第177話



 そう、夜に数十分だけ厳重に結界魔術を行使して誰も俺の部屋に入れないようにしている時間があるという事は、その数十分間は他の人たち(女性たち)からすれば『そういう事(自家発電)をしている時間帯である』と丸分かりではないか? という事である。


 いや、恥ずかしさと認めたくないという心情から敢えて疑問文にしてみたところで現状が変わる訳ではないのだ。


 そして間違いなく側仕えのニーナ達やダークエルフのリリアナには気付かれているだろう。


「どうしました? 顔が真っ赤ですけど……ま、まさか体調がよろしくないのですかっ!? それともこの年増に何かされましたかっ!? 何かされた場合はデトックスしなければならないので私が速やかにこの年増にやられた事と同じことをして上書きして差し上げますっ!! さぁ、恥ずかしがらずに申してくださいっ!! なんなら年増にされてなくともされた体で私に申し出てくれても良いですからっ!!」

「いや、カレンドール先生からは何もされてないからっ!! というか流石にカレンドール先生の事を年増と呼ぶのは失礼ではっ!?」

「クロード様を襲おうとしたカレンドール先生は年増で十分です」


 流石に暴走しかけているニーナの言う通りにする訳にはいかないので軽く注意しつつ何もされていない旨を告げるのだが、ニーナは『何もされていない』という俺の返答に対しては残念そうな表情をするもののカレンドール先生が俺を襲おうとしていたという事は訂正するつもりはないらしい。


「そうは言ってやるなよ。 一応俺を助けようとしてくれていたと思うぞ?」

「はぁ……まったくクロード様は」


 いくら何でもカレンドール先生が可哀そうになって来たのでカレンドール先生の名誉の為にも庇ってあげるのだが、そんな俺をニーナは『やれやれ』というような表情を向けてくるではないか。


「良いですか? クロード様。 今まで何度も何度も聞いているでしょうから鬱陶しいと思ってしまうかもしれませんが、女という生き物は幼かろうが老人であろうが何歳であろうが女性なのです。 それはカレンドール先生も同様で年上だとか講師という立場であろうが何であろうが関係ありません。 女性である以上目の前に男性が居れば、それもクロード様のようなイケメンであれば猶更、何も感じない女性はいません。 もう、こんな狭い空間に閉じ込められたとなれば誰であろうと大洪水です」


 そして何を言い出すかと思えば、小さなころから母親や周囲の人たちから口酸っぱく言い聞かされてきた事をニーナは真剣な表情で言い、隣にいるリリアナはうんうんと深く頷いているではないか。


 というか『大洪水』という表現はどうにかならないものか。

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