第16話 天文18年俺の嫁とり
年も改まった天文18年(1549年)2月となった桑名港を手に入れて、桑名周辺の仕置き(行政・司法)等や今年も領内の田畑の整備で俺は忙しい。・・・昨年は俺が開墾したり整備させたところが豊作だったので皆が協力的だ。
問題は手に入れた桑名新港や桑の里の土地は豪族の赤堀家の土地だった。
この赤堀家は北畠家の寄子である。
それで桑名周辺の土地は
そんな忙しい日々を送っている時に親父殿・信秀さんから
『正月の挨拶も来ない奴があるか!
直ぐに那古屋城までこい!』
等と言う手紙が届いた。・・・う~ん桑名新港も桑の里もまだ緒に就いたばかり、硝石は来年ぐらいで、まだ絹のきもできていない状況だ。
それでも俺は呼ばれたからには現在の桑名周辺の進捗状況を伝えるためにも那古屋城に行かなければならない。
昨年は全国的に見ても害虫被害が祟って凶作で飢えているが、俺の領地である桑名周辺だけは豊作だった、親父殿の御機嫌取りに余剰米では無いが米俵を幾つかと脱穀作業用の千歯抜きと籾すりの石臼を何個か手土産に持って行った。
桑名新港と津島港の間を行き来する連絡船に、桑の里の進捗状況を説明する為に政秀さんの嫡男の五郎右衛門さんと飛び乗って那古屋城について親父殿に会った。
親父殿に会ったら話が違った。
「米俵や何やらわからぬ農機具も良いが、それよりももう嫁が来ているぞ。
すぐ婚姻の儀式だ。」
だった。
これはきはきでも斎藤道三の娘帰蝶さんのきで、帰蝶さんとの婚姻が整い結婚式をするという話だった。・・・俺はまだ15歳だぜ!?まぁ12か13歳で成人なのだ。この時代は食糧事情や病院設備も無く衛生管理なんて観念も無いので一般的な平均寿命が35歳ぐらいだもんな。
どうやら桜子や美濃屋の姉妹の存在に危惧を覚えた政秀さんが話を進めたようだ。
俺とは1歳年下で14歳になる帰蝶さんの嫁入り行列は
なんと呼び出されたその場で婚姻の儀式がとり行われた。・・・う~ん親父殿。俺が逃げると思ったのか?『うつけ』と呼ばれていた信長君の日頃の行状の悪さょ!?
花嫁衣裳に身を包み・・・うわ~意外に胸が大きい!俺のタイプ!・・・それに綿帽子で顔全体は見えないが扇情的な赤い唇が印象的だ。
その赤い唇に三々九度の杯が触れて中に入った酒を飲み干す。
コクリと喉が動き首筋に赤みがさした。
帰蝶さんはさすがに前夫の土岐頼純とは死別と言えども出戻りで2度目の婚姻さすが堂々としている。
俺、未成年の内に死んだので前世でも酒を飲んだことが無い。・・・実は嘘!正月などの祝い事にしこたま飲んだことがある・・・しかしこの時代は俺の造った清酒でなくて儀式用には濁酒だ。・・・う~んこれはこれで美味しいのだが!!
親父殿や家臣一同も濁酒や俺の持ち込んだ清酒を祝い酒にして飲んで喜んでいる。
結婚しただけではない、俺が桑名港まで手に入れその付近一帯の領主と認められたことも含まれて喜んでいるのだ。
これで俺が織田家の主になることに一歩近づいた、それでも中には信行や信行派閥の権六(柴田勝家)それに林秀貞兄弟のようにやけ酒を飲んでいる者もいる。
桑名港周辺にも酒や酒の肴を俺に付いてきた五郎右衛門さんに頼んで運び込んで宴会をしているはずだ。
帰蝶さん何度か衣装替えをしているのだが床入りの儀を考えると緊張が続きよく顔を見れなかった。・・・う~ん意外と俺ってウブ!
飲めや歌えやで宴会が続きとうとう床入りの儀となった。
帰蝶さん真白な
その偽物の帰蝶さん短刀の鞘を払って
「亡き夫の敵!」
と叫んで突きかかってきた。・・・帰蝶さんに比べて胸が小さい!こいつ誰だ?
しかし帰蝶さんの夫を討ったのは、帰蝶さんの親父(斎藤道三)でましてや俺(信長)は留守居で那古屋城に居り岐阜へは攻め込んでもいないのに理不尽な!・・・美濃の国の前領主、土岐家に繋がる土岐頼純と政略結婚で嫁ぎ、その旦那が勢力争いで殺され、またもや政略結婚で世間では『うつけ』と名高い俺の所に送り込まれた。
その怒りの発揮と見せかけてのことだろうが刺されてやる義理は無い!
