第12話 桑の里の発展

 天文17年(1548年)正月に起きた桑名の戦いを全て終えて、おしのさんの美濃屋も桑名新港に出店してもらった。

 桑名新港で出店準備をしている間におしのさん達にも桑の里がある事を知られたてしまった、というのもおしのさんの娘の一人おかよさんが山窩の村娘桜子と桑名新港の俺の屋敷(尾張屋)で出会ったことだ。

 元気一杯の桜子と内気で外にあまり出歩かないおかよは何故か気が合い、早朝こっそりと桑の里に二人で登っていったのだ。


 最後の方は疲れたおかよを桜子がぶって桑の里まで来たのだ。

 さすがに桜子も疲れて二人で俺の住む養蚕屋敷で倒れていた。

 その後二人で養蚕屋敷を探検していて見つけた・・・そう硝石を造る為の床下に掘った蚕の糞を入れた穴を。


「桜子さんこの穴なーに、変なにおいがする。」

「私も知らない?なんで家の地下にこんなもの造ったのだろう??」


等と言っていると


「見~たな!」


とギョッとするような声が二人の後ろからかかった。


「ヒーッ!」・・・・「なんだ。信長様か。」


と二人で笑っている。


「ところで信長様これな~に?

 何でこんなものをこんなところにこんなもの造ったの?」

「何で?」「何で?」


と二人に何で攻撃でまとわりつかれて根負けした。・・・う~ん俺って女の子に甘いのかな?!

 二人が下山した翌日ゼイゼイ言いながら美濃屋のおしのが桑の里まで登ってきた。

 親子共に巨乳である。・・・ついてきた(おしののお尻を押してきた)大番頭や手代の新吉達まで青息吐息だ。

 一息入れた美濃屋のおしのと俺の養蚕屋敷で面会して


「私も桑の里の塩硝(硝石)の事業に参加したい。

 ただ私の店の屋号では武器商人に向いていないので、私も出資するので

『武器商 近江屋』

という店を出して主人は若様が近江屋徳兵衛とでも名乗られては?

 それに鉛筆の研究作業に係わった優秀な薬師もおりますのでオホホホ・・・。」


等と言うのだ。・・・う~ん確かにこの方法で硝石の出来るのは後2,3年はかかる、それで今のうちに硝石の研究をさせるのも悪くない。・・・チッ!やはり老舗の力、俺では薬師が集められなかったのに。


「若様気にする事はありません古いだけの店の力ですは・・・オホホ。」


と俺の心を見透かすようにオッパイ女狸が言いやがる。えーい!こうなれば自棄だ!


「ものはついでだ、おしのさんじつは今作ろうとしている火薬よりも強力で効率的な火薬があるのでそれの研究と・・・桑の実が果樹酒になったり、ジャムになったりするのでそちらの方の研究も優秀な薬師さんを使って何とかならないですかね?」


 おしのさん俺の顔をじっと見つめてから


「ジャムが何かわかりませんが、私にまかせて。

 それにお酒の事なら薬師よりも酒造りで有名な杜氏とうじを知っていますよ。

 紹介しますね。」


と胸を叩く。・・・オッパイがその反動でプルンプルンと動く・・・俺って本当にスケベ!


「代わりにと言っては何だけどもっと楽にここまで来れないものかねぇ?

 何か楽にこの山を登れるものを考えておくれではないかい?」


と言っておしのさんまたオッパイをプルンプルンさせる。・・・反則だよそれは!

 そう言えば、山窩の村を桑の里にするべく、訓練された元気な兵士を連れてこの山を登った時も、俺と桜子についてこようとしてオーバーペースになり死屍累累の状態でその時もケーブルカー(登山電車)でもつくるかと思ったのだが、これは良い機会だ本格的に考えてみるか?

 動力は急峻な山を流れ落ちる川に水車でも造るか?


 おしのさんが集めた薬師により硝石やその先の爆薬の研究が、そして俺の方はケーブルカー(登山電車)の模型作りがこの日から始まった。

 しかしケーブルカー(登山電車)か?本当に造っても大丈夫か?

 桑の里での硝石造りの保秘もそうだが、ケーブルカー(登山電車)を造ると歴史が変わってしまうかも!


 天文17年3月になった。

 桑の里と名付けたとおり、先ずは養蚕屋敷を建てている。・・・今のところ2棟だけでそれも俺と五郎右衛門さんの住宅、陣屋を兼ねている。

 とんでもなく広い屋敷で掃除するのも大変で蚕を飼う為の手伝いの女性が必要だ。

 助けた山窩の村長の娘桜子やその友人達が・・・何とその中には美濃屋女主のおしのの娘のおしんやおかよまでもが混ざって・・・キヤーキヤー言いながら働いている。


 桑の里には元住人が50人程それに俺が連れてきた兵士100人、そのうえ養蚕屋敷の土台造りの石工や建物を建てる大工等を20名程連れてきたが彼等も着替えも無く掘っ立て小屋に住んでいる。

 美濃屋の女主人おしのさんが集めた硝石造りの為の薬師や酒造りに選ばれた杜氏達が20名以上集まった。

 おしのさんが集めた方達なので掘っ立て小屋と言うわけにはいかないので悩んでいたところでプレハブ工法を思い出した。

 あの若い大工の関地君、関地組と言うプレハブ工法の建設会社を建てて那古屋城下で大儲けしているそうだ。・・・俺も資金提供しているのにすっかり忘れていた。


 新し物好きの関地君に桑名の里でプレハブの建物を建てる要請をした。

 関地君大汗を流しながら桑の里に来ておしのさん同様に


「この急斜面を出来上がった床や壁等の荷物を持って上り下りするのは大変だ。

 若様何とかなりませんかね?」


と言われて、おしのさんに言われてつくったケーブルカーの模型を関地君に見せたら


「若様凄い事を考えますね。

 動力は水車ですか。

 私が指揮をしてこの登山電車なる物を造りましょう。」


と言う。

 関地君、桑の里の登山電車の設置の他にプレハブ工法で家を建てなければいけないので大変だ。

 それでもプレハブ工法は統一された建物の床や壁それに天井まで出来ている物を組み合わせて、組み建てるだけだ。


 桑の里では荷物運び用にと登山電車の設置をしたおかげで建物は直ぐに建てられたのだが・・・これだけ人口が増えたので、すえた浮浪者のような臭いが桑の里を支配している。

 衛生環境が極めて悪い!疫病でも発症したらひとたまりもない!

 衛生改善と言えば風呂だな。


 檜の大風呂と大釜を造り出す。

 風呂場の周りや檜の風呂については大工や石工がいるので何とでもなった。

 問題は大釜だ。

 大釜を造る為に桑名港にいる鍛冶師を連れてきた。


「大釜は住民の為の風呂造りに使う。」


と俺から聞いて感激している。・・・自分の為では無く住民の為だ、感激した鍛冶師が桑の里に住む事になった。


 養蚕屋敷を建てる際に出た廃材を集めて薪にして風呂を沸かす。

 日本は火山国で温泉地が多いはずなのに当時は風呂に入っていない!風呂等は貴族の贅沢だからだ。・・・失敗した男女を分けない混浴にした。・・・なった?

 性がおおらかな時代だ不味い!不味いぞ!こんなはずではなかった。・・・男が女を襲ったり、まれではあるがその逆もあった。

 訴え出る者も多く男湯と女湯に分けた。

 そんなことがあったが桑の里を支配していた、すえた浮浪者のような臭いは払拭された。

 しかし混浴を希望する男女もいる。・・・家族風呂か・・・3つ目の風呂を造らされた。

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