第19話 暗殺者が配下に!?
俺と帰蝶さんの婚姻の儀を終えて、床入りの儀になり帰蝶さんと入れ替わった根来の楓と呼ばれる「くノ一」が襲ってきた。
根来の楓の両親は斎藤道三の元に
根来の楓の両親の出身地、紀伊の国にある根来寺周辺は、鉄砲の一大生産地があったり根来忍者の住む集落もあった。
この地は北畠の治める伊勢と隣に位置することから北畠が根来忍者を雇い入れ美濃国に草として潜入してついには帰蝶さんの側付き腰元となったものだ。
帰蝶さんと入れ替わった根来の楓を捕らえて、那古屋城では耳目もあり俺の支配地桑の里で尋問しようと連れ出す途中で根来の楓を奪取しようとする者、命を奪おうとする者の襲撃がありその双方を捕らえた。
その護送中の根来の楓に対する襲撃も北畠家の織田家に対する意趣返しはあったかもしれないが、根来の楓の口封じが主たる目的であった、それで当初の予定通り桑の里まで連れてきたのだ。
口封じが目的だったとは、襲ってきた北畠軍の兵士の事情聴取とも一致する部分であった。
根来の楓は調書作成時に
「貧乏人の子沢山というが私には兄弟姉妹が8人もいる。
両親が北畠晴具の指示で美濃国に潜入して開墾をして土着の農民のように働き始めたころ戦があり、その戦で手柄を立てて斎藤道三に名前を覚えられた。
私が産まれた時を同じくするように帰蝶様が産まれ私の母が乳母になったのです。
それによって地位も高まった父の元に紀伊の根来の里よりも暮らしやすい美濃にと父や母の兄弟達が移り住むようになったのです。
私の母が乳母になったことから帰蝶様は乳母姉妹と言うわけです。
帰蝶様が成長して乳母がいらなくなると私と母は家に戻されました。
教養と言う面で私の母は劣っていたからです。
その後帰蝶様も一度婚姻されて相手の方と死別して美濃の国に戻るまで、帰蝶様とは遠くで顔を見るくらいで会ってはいませんでしたが、美濃の国に帰蝶様が戻ってくると、帰蝶様お声掛かりで帰蝶様付きの腰元になったのです。
出戻って
こいつ『尾張の大うつけ』と言おうとしたぞ!まあいい話を続けさせる。
「両親の元に忍者としての雇い主である北畠晴具から繋ぎを通じて連絡があり、
『娘の楓が帰蝶の腰元になったと聞く、帰蝶と入れ替わって、尾張の大うつけを帰蝶の元夫の敵として殺せ!』
と命じられたのです。」
と話した。・・・う~ん結局大うつけと言うんかい!
問題は北畠軍が暗殺者を何故殺そうとしたのかだ。
楓を一度牢に戻して、楓を救出しようとしていた忍者集団の中で一番年嵩の男を尋問した。
「私は楓の兄で根来の三郎と言います。
私は両親と妹楓の
両親が北畠晴具の指令を受け、妹に命じて信長殿を暗殺させると聞いて止めたのですが。
『北畠晴具様からの命令だから。』
と言って強行したのです。
案の定、妹は暗殺に失敗して身柄を桑の里に送られることになったのです。
那古屋城内にも北畠晴具の手先が兵士として潜伏していたのです。」
おいおいどうやら鉄砲で倒されたり捕虜にした者以外に那古屋城内に北畠晴具の手先が潜んでいるようだ。
その者達の名前を聞きだして、急ぎ親父殿に捕縛をお願いする。・・・う~ん残念!逃げ出した後だった。残された家族や使用人は奴の素性を知らなかったようだ。
楓の兄、根来の三郎はさらに
「美濃国の暗殺未遂は北畠晴具に繋ぎを通して通報され、それを受けて北畠晴具が繋ぎを使って手先に以前より潜ませていた50名の兵に
『楓の口を封じろ。』
と命令した。
繋ぎは楓の兄弟姉妹達の口も封じようとして襲ってきたのです。
繋ぎは根来忍者の中でも上忍と呼ばれている方で那古屋城下に忍ばせた配下も多く、年端も行かず体も小さい私達を瞬殺できると襲いかかってきたのです。
私も根来の三郎と名乗れるほどに根来の里で鍛えており、他の兄弟姉妹達とも共闘して繋ぎ達を返り討ちにしたのです。
その時繋ぎが持っていたのがこれです。」
と言って、襟から細い
なんとその紙縒りは北畠晴具の花押が入った命令書で
『根来の楓とその一族を誅殺すべし』
と書かれていた。
その関係で北畠軍は根来の楓を殺そうとして、根来の楓の兄弟姉妹達は守ろうとして争っていたわけだ。
根来の楓の兄弟姉妹達をどうするかだ。・・・う~ん情報戦は大事だ!
