第21話 赤堀家騒動の顛末
俺が天文16年(1547年)の初陣のリベンジ戦を画策して後顧の憂いを絶つために赤堀家と和睦するために赴いた。
それも俺が向かった翌早朝には一向一揆の門徒衆がその城代家老を主将にして赤堀家の城(館)に攻め入るというのだ。
俺は赤堀家の女子供連れて逃げ出した。
この戦国時代では敵側として女子供が残っていれば
逃げ出した先は桑名新港で赤堀家の双子と母親の再開は感動的で
「
と言って
女子供が出て行き残ったのは俺に秘策を授かった赤堀家の政秀さんと俺に向かってきた老兵20人だ。・・・半数は怪我人なので動かすわけにいかないだろう。
彼等はまんじりともしないで夜明けを待った。
翌朝ようやく日差しがさし始めた頃、連絡があったとおり裏切った赤堀家の城代家老を先頭に
『南無阿弥陀仏』
と墨で大書した
一向一揆側は赤堀家は城門を固く閉じて『
不安そうな顔をした政秀さんは一向一揆の主将である見知った城代家老が声が届くところまで近づいたところで、門前に置かれた酒樽の鏡を割って
「手向かいしません。
領主は逃げ出したので城は開けわたします。
酒でも飲んでください。」
「酒や食い物になんぞ入っているか分からん?政秀、試しに主が食って見ろ。」
と山賊の親玉のような装いもそうだが面構えをした城代家老が政秀さんに言う。
政秀さんその通りだと
『コクコク』
と首を上下に振って、酒を飲み料理を口にした。
それで安全と見た
特に体調を崩すものが一揆の門徒衆に出なかった事から安心したのか机の上の食べ物が食べ尽くされた、用意した酒が飲み干されていく。
酒が無くなれば蔵から追加の酒を出し、食い物が無くなれば付いてきた一揆の門徒衆の女子衆を米蔵に案内して米を炊き御馳走を追加で作らせる。
美酒に酔い、飯や御馳走で腹がくちてくれば人は眠くなる、まして早朝の朝駆けの戦だ。
一人がごろりと横になって
「グウグウ」
と寝息をたてはじめるのを見ると他の人にも睡魔が伝搬したように襲ってくる。
一揆の門徒衆の皆がマグロのように横になり寝息をたてはじめると、その中の一人がムクリと起きあがり周りを見渡すて
「薬が効いたみたいね。」
と
彼女は追加の酒や御馳走の中に睡眠薬や痺れ薬を入れていたのだ。
根来の楓は寝ている者・・・中には赤堀家の双子の傅役の政秀さん達までもが胸をポリポリ掻きながら寝ている。・・・その様子を見ながら外に出るとヒラリと赤堀家の屋根に飛び乗り、懐から筒を出して上空に向けると筒先から
『ポン』
という音と共に合図の狼煙がシュルシュルと上がる。
俺は桑名新港に赤堀家の女子供を預けると、港の守備隊の兵士1,000名を引き連れて赤堀家の城奪回の為に立ち戻る。
守備兵の他には赤堀家の爺様と双子が続く。
赤堀家の城が見える場所まで来た、すると赤堀家の城から狼煙の合図が上がるのを眺める事になった。
俺は配下の兵士1,000名に
「急げ、一揆を起こした門徒衆は眠っているはず。
声を上げずに静かに城に入るぞ急げ。」
と下知をして一揆の門徒衆が爆睡する赤堀家の城に易々と侵入する。
静かな戦いが行われる。
ただ殴っても蹴とばしても起き上がる事の出来るものはいないので、首謀者の城代家老と一向宗の住職二人、その他僧兵等主立つ者数十名を縄で縛りあげ、残った者百名余りは飲み食いでほぼ空になった米蔵に放り込む。
本当に戦にもならない形で赤堀家の城を奪還したのである。
一向一揆と言えども戦だ、それで戦後処理は必要なのだ
「赤堀家を掌中に収めたので桑名港と同様に後始末が必要だ。」
と親父殿に連絡したら、親父殿の名代として桑名の戦いの時と同様に平手政秀さんがやってきた。
赤堀家の城代家老が一揆の首謀者として捕縛された。
赤堀家の爺様と平手政秀さんが相談して赤堀家の政秀さんが城代家老にとって代わった。
赤堀家の城で平手政秀さんと赤堀家の政秀さんが揃ったので、これからは赤堀家の政秀さんは「家老さん」とでも呼ぶことにした。
赤堀家の元当主の爺様と爺様の亡き息子の嫁さんと銀杏様が平手政秀さんを出迎える。
俺は平手政秀さんに
「首謀者達を殺さずに農奴(作業労働者)にして欲しい。」
と相談したのだが、一揆の門徒衆を指揮した山賊のような城代家老だけは
「若様!どうか息子の敵を討たせて下され。」
と赤堀家の爺様に反対されて懇願されたのである。
貞永元年(1232年)の御成敗式目では仇討は禁止されているが武士の台頭とともに形骸化している。それに江戸時代には届け出された仇討は認められている。
俺も政秀さんも
「爺様が討つより、孫の馬之助と左馬之助に仇を討たせてやろう。」
という事になったのである。
仇討が行われるまではの間は赤堀家の仕置きは中止だ。
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