偽物の帰蝶さん短刀を腰だめにして体ごと突いて来た。
体を開きながら偽の帰蝶さんの突きを外し、首筋に手刀を落とし、足払いをかけて倒す。
巻き藁を拳や手刀で叩く訓練も怠りないので俺の手刀も重くて正確だ。
偽物の帰蝶さん首筋を叩かれて気を失った。
本物の帰蝶さんは何処に行ったか探そうとすると、押し入れから
『トン』『トン』
と小さな物音がする。
押入れを開けると、そこに
縄で縛られた帰蝶さんを見ると何か扇情的でそそるものがある。
邪魔者の偽物の帰蝶さんがいなければそのまま飛びかかっていた。
帰蝶さんの猿轡を外して縄を解く、その猿轡と縄は偽物の帰蝶さんにそのまま使ってやったぜ。・・・縛り方も真似て見た本当にエロッぽい縛り方だぜ!
裸の帰蝶さんに俺の夜着を掛けてあげる。
夜着を掛けてもらって帰蝶さん驚いて俺の顔を見上げる。・・・俺はこの世界でも大柄で、帰蝶さんもこの世界では大柄な(胸も)方だが見上げる状態になった。
しかし帰蝶さん扇情的な赤い唇にも魅了されたが、アーモンド形の美しい目に黒い瞳が輝き、ほつれ毛が額にかかる凄まじい程の美人だ。
しばらく二人で見つめ合ってしまった。
偽物の帰蝶さんを倒すのにドタバタしてしまい、その異変に気が付いたのか、俺の傅役の政秀さん
「若、何かありましたか?」
と聞いて来た。・・・う~ん面倒だ政秀さんに丸投げするか?
すると帰蝶さんが
「待って、この者は私の子飼いの女中の楓、私の手で裁きたい。」
と小声で言う・・・どうする俺
「床入りの儀で張り切り過ぎたようだ。」
と政秀さんに応えると、政秀さん
「そ!それはようございました。」
と言って笑いながら戻っていった。
偽物の帰蝶さんを押し入れに放り込んであとはやることも無い、それで本物の帰蝶さんと中断した床入りの儀だ。・・・実は俺、前世でも童貞で、この世でも女の人を抱いたことが無い!やばいなと思ったが、寡婦となっていた帰蝶さん11歳で土岐頼純に嫁ぎ1年後には死別している、がやることはやっていたようだ。
帰蝶さんのリードで童貞を無事卒業して・・・朝まで帰蝶さんと楽しんだ。
翌日は俺の支配地となった桑名港周辺や桑の里まで帰蝶さんを新婚旅行と称して連れていく事にした。・・・新婚旅行の最初は坂本龍馬だというが俺がこの世界では最初になってやったぜ!
実は人目につかない桑の里で偽物の帰蝶さん、帰蝶さんの側付き女中の楓・・・長いな暗殺者楓でいいか・・・をそこで尋問するためでもある。
俺が暗殺者に襲われた等と知られたら政秀さん等は、この暗殺者楓の首を直ぐ刎ねるだろう。・・・う~ん腹切りもそうだが殺伐とした状況を何とかしなければ。
日も明けぬなか俺が起きだすと帰蝶さんが目を覚ました。
俺は
「楓をどうするかだ?
この那古屋城では暗殺を指示した奴やその仲間がいる。
指示した奴は、那古屋城内では信行や権六ども、それ以外だと桑名港を手に入れ、桑名周辺を支配下に置いたので北畠晴具公は怒り心頭で彼かも知れないね。」
と帰蝶さんに語りかけると、帰蝶さんは
「私も
貴方は桑名港にいる美濃屋の女主人おしのさんを叔母さんと言って
考えてもみなさい、美濃和紙を売っている美濃屋よ。
桑の里等と言うところも見てみたいは、そこで楓を尋問しましょう。」
という。・・・確かにおしのさんの親戚と言うので帰蝶さんも割と胸が大きかった。しかし、おしのさんやその娘程では無いが。
「何か不遜な事を考えている?」
と言って帰蝶さんに睨まれた。
桑の里で尋問するということで、押し入れに縛りあげた暗殺者楓を引きづり出す。
押入れの天袋に大きな
明け方、楓を
荷馬車に楓の入った葛籠を積み込み。
俺と帰蝶さんは馬に乗る。・・・う~ん木曽馬は長野県木曽地方だけでなく、岐阜県の飛騨地方でも飼われていたので、岐阜県の領主の娘なので馬ぐらい乗れるのだろう。・・・この木曽馬樋爪が強いので蹄鉄を打たなくてもよいほどだ。
那古屋城から津島港まで直線にして約10キロで、この地は尾張の国内滅多なことは無いと思って荷馬車と警護の者を置いて、二人で仲良く先に津島港に向かった。
津島港は国内貿易の拠点としてそれなりに栄えている。
その津島港から桑名新港までの定時の連絡船に乗る事になっている。
しかし、連絡船の出港時間になっても荷馬車に積み込んだ暗殺者楓が着かない。
俺と帰蝶さんは馬を速足で走らせたので1時間ほどで着いた。
暗殺者楓を乗せた荷馬車は常歩で2時間もあれば着くはずなのに、いまだに着かない。・・・到着予定よりも1時間ほど遅れている。
荷馬車が壊れて動かなくなったことも考えられるが、この世界は戦国乱世で、落ち武者や逃散した農民が野盗になったりもする。
それに暗殺者の口封じに雇用主が動いたことも考えられる。
とにかく様子を見に行くか。
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