先ずは目の前にいる根来の三郎に問うた。
「俺の配下になれ!」
と俺が言うと、一瞬ポカンとした表情を浮かべた根来の三郎ではあったが
「謹んで手下になりとうございます。」
と明るい表情で答えた。
これで決まりだ他の兄弟姉妹達も説得に回ってもらって20名全員が俺に手下になると誓紙を差し出した。
問題は根来の楓だ、帰蝶さんから
「楓は乳母姉妹として物心がつくまでの間本当の姉妹のように育ち、父道三の思いもあって楓の母が乳母の職を解かれて疎遠になっていたのです。
私が一度、
私は楓に会ってみたくて私の腰元にするために呼び出して側に置いたのです。
私が不用意に城を歩いて
その後の付き合いでも本当の姉妹同然の仲の良い間柄になっていたので、何とかして楓を生かせてはもらえぬものか。」
と言われた。
俺は帰蝶さんの意向を
呼び出された根来の楓を前にして帰蝶さんが俺より先に俺に対して
「許してあげて、寝首を掻かれるのが怖いかもしれないけど側室にしてあげて。」
等と言い出した。・・・う~ん、その言葉を聞いて暗殺者を側室第一号にする等、やはり俺は『尾張の大うつけ』だ。
情報収集戦でも20名の根来忍者を雇ったことになる。
その長が俺の側室第一号の根来の楓だ。
しかし、『くノ一』は寝屋から情報を取るのも重要な仕事で、美人で床上手なことも条件だ。・・・それに筋肉質な体、根来の楓と肌を合わせるのが癖になりそうだ。
俺の目指したハーレム一直線の開始だ。・・・ウヒヒ。・・・う~んいかん下品になりそうだ。
それよりも俺は根来衆に命じたのは、まず一つ目は北畠家の内情を探る事だ。
当面の敵は北畠晴具だが内情も分からず無闇に攻めては損害を受けて全滅する事もある。・・・孫子の兵法にも
『彼(敵)を知り、己(味方)を知れば、百戦して
とあるではないか。
次が根来寺周辺の内情調査だ。
現在の火縄銃の生産地は根来と国友だ。
北畠家との戦いになれば鉄砲鍛冶が住み暮らす根来寺が圧迫されたと感じて、北畠家につく可能性が高い。
織田家に寝返るような鉄砲鍛冶を見つける事だ。
最後に、織田信長の初陣であり本人にとっても最後の戦いであった、知多半島の根元にある吉良大浜城付近を焼き打ちのリベンジだ。
この地は知多半島の根元にある。
この地を掌握する事は地理的に言っても知多半島と渥美半島に囲まれた三河湾攻略の拠点になると言っても良い。・・・織田信長の初陣として当初は焼き討ち程度の戦と言われているが実は三河湾攻略の拠点造りの為の初陣だったと考えれば合点がいくのだ。
現在俺は桑名港周辺も手に入れ、志摩半島を押さえていた九鬼水軍を桑名の戦いで打ち破ったことから、伊勢湾内の制海権(自由に航行できる権利)を得ている。
しかし三河湾を今川・松平(徳川)家に抑えられている為に、伊勢湾内の制海権を脅かされさらには渥美半島と志摩半島の間の伊良湖水道を抜けて太平洋に出にくい状況にある。
今は亡き織田信長の初陣の負け戦と言う無念を晴らし、汚名を挽回するためにも吉良大浜城を攻める。
吉良大浜城に楓の兄、根来の三郎を派遣して内情を探らすことにしたのだった。
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