第4話

今日、ぼくは仕事をした。昼休み、お弁当を買ってそれをフードコートで食べた。その時、ぼくは最近になって聞き返しているからという理由でまたジョージ・マイケルのソロアルバム『Faith』を楽しんだ。ぼくの音楽の好みはすっかり90年代流行ったもので固まってしまっているようだ。ぼくも今年でもう47歳になる。いい年してわかりもしないのに若い人が聞く音楽をカッコつけて聞くのも恥ずかしい。そう思って、ぼくの心が赴くままに90年代に流行ったスウェードやブラー、オアシスといったグループの音楽を聞き返している。多分老人になっても聞き続けるだろう。両親が演歌を聞くように。


ジョージ・マイケルは『Faith』というアルバムの中で「I Want Your Sex」という曲を歌っている。実に大胆なタイトルで、中身も相当なものだ。「君とエッチしたい」と扇情的に歌うジョージ・マイケルからは、性別を超えて「男の色気」を感じる。ぼくにはない要素だ。高校生の頃、ぼくがこのアルバムを聞いていたらこのタイトルだけでクラスメイトが騒ぎ出して「こんなエッチな曲を聞いてるぞ」とからかわれたことがあった。そんな時に感じた心の傷というものは実は意外と心のどこかに残っていて、疼いてしまう。


ぼくは自閉症スペクトラム症という障害を抱えているので、そのせいで雑談や車の運転など人ができることができなかったりして苦労している。十代の時はもっと苦しかった。いじめに遭っていたようにも思うし、そうでなくても人とコミュニケーションを取ることが難しくて、周囲が何を考えているのか全く読めないで困ったことを思い出す。何か勇気を持って話しかけたら、その相手は急に態度を変えてぼくから逃げ出す。そんなことを何度も経験したから、ぼくは人の心というものは本当に複雑で矛盾だらけのものでありうるのだなと思うようになった。


矛盾だらけ……人の心というものは、多分その人にもわからない。さっきまで怒り狂っていたかと思ったら、次の瞬間にはニコニコしていたりする。実は心の中にエッチな願望や欲望を隠し持っていて、それをおしゃれに発揮することさえある(かもしれない)にも関わらず、相手に指摘されたら怒り狂う。ぼくだって結局はエッチな行為が産み出した産物として生まれてきたのに、そんなぼくがエッチなことを考えることを世の中は許さない。本当に理不尽な思いを強いられて生きてきた。だからぼくはこんな風にヘンタイになってしまったのかもしれない。

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