乗って鹿児島に上陸してキリスト教を布教した事になっている。

 そうフランシスコ・ザビエルの乗ったポルトガル船は鹿児島に上陸することなく、ヘンリー8世号を追って北上して転覆して果ててしまった事になるのだ。


 この当時の武器についてだが火縄銃の有効射程距離は80~100メートルで、ライフリングだ何だが等と書いたが実はそれ程精度は悪くない。

 問題は銃身の長さだ。

 拳銃で撃つよりライフルの方が命中精度が高い。

 よく映画などでラッパ型の火縄拳銃を決闘で使うがこれではどこへ鉄砲の弾が飛んで行くか分からない危険な代物だ。

 銃口が開けば開くほど


「お互いが背を向けて十歩離れて(一歩60センチとして、お互いが12メートル離れた所から)撃ち合って当たらないことがある。」


等と言うセリフを信じちゃうほどの精度になってしまう・・・はずだ?

 現実に昔のおまわりさんが使っていたコルトと今のおまわりさんの使っているサクラでは銃身の長さに差があり命中精度が僅かにサクラの方が落ちる・・・はずだ。

 命中精度を競う大会でもない限りそれほど問題が無い。・・・う~ん下手な奴は下手だという事だ。


 俺はヘンリー8世号を拿捕してポルトガルのガレオン船を鹵獲した。

 天文12年(1543年)に鉄砲が伝来して翌年には数十丁が複製された。

 それは鋳造では無くて鍛造で造られたのだ。・・・う~んこれではより口径の大きい大砲は造れないが植民地化のために押し寄せようとした西欧人にとっては恐ろしく感じただろう。


 それに倭寇の存在である。

 この時代に倭寇は朝鮮半島どころか台湾、ルソン島(フィリピン諸島最大の島)にも拠点を設けている。

 彼等は抜身の日本刀を腰に差して足が傷つくのを恐れなかったという。

 西欧人にとってはこれもまた恐ろしく感じただろう。


 ヘンリー8世号にはこの当時の最高水準の大砲が積まれ、それを鍛造ではなく鋳造で製造する知識を持った人物キャサリン、そしてまた歳は若いが西洋医学に精通したグランベルを運んできてくれた。

 またポルトガルのガレオン船の唯一の生き残りであるマハラジャのサーシャは前世の知識を有するK国のミサイル開発の技術者なのだ。

 高卒の・・・う~ん卒業式の前に死んだっけか?・・・俺よりも科学技術において専門的な知識を有しているのだ。・・・う~んほんと頼りになる!


『本能寺の変』という明智光秀の謀反さえなければ、火縄銃で織田信長は天下を手に入れかけた。

 こうなればイングランドのガレオン船、ヘンリー8世号の鋳鉄製の大砲を製造し、新たな大砲を造れば天下は直ぐとれることになる。


 まだ織田家の当主は親父殿だ、親父殿に許可を貰って鋳鉄製の大砲造りを行う事にする・・・そのための御前会議だったのが。

 当主会議を終えて俺は桑名新港に戻ると俺の傅役の(平手)政秀さんから急使が来た。

 急使の内容は


『今川が太原雪斎たいげんせっさいを主将にして約8千名の兵を引き連れて、庶兄織田信広が守る安祥城あんしょうじょうを攻めてくる。』


と言うものだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る